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麦わら帽子 ~第二話 祐美の思春期~
麦わら帽子 第二話

        作/POPSTAR イラスト/黒咲さん

 岡谷祐美(おかやひろみ)は、幼くして母を亡くした父子家庭に育ち兄弟もいない。「1歳になる頃まで祐美はお母さんに抱かれていたんだよ」と、父から幼稚園の頃聞かされた覚えがある。祐美が「一緒に写っている写真が見たい」と言うと、「お母さんの実家にあるんだ」と父は渋々答えた。母の両親は父を嫌っているようだが、私には母の子だということで良く接してくれた。父と母は隣県ながら、お互い行き来しながら逢っていた。そして母親のお父さんの反対を押し切り十代で同棲を初めたことで、結婚を認めないと言ってきたらしい。式を挙げずに母が二十歳を迎え籍を入れたという。

 祐美は反抗期になっても父親に背を向けることはなかった。その背景には、自分の気持ちを誰よりも理解してくれる父のことがとても好きだったから、と祐美は思う。ただ、長かった髪をばっさり切ってボーイッシュな雰囲気を漂わせるようになってから、自分でも自立していく様相を感じていた。
 三年生に入ってから、石和(いさわ)という男子が自分のクラスに転校してきた。二年生から組み替えもなく穏やかな日々に異変が起きたのは彼の存在からだった。祐美は育ちの良さそうな風貌の石和君に想いを寄せ始めた。成績も良く、スポーツも万能だ。矛先にはいつも彼のことが頭にあった。しかし彼を思う女子は何人もいて、到底叶わないとも思っていた。
 石和君が他の子と仲良く喋っているのを見たときには、その嫉妬から逃れられなかった。それでも彼が机に着き自習を始めるのを見ると、萎縮していた胸のときめきが膨らんでいった。親友・広瀬沙耶(ひろせさやか)も彼を絶賛していた。清楚な彼女であるなら彼を射止めることができるだろうと思ってもみた。沙耶は女子からも憧れの存在で、聡明かつ美貌であった。反面、その事実に反するかのようにシャイなのである。そう祐美は理解していた。

 ある時期から石和君は祐美に目配せしてくれる様になった。祐美は誰からも話しやすいと言われるくらい垢抜けていたのだが、石和君に対しては上手く話せずもどかしかった。その彼が一緒に帰ろうと言って来た時、祐美は掃除当番の沙耶を置いて帰ることにした。
「石和君!マック寄っていかない?」
 と、祐美は勇気を出して言ったのだが、石和君からは予期せぬ返事が帰ってきた。
「いいけど。広瀬さん待たないでいいの?」
「うん、沙耶掃除当番なの・・・」
 と、祐美は落胆しつつ石和君に、「待った方がいい?」と聞き直した。
「いやっ、いない方がいいかも知れない」
 と、石和君は曖昧に言った。祐美は、その言葉に期待した。
 ファーストフード店に入った二人は、幾つかのテーブルで戯れる高校生に圧倒されながら隅の席を見つけると、そこに腰を下ろした。祐美はまずコーラーに手を付けた。喉が渇いていたからだ。石和君が話し掛けてきた。
「今日、三輪智史(みわさとし)が田村に虐められているのを知って田村にやめろと言ったんだよね。あいつ、女々しいとこあるけどいい奴なんだ。ただ、父親が他に女作って出て行ったらしくて・・・」
「あっ、その噂本当だったのね」
「その噂ってやつ、田村が言いふらしてたんだ。俺と三輪、共通の趣味で仲良くしてるんだけどね」
「趣味??」
「パソコン。ホームページの作り方とか教えてあげてる。逆にあいつからはピアノを教わってるんだ」
 三輪智史は男子なのにピアノが弾ける。「男子なのに」と言うのは偏屈ではあるが、大抵習い事でピアノと言うと女子のイメージを持つものだ。三輪の母親はピアノ教室を開いていると祐美も知っていた。
「へぇ~」
「その三輪なんだけど・・・どうやら岡谷さんのことが好きみたいだよ」
「私は・・・」
「何?」
「何でもないよ!」
「そっか。実はその、俺、広瀬沙耶に告白しようか迷ってて。でも言いづらくてさぁ」
 祐美はその彼の言動に落胆すると共に失望した。
「そうだったんだ。・・・それじゃ私から聞いといてあげようか?」
「そうして貰えると嬉しいかも」
「うん。それから三輪君のことなんだけど・・・唐突過ぎて考えられないの。ごめん。じゃわたし帰るね!」
 そう言い残すと祐美は席を立った。苦い思いを噛みしめながらその場を脱した。憶測だが、彼は哀れな私に気付いていない。それもそのはず、自分は素直な気持ちを彼にぶつけていないのだ。そして彼は沙耶との仲介を期待しているであろう。祐美は思う。

 自宅に帰る途中涙がこぼれてきた。失恋の痛みはやはりあったのだ。自宅のアパートに着くと何故かほっとした。ふとぼりから醒めると、父がいつもご飯をあげている小さな仏壇の前に立っていた。その引き出しには、痩身で美男子な青年と、少しふっくらした顔で柔らかい目をした母の、仲良く寄り添う写真が入っていた。その青年というのは若き頃の父であるのだが・・・祐美は淋しくなるといつもその写真を眺めた。
 (私はこの二人に愛された結果この世に生まれてきたんだ)と、安堵してみては時折、今の父の寂しげな後姿に同情することさえあった。この日、初めて母の位牌を手に取った。
 (あれっ?) そこに刻まれた命日は祐美の生まれた誕生日であったからだ。驚愕と同時に唖然とし、もしこの日が一日でもずれていたのなら私は母の子ではないのだろう?とさえ悟ってもみた。祐美は戸惑いながらも冷静に考えてみた。柔らかい目をした女性は、本当に肺炎を起こして死んでいったのか?難産の末自分の命と引き換えに命を落としたのではあるまいか?まだ中学生の祐美であるが、そう推測し察することが出来た。
 夜の帳がおりる。もうすぐ父が仕事から帰って来る。祐美はご飯を炊き、サラダと味噌汁を準備する。これは中学生になってから自発的に始めた家事だった。父は祐美が飽きないよう魚や肉、惣菜など選んで買ってきてくれる。祐美はその夜、母の本当の死因を確かめたいと思うと、心の揺らぎを抑えながら父の帰りを待ち望んだ。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 04:33 | トラックバック:0コメント:9
麦わら帽子 ~第一話 恋の双曲線~
麦わら帽子

        作/POPSTAR イラスト/黒咲さん


 古本屋で買った文庫を開きながら、私は妻・麻子(あさこ)とよく見た沿線の風景に目をやった。数え切れないほどこの沿線を二人で行き来したことを思う。

 二十代後半、私は当時高校生の麻子と出会い恋をした。それまでに恋愛は幾つかあった。その中でも度々ぐれていた彼女には世話がやけたが、それくらい愛を求めている麻子にはまっていった。
 初めはどう接したらいいのか分からなかった。彼女も年上の私に遠慮しているかのように思えたからだ。歳の離れた兄妹のように接していたのも束の間、麻子が成長するに連れ台頭な関係になっていった。麻子は西の漁港町に住んでいて、そこは特急でも一時間は掛かる場所だ。私はよく彼女を鈍行で、途中駅まで送って行ったもんだった。

 鉄道車両も新型になり、モーターの唸る音は今ではしないくらい静かな車内である。クーラーが効き冷気が身体を包み込んでいた。
「お父さん、大丈夫?」
 そう訊かれ、私は裕美(ひろみ)といる現実という時間に引き戻された。裕美は十六歳になる私の愛娘だ。咄嗟に私は、
「何でもない」
 と否定したもの、物思いに耽って見えるのだろう。
 二人でお母さんの故郷に行こうと行っていたのに、私は途中駅で裕美の手を引くと、北西へ伸びる路線へと乗り換えた。向かい合って座る座席で有無を言わず、裕美は澄んだ目で私を見つめ続けた。そんな娘に私は言った。
「お前、あの頃のお母さんにそっくりだ」
「私のお母さんに?逢ってみたかった・・・」
 裕美の口からこぼれたセリフがずっと頭に残ったまま、私は高原のある駅で降りた。
 ホームに降りた時、子供の様な麻子が一瞬目の前に見えた。
「ここで写真撮って!」
 と言う麻子を思い出した。それは彼女がまだ十代の頃であった。
 私には過去を忘れられずにいる苛立ちを消したいが為、娘と思い出を共有しようなんていう甘い考えがあった。それは現実逃避に過ぎないのかも知れない。
 裕美は見覚えのある麦藁帽子をバッグから取り出すと被ってみせた。それは麻子にプレゼントしたもので、箪笥の奥にしまってあった。思わず私は裕美に言った。
「なぁ裕美。この看板の横に立ってくれないか?」
 私はショルダーバッグのポケットからコンパクトカメラを取り出すと電源を入れた。
「写真撮るの?・・・わかった」
 裕美は笑顔を作ると、駅名の入った看板の横に立った。写真を撮り終え裕美が言った。
「綺麗に撮れた?!」
「可愛く撮れてる」
 そう言ってデジカメのモニターを見せた。そしてベンチに腰を下ろし、バッグから一枚の写真を取り出した。そこには少し色褪せた麻子が写っていた。決して自分とは似つかない母の写真を見て裕美はいつも首を傾げるのだが、この写真を見たときには違っていた。それにこの麦藁帽子を被っている。
「そっくりだ」
 私は言った。裕美も肯いた。言葉に詰まる程その笑顔は似ていたのだった。
 私は暫く、裕美が母親の麻子から生まれると同時に亡くなった事実を自分の口から話せなかった。母親の命日が誕生日であること、一度も母乳を吸わずに育てられたこと・・・

 嘘を付くのにも限界が来ていた二年前のことだった。私は居間にある小さな仏壇で花を換えていた。
「お母さん私のこと産んですぐ死んじゃったんだね」
「えっ?すぐ死なないさぁー」
 私は娘の言葉に驚き、オウム返しに言ってしまった。
「位牌・・・」
 私は息を呑んで裕美の手を握り締め言った。
「気付いたんだね・・・」
「何で今まで隠してたのよ!」
 そう言って娘は私を振りきり、自分の部屋に篭ってしまった。
 一晩が経ち、娘が私の前に現れ、
「ごめんなさい」
 と一言告げると学校へ行く準備を始めた。その行動パターンも母親とそっくりだった。優しさや配慮が分かっていても、嘘を付かれることがまず嫌いなのだ。

 私は自分の再婚や恋愛さえ忘れ、仕事の傍ら、麻子の分身である裕美を大事に育てることに専念した。男手ひとつ、役不足を察し実家に戻ったものの、思い返して一人暮らしをして短かりし結婚生活もした町へ戻ると、娘と二人きりで暮らした。裕美が小学生に上がる年だった。それから十年が経っている。

 真夏の昼下がり、トンボの飛び交う高原に着いた。やはり住んでる町よりも空気が乾いているようだ。時折風が吹くと涼しい。集落を見渡すベンチに座ると裕美は私に言った。
「お父さんに話があるの。聞いてくれる?」
「何だよ急に?!」
「言いにくいな。・・・わたし彼氏出来たの」
 父親の私には衝撃的なことだった。けれどこうやって変わらずに、娘は父に付き合ってくれている。半面、大人になろうとしている。脅威にも寂しさを感じる私には、ひとり娘に委ねる部分があるのだろう。
「そうか・・・」
 その言葉は虚しく、私は娘に裏切られたような思いで一杯だった。その時の気持ちは、たぶん麻子の父親から激怒された過去を伺わせるものに等しかったのだが、自分がしてきたことを照合させると怒る余地もなかった。ただ十六歳が故、安易な扱いを受けては困ると思った。
 裕美は言った。
「彼、高校行かずに働いてるんだ。貧しいから・・・」
「・・・」
「彼と私は似たもの同士、ってことだけ言っとくね」
 何が似てるんだ?とも聞き返さず、私は自分の殻に篭ってしまった。そんな人間が親なのに子は育つもんだと思う。

 高原から下る途中、私は気になり出したことを娘に尋ねた。少し間を置いて裕美はしっかりとした口調で言った。
「彼と逢って下さい。・・・あと、彼のお母さんにも逢って下さい。もし気に入ったら・・・あっ、きっとお父さんのタイプだから・・・」
「お前何が言いたいんだ?」
「朝子って言って、でも字が違うけど、お母さんにしたい人。私、お母さん欲しいもん!」
 それは裕美が今まで一度も口にしなかった言葉であった。
 (逢ってみようか・・・)私が心で思った時、裕美の被っていたリボンの付いた麦わら帽子が、風に吹き飛ばされ空高く舞い上がった。そして近くの川に落ちていった。
 ゆっくり下流へと流されていくその麦わら帽子を、追うこともせず、二人で見送っていた。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 11:45 | トラックバック:1コメント:6
翼と千夏(第二稿)
翼と千夏

 
 

 その日、彼と彼女はぎくしゃくしていた。些細なことから喧嘩は始まった。そこは狭いアパートの一室。会話の途中で席を立つのが彼のパターンになっていた。彼にとって彼女の占いのはまりようには参っていた。

「この日がええとかこの日はあかんとか、ナツにはもう付き合いきれまへん」
 ついに小畑翼(こはたつばさ)はキレてしまった。些細なことが些細では無くなる。彼女にも不満はある。彼女は翼に大らかさを望むのだが…。栗原千夏(くりはらちなつ)も負けずに言った。
「あなたの名前、今っぽいけどちょっと似合ってないわよね!野球ばっかやっててわたしなんか居なくていいんじゃない?」
 翼には喧嘩の時、千夏が発する東京弁というのがカチンとくる。
「お前なんかとはもう一緒に居られへん言うてんねん!」
 翼はそう言うと、足を組んで椅子に座る千夏の肩をはたいた。
「もういい。わたし出て行く!」
 千夏は泣くことはしない気の強い性格だった。そして三年間の同棲も閉ざされ、二人は別れていった。相手を求める程離れる心。

 《回想》

「喧嘩はもうやめや!」
「大好きなのにね」
「仲良くしような」
「うん…」(以上回想)

 仲直りする度に二人交わした言葉虚しく。お互い十八からの三年間がまだ若すぎた結果とも言えるのではないだろうか?

 
 
 二年が経ち、神戸は長田区に越した翼はいつしか千夏のことを忘れていた。最近まで後悔していたのに…。
翼は新しい彼女である啓子(けいこ)と手を繋いで歩いていた。翼から見ればべっぴんさんでもったいないくらいだ。それでも我儘の多い子で呆れてしまう。
「おい啓子、いっつも遅刻してばかりでやりきれんなぁ」
「だって、あたしまだ二十歳やもん」
「そういう問題ちゃうやろ!」
 すると一回転しながら啓子は言った。
「許してくれへんの?…翼くん、もうあたしのこと嫌い?」
「そういう問題…って同じこと言わせなさんな」
「ごめんなさい。注意します」
 啓子は翼の目を見て謝った。
「わかったよ、ゆ・る・し・ます。年下やしな。ハハハッ」
 翼はこの気ままな啓子と過ごし、以前より相手を許せるようになった気がする。
 翼は啓子の腕を引くと、繁華街を抜け、丘へ向かう一本道のパン屋でソフトクリームを買い求めるとそれを啓子に渡した。
するとニコリとして啓子は言った。
「ねえねえ、あたしたち三ヶ月になるけどHしてへんなぁ」
 と、ラブホの看板を横目にためらうことなく言う。翼は啓子の顔をじっと見て答えた。
「俺はいつでも相手になるけどな」
「でも昼じゃ雰囲気出ないね!」
 啓子は、そうきっぱり言うとどんどん歩いて行ってしまった。翼は首をかしげ追いかけた。マジで答えたのに解らない。いや、まったく解らない女だと翼はいつも思っていた。

 その頃千夏は、灘の実家から勤務する梅田の飲食店まで通っていた。同棲時代は新卒で採用された会社に勤めてはいたものだけど、嫌になって辞めた。理由なんかない。敢えて理由を挙げるなら、翼と別れたのが切掛けかも知れない。もちろん彼に対し責任転嫁などないのだが。翼と別れ、強気な千夏が社会の壁にぶちあたり砕けたのだ。そんなとき一途な元カレ翼に委ねられたらと思ったものだ。
「二十三で結婚すれば幸せになれる!でももうすぐ終わりね。あ~あ、占いはもう信じたくないわ」
 早番で上がった千夏は、人で溢れる梅田のスカイビルをふらふらと歩きながらそう呟いていた。
「あっ!」
 突然誰かにぶつかった。相手は若い男だった。その男は、
「すいません。あれっ、あれあれ?」
 と、言う。
 千夏はよろけた動揺を隠すかのように、とっさに相手を見ることなく言った。
「ごめんなさい。私、よそ見していたもので…」
「ナツじゃないの?」
 男は言った。続けて、
「何だか大人になったからびっくりしたよ」
 と言うと、千夏は顔を合わせた。
 千夏は、相手が野球部の橘(たちばな)先輩と気付くと笑顔になった。高校時代、部でマネージャーをしていた千夏が想いを寄せていた人であった。
「急いでいないのならコーヒーでも飲んでいこうか?」
 千夏は橘に同意した。

 混雑しているコーヒーショップの窓際の席に、二人は並んで座った。 橘先輩が言った。
「でもさー、ナツって変わったよな~。綺麗になったってことだよ」
「おおきに」
 千夏はニコリと頭を下げた。
「そうや、俺たち関東出身やろ?無理して関西弁はなさんでええよ」
「フフッ、先輩も関西弁喋ってますよ!」
「ほんまか?」
「ほんまに!」
 千夏はそう答え笑い続けた。が、そのあと橘が言った言葉に撃沈した。
「今日はこれから嫁と買い物に行こうって話でな」
「あっ、そうなんや。結婚してはったのですね…」
 と言う千夏の言葉が届かない様子の橘は、他愛ないことを話し出した。しばらく相槌を打っていた千夏はタイミングを計って、
「そろそろ帰らないとあかんので」
 と、言うと席を立った。すると橘は言った。
「ナツ、翼と別れたんやろ?」
「えっ?」
「春先あいつと逢って聞いたよ。あいつ、ナツのこと忘れられないって。で、君の為にアドレスも番号も変えたらしいけどな」
「翼がそんなことを?」
「ああ。次の日曜日、昼から御影(みかげ)のグランドで試合やろうって話なんだ。良かったらもう一度奴に逢ってみたらええよ」
 その言葉を聞いた千夏の心は、過去へと次第にリワインドしていく。

 
 
 御影のグランドとは高校のグランドを指していた。千夏は帰りの電車の中でも、忘れかけていた翼のことを再度思い出していた。
シフト制の仕事であったが、次の日曜は休日になっていた。運がいいのか悪いのか…。千夏は行こうか行くまいか複雑だった。

 《回想》
 
 その野球部は甲子園が近いというのに出場回数はゼロ。千夏は野球部員のマネージャーをしていたが、二年三年と見事、予選一回戦で敗退していた。紅一点の千夏のはずだが、おかっぱで色気なし。当時女の子であることすら意識していなかった。
 千夏は高校二年生の春に父の仕事の関係上東京から転校してきたのだが、何気なくグランドで見た選手を好きになり片想いした。それが橘先輩であった。秋になって千夏は部の門を叩いた。その行動力は我ながら凄いと思う。
 とある日曜日、千夏はクラスメイトの智子(ともこ)をメンバーに入れ、橘先輩と遊園地に行くことに成功した。しかし裏目に出た。その時先輩は後輩にあたる部員を連れてきた。それが小畑翼であった。
 神戸メリケンパークでのグループ交際が終わる頃、先輩と智子がいい関係になっていた。千夏は?と言うと冴えない同級生の翼とばかしあいの関係になっていた。
 千夏から見て、翼は自が強く取っ付きにくい男だった。だから彼とは普段から距離を置いていたのだ。
不思議なもので、相手を意識するとそれ以来千夏は先輩よりも翼の方が気になる存在になっているのに気付く。その要因には、先輩が年を越す前に退部していったこともあった。それに、智子の話からも先輩は進学志望で交際はしないと言っていた。

 練習のあと翼は、部員の洗濯物を洗う千夏を手伝うようになっていた。翼はいつも黙ったままそれを干し始める。当初千夏からすれば、彼は良く判らない人だと思っていた。
「小畑くん、それわたしがやるよ」
 千夏は言うと、
「はよ済ませんとあかん」
 と翼は釘を刺した。

 やがて三年生も終盤、就職活動で翼と千夏は部を引退した。
隣のクラスだった翼は、千夏の就職が決まると近くの公園へと千夏を呼び出した。翼はポケットから小さな袋を取り出すと千夏の首に掛けた。ネックレスだった。
「よく似合っとるな」
 驚いた千夏は、そのネックレスを手で触れ、じっとそれを眺めていた。ネックレスはきらきらと輝いていた。
「小畑くんありがとう。ほんとにわたしに似合ってる?」
「ほんまに似合っとる」
「それなら良かった。ほんまに…」
 翼は千夏の言葉を聞くと同時にブランコをこぎだした。そのあと二人は駅まで歩き出した。
「卒業したらナツにはもう逢えなくなるやんか?少しは寂しいかもな」
 その、ちょっと人をバカにした話し方は翼らしい。最近千夏は解ってきた。それが翼の照れ隠しだということを…。
「でも職場、同じ三宮でしょ?…ねぇ小畑くん!一緒に通ってくれる?」
 千夏はちょっぴり勇気を出して言った。それは翼を徐々に好きになっていた証拠だった。
「…ええけど」
 間を置いて翼は答えた。それは嬉しいのか解らない返事であったが、千夏には満足な言葉だった。

 同じ時刻の同じ車両で、西宮から乗ってくる翼と千夏は通勤した。二人が、並行するJRや阪神電鉄でなく阪急電車を選んだのは高校時代からの由縁であろう。
 帰りにも待ち合わせをするようになった。まさしくそれはデートだった。社会に出てからの千夏は女に目覚め、化粧や服選びも上達したかも知れない。

 ひと月もしないうち、翼は千夏にある話題を持ち掛けた。
「俺、実家出て三宮で暮らそうと思うねん」
「それやったら通勤楽やもんね!わたし毎日通っちゃうかも知れんよ?」
「それなんやけど…千夏もどう?生活キツイ思うし」
「同棲ってこと?…すぐに答え出せないけど。考えとくね」
「ああ、ええよ」

 それが実現したのは初夏の頃であった。新居のガランとしたワンルームにて、二人ぎこちなかった。
一人娘の千夏はこのことを家族には言えず、結局半同棲という形になった。泊まる所は、三宮の女友達宅という話にしてあった。ただ母親には本当のことを言っていたから、内緒なのは父や兄弟にである。
「何だか照れるな」
 と、翼は言った。
「わたし何か作るね!けど、鍋も食器もないよ?」
「買いに行きまっか。やばっ、俺金ねぇわ」
「それでも見に行こっ!」
 千夏は翼と手を繋ぎ外を歩いた。七月の空は青かった。
 面倒見の良い千夏は、翼の為に手料理を覚えた。そして好きな翼と抱き合うことに飽きが来なかった。とにかく一緒に居て楽しかった。
それなのに、いつしか二人にすれ違いの日々が訪れるのだ。(以上回想)


 電車の中、千夏は思いに耽っていた。あの当時の自分が可愛くないって思えてくる。阪急電車は夕暮れの御影駅に停車した。思わず千夏はホームへと降り立った。
 電車が去ると蝉の鳴き声のするホームのベンチで、ぼんやりと薄暮の空を眺めていた。

 

 JR新長田のホームにて、翼と啓子の前を京都行きの新快速が通過する。その向こう側、六甲の山が見え隠れしている。
「須磨海岸でも行きた~い!」と、啓子は姫路方面の電車を指差し言った。
 翼はちょっと大き目の荷物を持ち上げると、黙って啓子の腕を掴んだ。
「こっちやねん!」
 まるで子供の先導を切るようだ。
 休日のまばらなシートに腰掛け揺られながら、
「今日はスリーベース打つで~!」
 と翼は啓子に言った。
「ホームランちゃうの?」
「打てへんわ。それよりスリーベースがよかねん」
 既に啓子はケータイをいじっている。翼は話すテンポの良い啓子の影響で、以前より喋る男になりつつあった。

 御影のグランドではメンバーが集まり、それぞれウォーミングアップをしていた。翼も、自前のユニフォームに着替え仲間に交じった。どうやらメンバーは現役の部員含め確保できたらしい。
 橘先輩を見つけた翼は、彼の傍まで駆け寄った。
「その節はゴチになりました」
 翼は言った。
「ああ。元気になったみたいだな」
「はい、立ち直ったゆーか…。今日は新しい彼女連れて来はりました」
「あの子か?」
 と、橘はフェンス越しで手を振る女の子を見て言った。啓子である。
「あの子ですわー」
 翼はちょっと自慢げに言った。
「参ったなぁ~。彼女来てねーよなぁ」 
 と、橘は周りを見渡している。
「まずかったっすか?」
「橘さ~ん、先生が呼んではりますー」
 と、遠くから手招きしながら部員が叫んだ。
「翼、今の話気にせんでええわ」
「はあ…」
 灼熱の太陽の下、紅白戦は始まった。翼は赤組のライトに使命された。
「俺、ここしばらくやってへんから打てへんよ」
 翼は元部員の仲間にそう漏らした。
「そやろー。彼女おるんやったら野球どころじゃないやろ~」
「小畑んとこの彼女、めっさカワイイ子やなぁ~」
「ええとこ見せんとあかんで~」
 先攻のベンチで皆が口々に言う。そんな啓子は家族連れの輪の中で子供と戯れていた。彼らには千夏との一連は話していなかった。    
(ナツと居た頃は野球ばかりしてたっけ?)
 と、翼は当時を思い出した。
 後攻で敵に回った橘が1球目を投げた。狙い過ぎで先頭打者をフォアボールで出したものの、橘は三人で攻撃を絶った。よってこの回五番に入っている翼には順番が回って来なかった。翼は守備に回った。

 その頃、千夏は自宅から自転車でグランドまで向かっていた。あと一駅くらいだろうか?啓子は見覚えのある路地を入っていった。

「打った~!」
 ボールは転々とレフトを転々とし、打者は三塁をおとし入れた。今年の部員は甲子園の予選に敗退したものの、トーナメントを三試合クリアし強いとされていた。今打った四番打者がそれを証していた。打たれた橘のストレートは今でも百三十キロを超え、持ち球のカーブもキレが良い。
 翼が左打席に入った。一球二球と見送ってボールを選んだ。というより手が出なかった。三球目にストレートが来ると睨んで思いっきり振った。ボールがセカンドの頭を越え三塁からランナーが生還した。翼は、ベンチからの拍手にガッツポーズを返した。啓子が翼に大きく手を振った。
 千夏もその瞬間を見ていたが、もっぱら啓子の存在には気付いていなかった。
 再び子供と戯れだした啓子の横を千夏は通り過ぎた。ベンチにいた部員が千夏の存在に気付いた。ランナーで出ている翼もベンチの異変に気付き、息を呑んだ。
「ナツ…」 
 胸中複雑な境遇に立たされた翼は、無心に盗塁をしていた。結果はセーフだった。しかし、啓子が居るいま一体どう対処すればいいのか?そのあとの行動は解らなかった…。

「橘先輩、ちょっといいですか?」
 守備から戻った橘の元へ千夏が駆け寄った。橘は千夏を制し校舎の裏手へと連れて行った。   
 その間、残塁でベンチに戻った翼はグローブを持つとライトの定位置に着いた。
「翼、元気そうですね」千夏は言った。
「なぁ、翼の件なんだけどな」
「実は今日、翼に告白しようと思ってきたんです」
「そうやったか。でもな、俺も今日知ったんだけどな。あいつに彼女出来たらしいんだ」
「そんなぁー」
 と言った千夏は、突然の眩暈を感じその場に倒れ込んだ。
「おい、ナツ!大丈夫か??」
 橘はしゃがみこむ千夏を抱き寄せた。
 熱中症かも知れない!そう思った橘は、舎内の用務員を呼びに行った。そして二人で千夏を抱え保健室のベッドへと寝かせた。
 その間グランドの試合は進行し、再びチェンジしたところだった。
「ピッチャー橘はどこ行ったんや!」
 と、顧問の飯塚が叫んだ。
「知りまへん」
 ベンチに残っていた現役高校生の木村が言った。
「おい木村君よぉ、ほおってくれんか!」
「はい!ぼく投げたかったんですよ~」

 保健室にやって来たのは飯塚だった。
「栗原熱中症です。俺、彼女が落ち着いたら送って行きますから試合の方お願いします」 
 と、橘は飯塚に告げた。
「そうやったんか。じゃあ頼むな」
 飯塚が千夏の額に手を当てると、彼女はうっすらと目を開けた。
「すいません」
 千夏は言った。
「おお!暫く振りやなぁ~栗原。元気しとったか?」

 グランドでは、代役の木村がボコボコに打たれていた。またもやランナー二人を置いての翼の打席だった。翼はど真ん中に来た直球を思いっきり空振りした。千夏のことが気になっていたからだ。
『千夏何処へ消えたんやろ?』
 と、翼は思いながら、チラチラと辺りを見渡していた。翼がベンチに帰ると啓子が、
「何しとるの翼くん!」
 と、呆れてみせた。
「ピッチャー苦しんでるやろ?助けてやった。これが自信になるんや。 ほら、こいつも空振りや」
 翼は言った。その顔には笑顔が無かった。

 

「ナツ、翼が来る前に帰らんか?俺が車で送るよ」
 と、橘が言った。
「先輩、私自転車なんで…」
 と、だいぶ状態の良くなった千夏が答えた。
「リアに積めるさ。行こか?」

 橘と千夏は車に乗ってグランドの横の道を通過して行った。千夏は寂しげにグランドを見ていた。
「ナツは梅田で働いてるんだったね!」
「俺はいま十三(じゅうそう)から京橋に通うとる」
「関西弁、奥さんの影響?…」
「まぁな。ナツとは普通に喋るよ。あっ、おうちこの辺りかな?」
 橘は笑いながら言った。
「あのぉ、先輩に聞いて欲しい話あるんですけど…時間とか平気ですか?」
「まあ、グランドに戻る必要もないしな。いいよ。で、何処行く?」
「麻耶山」
「ヨシ!じゃあこの辺で右折だな」
 そして橘のRV車は登りカーブを行く。
「少し混んでるなぁ」
 と、橘はぼやいた。
「先輩と一緒なら平気です」
 千夏は答えた。橘は景色の開けた場所に車を止めエンジンを切った。そこからは神戸の町が一望できた。
「で、話聞こうじゃないか」
 と、運転席の橘は言った。
「あれから、彼のこと思い出しちゃって」
「悪かった。俺のせいで」
「とても辛いんです。この季節は特に…」
「夏の季節が?」
「毎年この季節になると二人して生田(なまた)神社のお祭りに行くんです。そこで翼は浴衣の子をじっと見てたことがあって。とっても綺麗な子を…。彼はもしかしてああいう子が好きなのかなって。私はヤキモチ妬いて帰っちゃったんです。次の年も私は浴衣買わなかったの」
「ナツって気の強いとこあるからな。ああ見えても翼は優しい男だし、普段もの言わんからきっとナツにも浴衣着て欲しかったんだと思うよ」
「そう思いました。ごめんなさい、つまらない話ししてるね、私」
「構わないさ。そな辛いやろな?」
「ところで先輩、翼の新しい彼女ってどんな人だか知ってますか?」
「いやっ、知らへんなぁ~」
 橘は関西弁で惚けてみせた。千夏は言った。
「きっと私より綺麗で上品で大人で相手思いで優しくて…」
 千夏の目から涙が溢れ出した。千夏自身それを止めることが出来なかった。
「泣くことない!ナツだって綺麗になった思うし優しい子やと思う。だから泣く必要なんかないぞ!」
「先輩みたく幸せになりたかった…」
「そういう話なかったの?」
「こんな私じゃダメだって」
「恋愛って難しいよな」
 橘は千夏を見て言った。
「もう翼のことは忘れます。先輩も私のことなんか好きじゃないはずだし」
 千夏はそう言うと車を降りリアに積んであった自転車を下ろそうとしていた。
「ここから一人で帰れますから」
 千夏はそう言って橘の手を振り切った。
「なぁ千夏?俺の話も聞いてくれないか?」
 と、橘は千夏を制すると、
「実は俺、大学落ちて浪人しなかった。受験勉強で君への気持ち振り切るためあの日智ちゃんと仲良くしたんだ。こういう事なら君と付き合えば良かったと思う」
 と語った。南から浜風が吹き木の葉が騒いだ。
「そんなこと嘘です」
 千夏はポツリそう言うと、橘に背を向けた。
「こうしたら解かって貰えるか?」
 橘にそう言うれたと同時に、千夏は彼に強く肩を抱き締められた。
「先輩、ダメですよ!」
「一度だけならそうなってもいいよ」
 橘がマジで言った。

 

「疲れたなぁ~」
 野球用品を担いでいる翼が言った。
「ねっ、これから生田のお祭り行かない?」
 身軽な啓子が言った。
「いやや」
 翼がそう言うとしばらく間が空いた。のこのこ歩き始め三十分、要約六甲道駅に着いた。夕方五時を回っても夏の空はまだ青かった。
「浴衣着ようかな~」
 啓子は悪戯っぽく言う。
「祭り、いこか?ほんじゃ長田着いたら着替えてきいや」
「うん!」

 その頃千夏は、一人自転車で山道を下っていた。とにかく複雑な心境だった。自分の部屋のベッドに横になってからも長い間考えていた。橘の優しさも好意も理解できた。そして再び翼の事が脳裏に蘇っていた。 
-恋しくて。愛しくて。忘れられないよ…。
 気付くと千夏は、先日橘から聞いていた翼のメルアドを開いていた。けど、文が上手く打てない。ドキドキする。打ち終わったのだが、長い文を見直しながら送ることに対し葛藤していた。
[お久しぶりです。今日はあなたの元気そうな姿を見れて良かったです。お元気でね!]
 無心で送信した。なかなか届かないことに察し、送信中の画面で切ってしまった。

 浴衣を着た啓子はとても綺麗だった。生田の祭りは混み合っていた。
「付き合ってくれたお礼に水飴でもおごっちゃうぞ」
 啓子がはしゃいで言った。
「あとで金ない言うなよ」
「言わんよ。じゃあ買うて来るよ!」
 啓子はそう言うと、屋台に向かって走って行った。その時、翼はポケットのケータイメールの受信に気付いた。

【件名】今日はお疲れ様でした。
【本文】つばさ元気そうで良かった☆夏だからお祭り思い出しちゃったよ♪一緒に行こうなんてもう無理なことやもんね★わたしとのことは過ぎたことやもんね★
 気にしないでください。わたしも頑張っていい人見つけます。メールしちゃってごめんなさい。では]

 翼は千夏の言葉に対し、無性に彼女に対する気持ちが込み上げて来るのを覚えた。そして近くの御影石に腰掛け浸った。横に誰か座った気配がしたが、千夏と一緒に歩いたこの生田神社を思い巡っていた。
「翼くん!翼くんったら一体どうしたの?はい、水飴買うて来たよ!」
 と、啓子が問いかけた。
「ああ。何でもない…。俺の分か?サンキュウ」
「ねぇ、今晩してもええよ」
「啓子ごめんな。今晩報告書仕上げなあかんからもう少ししたら帰らんと」
「そんならええよ」
 翼は、そう答える浴衣姿の啓子にそっと口付けた。そして、
「な、俺のこと好きか?」
 と訊ねると、啓子は翼の腕に抱きついて肯いた。

 その晩遅く、翼は千夏のメールに返信した。

【件名】Re・今日はお疲れ様でした。
【本文】久しぶりやね。今日千夏のこと思い出した。今どんな気持ちでおるのかな?
 俺には彼女がおるんや。だから俺のことは忘れて欲しい。きっとその方がナツだって幸せになれるはずやから」
 
 翼のメールを受け取った千夏は、そこに僅かな望みを汲み取った。そして自分の正直な気持ちを返信した。

【本文】今どんな気持ちで??
 いつか貰ったイヤリングの様にきらきらした気持ちかなっ。
 ねぇ、私あなたのこと待っててもいいの?

 翼は、横で眠っている啓子の姿を見て現実に戻された。
 翼自身思っていないことだが、周囲の評価は優しい上に真面目である。頑固なとこも変わっていない。この事を一番理解しているのが千夏であった。それが解かっていて、今晩啓子を抱いてしまった。懐っこい啓子のことが好きだからだ。男って無責任で果かない生き物だ。翼にはこれ以上、元彼女へ言葉を返すことは出来なかった。
 愛とは何であろう?その疑問から抜け出せないのが千夏であり、翼でもあった。

 

 大阪の街にも夏特有の夕立は降る。仕事帰り売店で傘を買った千夏は、東京から出張に来ている幼馴染に逢うため新大阪駅にあるステーションホテルへと向かっていた。
 その幼馴染の小夜子(さよこ)は、翼と一度だけ面識があった。彼女にも彼氏がいて恋の話も通ずる。
 無事に小夜子と再開した千夏は、大阪や神戸の話で盛り上がっていたのだが、程よく酔いが回ると話題は翼のことに一転した。
 最上階のラウンジから見下ろす駅北の灯りは切なく揺れていた。千夏の心も揺れていた。車道に挟まれた新御堂筋線の電車が行き交う。そんな光景を目にしながら、千夏は小夜子に言った。
「もう終わったんだよ。誰か他の人を好きになって忘れたいかも…」
「千夏さっきと逆のこと言ってるよね?千夏お姉さんになったから絶対平気だよ!待ってみては?」
「でも…。男ってなかなか大人になれないって言うでしょ?」
「じゃあ千夏は大人の人を好きになったりする?」
「するよ…。たぶん」
 と、千夏は小夜子の言葉に釣られそう答えた。
「なら、ええ人紹介するわ」
 それは小夜子が言った言葉ではなかった。
「えっ?」
 千夏と小夜子が反応し、振り向いたテーブル席には思わぬ女が男といた。女の方は同級生の智子だろうか?もしそうであるならば、今そこにいるのはかつての智子ではなく、やけに色気づいた水商売風の智子だった。
「もしかして智子?」
 と千夏が訊いたのは、その年月よりも化粧と照明の具合で正体が明確でなかったからだ。
「そや!しかしまぁ、千夏はんも変わったわね~素敵になったやん」
 その話し方もまるで別人であった。
「あっ彼女、幼馴染の小夜子」
 思わず千夏は横に居る幼馴染を紹介した。
「どうもです」智子は言ったが、小夜子は無言で頭を下げただけだった。
「ど~ぉこういう人?三十半ばなんやけどステキでしょ?」
 智子は千夏に言った。男は笑みを浮かべるとスーツの内ポケットから名刺を二枚取り出した。そしてそれを千夏と小夜子に手渡した。     
 席を立った彼に、背が高いということに千夏は気付いた。
「広田浩二です。巨人から大阪PR学園の清水投手の獲得に来ました。智子さんは飲み友達なんですよ」
 広田は、大人を思わせる落ち着いた感じの話し方であった。
「そうなんですか。凄いですね」千夏は言った。
「あっ彼、このホテルに泊まるって言うからゆっくり話してって!私は店に戻りますね」   
 智子はそう言って席を立った。そのあと千夏は二人のいきさつなど訊こうとするのだが、話しづらい雰囲気であった。
「広田さんて寡黙なんですね?」
 と、話を切り出したのはずっと黙っていた小夜子の方だった。
「女性の前ではこんなです。だから何と言うか、うまくないのですねー」
「何か面白いです」
 小夜子はそう言うと、隣の千夏の肩を叩いた。
「あっ、この人もここ泊まるんで相手してあげてください。私帰らないと…」
 千夏はそう言って席を立った。
「千夏さん、ご連絡待ってますから」
したたかな感じで広田は言った。案外やり手なのかも知れない。普通の千夏だったら一目惚れのするタイプだったが、やはり翼のことを忘れられないのだろうか。

 

 翌朝、遅くまで広田と一緒に飲んだという小夜子からメールが入った。智子は大阪ミナミでホステスをしているという。広田が千夏と話してみたいという。たぶん小夜子の配慮なのだろうと気にも留めていなかったのだが…。
『何もかも忘れて一人旅に出よう』
 そう決心した千夏は、仕事を闇雲な口実で連休にして貰い、捌けなし貯金をも下ろすと、大阪環状線を天王寺まで乗った。
 南方の和歌山方面へ行くつもりであったが、ひょんなことで難波から東へ向かうことにした。直前まで迷っていた旅先を、ケータイの占いサイトで決めたのだ。いつか旅番組で見たことのあるオレンジ色の‘ビスタカー’に千夏は乗った。
『占いとは暫く無縁だったのにな』
 と、千夏は思いながら車の外を眺めていた。
 近鉄特急は、欧州の国境をまたぐように幾つもの県境をまたいで走る私鉄だ。ヘッドフォンの中のバラードが、緑濃き日本の夏景色に溶けていった。
 夢の中で誰かが問いかける。
「千夏ちゃん大きくなったら何になりたい?」
「お嫁さん!」
「そうかい、千夏は好きな人に愛される結婚するんだよ」
 それは亡くなった優しいお婆ちゃんとの会話だった。兄と弟に挟まれ男まさりの千夏も、恋をして少しは綺麗になったと思う。最近になって両親から箱入り娘扱いされているのが腹立たしくもあるのだが…。何でそんな夢など見たのだろう?
 賢島から鳥羽の水族館へと行ってみた。海面では所々で真珠の養殖をしていた。一人旅を味わっているのにカップルばかりが目に付く。館内でもレストランの席でも…。

 一泊して早めの電車で引き返すことにした。ところが乗り換える電車を間違え、名古屋に向かっていたのだ。
 名古屋駅は俗に名駅と呼ばれている。その名駅の新幹線ホームから見た向かいの結婚式場では、白いウエディングドレスを着た花嫁の姿が広いウインドウからちらりちらりと見えた。
「夢からしてどうかしてるわ」
 千夏は言葉にした。そして思った。
『この気持ち翼にメールしたいよ』
 気付くと新幹線のデッキから、千夏はその名刺のナンバーに掛けていた。
「はい、広田ですが」
「・・・」
「もしもし、どなたでしょうか?」
「私、栗原千夏と言います・・」そのあと千夏は泣き出してしまった。
「待ってましたよ」男の声は優しく千夏を包み込んだ。

 
 
 その頃啓子は、帰郷していた兄に付き添って貰い総合病院で検診を受けていた。その病名は、本人には無縁とも思える自律神経から来るものだった。初診の時は彼氏の翼に付添って貰った。まるで子供のような啓子だった。
「広田啓子さーん」
 ロビーにて啓子は放送で呼ばれた。会計に向かった。女性の薬剤師が顔を出して言った。
「今回処方箋変わりましたので間違わんよう服用してくださいね」
「はぁ。で、何ぼですか?」
「二千と六十円ね」
 今度は会計のおねえさんが答えた。
「あっ、私が払います」
 そのセリフは広田浩二であった。
「も~お兄ちゃんったら~。電話長いんやから」
「悪かった」
 そう言いながら広田は厚手の財布から万札を引き出した。それから、病院を後にした広田兄妹はタクシーを拾い乗りこんだ。
「ポートタワーまでお願いします」
 と、兄浩二は運転手に伝えた。
「ねえお兄ちゃん、関西弁忘れはった?」
 妹啓子が言う。
「兄ちゃん仕事でな。何しろうちは巨人だ。巨人軍は東京だ」
「そやけど。東京じゃ関西弁あかん?」
「それよりあんた、病気のくせして元気やなぁ」
 ここで初めて兄は笑みを浮かべ、関西弁を喋った。
「も~あんたってつまらん言い方しないといて!」
 啓子はそう言ったあと兄浩二に凭れかかった。そして言った。
「あたしの病気な、こないしてふらっとくるの。けどお兄ちゃんといると安心」
「何や、これから俺、お前の彼氏紹介されるんやないか」
「そや、あっ、お兄ちゃんのこと見たら翼くん驚くかもな」
「驚く?歳の差にか?兄ちゃんのことなんも話してないのか?」
「うん。ねっ、驚ろかそっ!」

 メリケンパークを目先に、翼はポートタワーに通ずる石畳をひとり歩いていた。
「ナツごめんな。…しかしあの頃のままやな~」
 そんな言葉を呟きながら翼はしんみりとしていた。高校時代、千夏とここへ遊びに来たことを回想していた。
『あかん!』
 タワー下まで来てそれを打ち消すと、展望台に昇るための切符を買い求めた。神戸ポートタワーは、地上百八メートルの砂時計を容取ったような赤いタワーである。
 
 360度のパノラマ展望からは、メリケンパークをはじめとする神戸港のすべてが手に取るように広がっていた。
『あれ?ちごうたか…』
 翼は窓越しの何かに気付いた。そして興味深々とそれに近付く。
「そうや、元巨人の広田や!」
 今度は声にして言った。今度はその広田が翼を見ていた。
「翼くんごめん遅くなっちゃった暑いからカキ氷かな?」
 そう早口で言ったのは、横に現れた啓子であった。二人が立っていたのは売店の横で、翼はちらりと売店を見ると言った。
「俺、ペプシでいいよ」
 翼がそう言うと啓子は買い求めた。そして翼にそれを手渡した。
「はい、お金はあとでね!」
 そんな啓子は何も買っていない。
「なぁ、啓子はん知らんか?」
「何が?」
 啓子はニコッとした。
「巨人の選手やった広田って?あれっ、啓子と同じ広田でな」
 と、翼。
「知っとるよ。広田浩二」
 啓子は言った。
「おお!あれ、その人やで」
 翼の目線の向こうを啓子も見た。
「引退後はスカウトやってるのよね~」
 と、啓子はわざとらしく言った。
「ほんまか?」
 野球青年翼は、口にしたペプシコーラーを吹き出した。
「ほんまやでー」
 そう言うと啓子は窓際の席に近付いていった。
「おいおい、何や啓子。すげーなぁ話し掛けとるや…えっ、何で腕なんか組むんや? あかんよ~そんな。マジ恋人みたいな、兄妹とはちゃうがな。…もしや兄妹??」
 気付くと翼は二人の横にいた。そう、ここは窓際の席だけがゆっくりと回っている展望台だったのだ。
「そっ、お兄ちゃん!正解~っ」
 啓子が言った。
「翼くん、初めまして」
 広田はそう言い立ち上がった。百七十七センチの翼をも遥かに凌ぐ背丈だった。
「驚きました!そんな話聞いとらんかったもんで。よろしくお願いします」
 と、翼は深々と頭を下げた。
 で、蓋を開けたら終始野球の話題であった。広田選手は一軍での開花こそ短かったが、巨人が優勝した年には控えながら三割ニ十ホーマーを記録し、“ラッキーボーイ”の称号も与えられた。むろん蚊帳の外に居たのは啓子だった。
 三人の並ぶカウンターの向こう側に再び見えて来たのは六甲の山々だった。啓子が不意にそちらを向いた時、男二人も釣られて向いた。啓子が振り返ると、今度は関係ない話題を持ちかけた。
「ところでもうすぐヒトミ姉ちゃんの法事やねん、啓子もパパ達と車で東京行くからな」
「ああ、宜しく頼むわ」
 広田は言った。
「あの~お姉さんすか?」
 と、シドロモドロ尋ねたのは翼だった。
「ヒトミちゃんてお兄ちゃんの奥さんなんやわ。でも二十代で亡くなっちゃったの…」
 啓子が残念そうに話した。
「なぁ啓子、ヒトミにそっくりな女性見つけたんやけどな」
 と、浩二はきっぱりと言った。
「へ~、ええやん!」
「始まったばかりなんだ」
 広田がそう言うと、今度は向かいに広がるポートアイランドを三人で眺めていた。まさか翼の元恋人だったとは誰も知る余地もない。

 新神戸駅下の“神戸牛レストラン”に残された二人は、デザートの杏仁豆腐を口にしている。
「お兄さん東京帰っちゃったね」
 翼は一連の余韻に浸って言った。そして偉大なる兄を持つ啓子をまじまじと見つめた。啓子はいつもながらあっけらかんとしていてマイペースだ。返事も返さず携帯を開き見る。するとそれを翼に突き出して見せた。
「この人がヒトミ姉さんやで」と啓子は言った。その画像を見せられた翼だが、何となく千夏に似ていたことに首をかしげた。
「そっか」
 翼は短く返事を返した。だがそれ以上探ることもなく、通りがかりのウェイターにワインをリクエストしていた。
「啓子はん、俺、浩二さんにスカウトしてもらえへんかな?」
「そやな!」
 啓子はマジに反応した。彼女にはその冗談が通じていないようだ。

 あれから千夏が翼を忘れられたのは、積極的な広田のお陰であろう。その間千夏は、自分が探し求めていた愛という意味に気付いた気がした。しかしその愛を知るほど、胸の奥にしまってある何かが痛んだ。

 《最終章》
 
 季節は一巡し、次の夏が終わろうとしている。そして父親の大阪転勤も八年が経ち、東京の本社に戻れる事となった。兄や弟は仕事の関係上、関西に残ることになっている。千夏は迷わず、両親との引越しを決めた。旧友が多いのもさながら、東京に住居を置く広田との遠距離恋愛がこれで解消されるからだ。
 一方翼は?と言うと彼女である啓子に物足りないのも判っていながらもズルズルと付き合いが続いていた。翼は大人になったのか、それとも年下の啓子と居るせいなのか、相手を庇(かば)う気持ちを身に付けていた。やはり翼も同様、千夏とのことは忘れかけていた。しかし翼は、広田浩二が千夏の彼氏だと知ってから、啓子とは終わっていたのだった。啓子との関係を犠牲にしてまで千夏を思ってのことだった。それは千夏に対する愛情の表れでもあった。

 翼は、京都の旧友に逢うため新神戸駅‘のぼり新幹線ホーム’にいた。『ひかり』の乗車率なんてさほどないだろうと思いつつ自由席前に並ぶことにした。
 日曜のせいかわりと人が多い。大阪人は列を作らないと言われるが、少なくともこの神戸では守られているようだ。そもそも大阪に於いて「斜め駐車」だの「赤信号は気を付けて渡れ」とか言う言葉も如何なるものか?今時珍しく免許を持たない翼にとってはわからない。耳にするヘッドフォンからはメタルロックの激しいリズムが流れていた。

「長い間ありがとうございました」
 それは大阪を発ち東京に向かう千夏の声だった。今時のジーンズにフリルのスカートを組み合わせた格好だった。そこには母親と見送りの友達含め5人程がいた。父は仕事の残務処理が終わり次第、後日車で引き上げる予定だった。
 待避線に入線した『ひかり』が、あとから来る『のぞみ』に抜かれるため止まっていた。その車内では、眠り掛けた翼が目を覚まし窓の外を伺っている。翼は新大阪であることを確認した。あとから来た『のぞみ』が止まりかけていた。すると、目の前の集団の中の一人が自分を見つめていることに気付いた。それは間違いなく千夏であった。
 胸が張り裂けそうな瞬間だった。その僅か十秒か?二十秒か…。翼の頭の中では時が止まったかのようフリーズし、無音になっていた。
 千夏も同様だった。母親らしき人物がバッグを持ち上げ、乗るよと言わんばかりに彼女の腕を引いていた。千夏は会釈して背を向けた。
翼は思う。もしここにガラスがなければ、千夏の目の前まで行ったかも知れない。行ってそして「元気でな」とでも言ったであろう。劇的な瞬間が去ったあと、鳴っていたはずの爆音が聴こえてきた。翼は闇雲にそれを切った。

 5分後、ケータイにメールが届いた。千夏からだった。
千夏@[お久しぶり。一年前、翼の姿を見て感動しました。翼の野球してる姿、やっぱ私好きなんだなぁと。でもどうして返事くれなかったの?淋しかったよ。]
 翼@[だって、俺に恋人いたから]
千夏@[いまは?]
 翼@[おらんよ。ひとり。ほんまにな]
千夏@[わたしもひとり。ほんまにね(笑)]
 翼@[そうなんや。けど、ナツ東京行っちゃうんやね。俺は京都までしか追いかけられない(悲)]
千夏@[追いかけてくれるの?]
 翼@[どこまでも^^ 少しは大人になったやろ?]
千夏@[ひとあし先に京都で降りました。ちゃんとわたしを連れて帰ってくださいね^^]

 紙一重で京都に着いた翼は、ベンチに座る千夏の後ろ姿を発見した。忍び足でその抱き合わせのベンチに座った。

 翼@[恋愛映画でも観ませんか?]

- 完 -

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 21:38 | トラックバック:1コメント:6
ご無沙汰してます。。
ranndoma-ku


お久しぶりです!!この一年で小説は過去の作品(リメイク)含め、30作近く書きました。実は写真もそれくらい(33件)撮り、充実した一年でした。普段のお洒落も気遣ってるし。やりたいことばかりであります。
それに、、病気もしたし転職もしたし、運命と言いますか?!
それは無理が生じての歪みでもあるかな・・・人からよく「欲張りだ」とか言われるけど、自分は自分を生きたい訳で仕方ないのかなっ。苦笑 
話は変わりますが、最近観た映画の『そのときは彼によろしく』と『ラストラブ』なんだけど、特に『そのときは~』は良かった!3シーンで涙が出ました。絵的な映像だったし。両者にも言えるんだけど、「病気にさせるのはやめようよ!」とか思いつつ、ぼく自身そんな話も多々書いていたので。。それでも感動を与えるという、映像と音楽の持つパワーを感じてしまいましたねぇ~。

写真は日本一高いビル、横浜ランドマークタワー展望台(69階)からのものです。この日は曇りさながら太陽に惑わされず東西南北が望め、遠方カットや旋回飛行のようなものも撮れました☆皆さんも是非上ってみてください。

なんだ!久々に開いたら(勝手に)‘拍手’のロゴが入ってるんだけど↓
| 写真 | 21:54 | トラックバック:0コメント:3
岐 路
purofu

*これは自分を主観・客観視した人生論であります。

 ネットの世界で知り合った10代の子に、そして20代の君に、30代のあなたに、40代以上の方に・・・。というように色を付けてしまうのは常識からなのでしょうか?!はっきり言って僕にとってネット友達は皆平等であります。また、社会に於いては人として尊敬できる部分をひとつでも持っている人には敬意を示しています。僕の38歳という年齢(現在)はまさに人生にとって半ばであります。特に今の自分て、色んな意味でリセットされた自分であり、それは岐路という言葉に置き換えられるでありましょう。

 実社会では年上には敬語を、年下には砕けてみたり・・・。仕事では立場の兼ね合いもあり、社会って難しいものだなぁと思いますよね?しかし僕が変わらない部分てのがあって、芯の部分が純朴な少年の頃とはさほど変わらないものであったりします。なので30歳を過ぎてから初恋を描く歌詞や小説を著作し、10代のブログ友達とも言葉のキャッチボールが出来ているのだと思うんですよ。まだ社会を知らない人たちに言いたいことが山ほどあってね、それは説教でも押し付けでもなくて。
希望、夢、勉強、経験・・・ 少なくともこの四つを堪能してきた自分にとって、これを「挑戦」という言葉に代替するとしよう!この「挑戦」は人生の全ての事柄に付いて回ると思うんです。例えば、受験、仕事、恋愛、趣味。その中にはもっともっと意味(分野)があり、自由もあれば強制(規則)も存在する。失敗は成功の元と言うように、人は失敗しながら成長していくものであるとさながら僕も思うし。反して失敗も何もなく無難に人生を終える人たちをいけないとかつまらないとか言う権限も意図もないのだけれども。僕はいいのか悪いのか、「挑戦」や失敗を相当こなしてきた人生なのです。経験という産物で、言葉ひと言でも小説が書けちゃったり、メロディーも浮んだりしちゃいます。ちなみにいま自分が描いているものは文学とは違い、読み易さを売りにした作品たちです。「まだまだ全然ダメ~!」と自分のレベルを上げていく気持ちが強いけど、頑張りすぎたときには逆に自分の能力を客観的に認めてあげたりもします。しかしながら僕は沢山の人に認められている人間ではないのです。

 そんな僕の創り出した感動が、ドラマが、作品が、ダイレクトにあなたに伝わった時点で、自称アーティストとして満たされるものだとは認識しています。そして評価に対し、褒め言葉には特に嬉しく思います!

 年代の話に戻りますが、実は自分が年下の立場で、大先輩から褒められてる事実があります。誰とは言いませんが。苦笑
それはたまたま目にした小説ブログでした。・・・潮の匂いと初恋の香り。少年のような主人公。ちらっと顔を覗かせるのが恥じらいのあるヒロイン・・・その物語を書いた彼は、実にふたまわりも年上の方だったのです。そして自分のコメントに対し感動を抱かれ、僕の小説も読んでコメントを頂き、同じく感動を受けました。きっと共通項を持つ同士なのだろうとその時思いました。そして良き仲間として続いています。
今の僕にはやりきれない程したいことがあります。それは今まで続けている音楽、作家活動、写真。仕事に関してもリーダーシップを取れる責任感と明るい職場作りをしていきたいなぁと思ってます。例え自分の努力だけではならない事だとしても、自分の回りから優しさや励みを作ろうではないか?そう、生きてきて思うようになっていきました。また、大恋愛を幾つかしリセットした今、これから出会う新しい恋にも期待しています。

 人は皆違う性質を持ち、相性があればペースも違います。僕のように即実行タイプもあれば(深くは考えますけど)、自分から見ればマイペースでゆっくりされている方が非常に多いです。恋をし仕事をしていく中で、自分の物差しで相手を見たらいけない事さえ学びました。趣味も特性も違う人間関係って、今の自分にはとても興味があります。
かつての自分は劣等感の塊で、人嫌い、引っ込み思案だったです。いつの間にか目覚めていました。たぶん人を好きになり、相手に認められる為に自分が変わろうとする気持ちが変貌を遂げ、アーティストとしても主張を持つ存在にさせたのでしょうね。元気な身である限り、思いっきり仕事をし、思いっきり遊んで生きたいです。まだまだ自分は途上の身です。

 最後に。。小さな感動から幸せを感じられたらきっと素晴らしい人生になると思います。
そして相手を捨てることも大事なんですが、その相手が居たからこそ今の自分の糧になっていることを伝えたいです。
                      
                       POPSTARこと Hiroakiより
| ブログ | 00:32 | トラックバック:0コメント:18
不埒な華
不埒な華
                      *約1時間作

 T子と花屋を通る度に僕は振り返り、微かな想いに駆られた。

 昔好きになった彼女には他に好きな人がいて、それなのに二人は出会ってしまった。晴れ渡る空の下、そんな彼女が僕の射程距離に居た。決して彼女から僕は愛されている訳ではない。上空、ひこうき雲が西の方角を正しく導くかのように、やがて沈む太陽の方向へと伸びてゆく。視界は一面海。二人の訪れた場所は湘南江ノ島であった。観光客の笑い声が風上から聞こえては消えてゆく。頭の中も身体の表面も、自由な引力を感じるぽかぽか陽気の四月である。

「あやのさん、・・・?」
後を付いてきているはずの彼女に僕は問いかけたのだが・・・
あやのさんはチューリップの咲く花壇の前にしゃがみこみそれをじっと眺めていた。僕は二歩三歩と下がり、彼女の横に同じようにしゃがみこむと一緒になってチューリップを眺めた。花は薄曇りというフィルターの中パステルカラーで生き生きとしている。こんなにじっくり花を眺めたのは生まれて初めてなくらい、草花の匂いまでも堪能することができた。僕は彼女の横顔へと目線を移した。そのとき、相手との視点の違いを感じたのだった。この人はよっぽど花が好きなんだなぁと思う。そもそも女性と男性は違う生き物だし、どれだけ花に関心あるかないかも違うんだからそんなことはどうでもいいことなんだと思うのだけど、緩やかな時間を軸として生きる華やかな雰囲気のあやのさんに心を奪われた。

 そこから再び10分程歩いた場所に磯料理の看板が軒を連ねていて、何となく主導権を得ている僕が入ろうと誘った。水槽で生きてるサザエの群れと、中から匂ってくる旨そうな香りが食欲を促したのだ。窓際のお座敷に広がる海は夕暮れ時なのにまだ青くて、僕らはビールとサザエや焼トウモロコシなどを食べながらそんな海を眺めていた。
「今日は来て良かったね」
年上のあやのさんはそう満足そうに言うと、仕事のこと、友達とのことなど話し出した。けど僕には心に引っ掛かることが常にあって、彼氏とはどうなったのか?というような話を自分から聞き出すことすらできなかった。僕と彼女の間には趣味仲間というパイプラインがあって、その壁が恋愛という言葉を封じ込めてもいた。話題が途切れると、今度は僕がその趣味の話を持ち出した。それは映画鑑賞というインドアな部分だけあって弾けたものではなかった。それでも、そんな話題で穏やかに癒される気持ちにお互いがなることを心地いいと思っていたのだろう。焼きたてのサザエをもうひとつずつ頼んでから僕は腕時計をちらりと見た。せっかちな僕の癖であるが、マイペースな彼女と居るとそんなことさえ久しくなる。結局、その日が最後のデートとなった。

 今日、T子がチューリップを買って来た。唖然としながらも僕は、彼女と一緒に色鮮やかな花々を眺めていた。
「私の顔に何か付いてるかしら?」
そう言って振り返る彼女に僕はそっと口付けをした。

 -完-

テーマ:短編・読みきり小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 18:44 | トラックバック:0コメント:7
I’m glad to meet you who love my way
I’m glad to meet you who love my way
作詞・曲:POPSTAR
*These have omitted a word so that the part may be easy to sing.
(ストーリーはあるのだけど歌いやすいように省略しました)
~In short, self-taught English, hahaha^^;


I just fell in love, you said I’m necessary you
It was cold day and falling strong rain
I could ride the train, if I went to in a hurry
to the station from party place last Christmas

You’re satisfy my desire every time anywhere by my side
Sometime I’m afraid of your gentle behavior
thank-you I love you forever

I have to live myself such want to live for you
It’s a hope, innocence in this world
Let’s sing a song and only you
I’m glad to meet you woo- I’m glad to meet you who
love my way

傷ついて泣きたい時も あなたが居てくれるからwoo-o-oh-

I have to live myself such want to live for you
It’s a hope, innocence in this world
Let’s sing a song and only you
I’m glad to meet you woo- I’m glad to meet you who
love my way
I’m glad to meet you woo- I’m glad to meet you who
love my way


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プロフィール

POPSTAR

Author:POPSTAR
HN: POPSTAR
東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
『愛ラブYOU』では短編小説を中心にアップしてます。感想などお待ちしてます!!
下のリンク欄にあるプロフもどうぞ。

*また、当ブログ及びリンクされてるサイトの文章・画像の無断転載・使用は厳禁とします。



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