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秋のS.L.S.① 「逢いたいよ」 | main | 私の恋の履歴書
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短くも美しく燃えて・・・
短くも美しく燃えて1

(序章)
 西暦が新しくなり時が流れても僕は君を忘れない。今日は七月三日、ユミの誕生日。二人で過ごす十年目の誕生日。イブの日のスーツを着て君の好きなバラを積んで、信州へと車を走らせる。


 1 ライフ
 
 平凡な毎日だけど幸せと思う。ルポライターをしている祐二は二年前年下の女性と結婚した。祐二は40歳になっていた。スマートな体型も年齢と共に増え、以前より逞しく貫禄が出ていた。お嬢さん育ちの妻、美幸とは仕事先の紹介からで、一年の交際を経て今に至る。子供は居ない。世間では天然とか言われる美幸の性格を、彼自身癒しに感じていた。小さな頃から習い事の豊富だった妻は、週に三回カルチャークラブで手芸とピアノを教えている。そんな祐二はと言うと、今日もパソコンに向かい記事を打つ。少し遅めの晩御飯のあとも再び書斎に戻り作業を続ける。フリーになってからはオフもなく、祐二は生活のため、以前より取材、原稿にと没頭した。片付けが終わると妻は、決まって食後のコーヒーを淹れて来てくれるのだが...今日は来ないのか?と、ドアをノックする音が聞こえ扉が開いた。そんな待望のコーヒーが来ても祐二はモバイルを打ち続ける。
「サンキュウ」 祐二は言った。例え妻でも礼を言うのがスジである。
「お疲れさま。今日も遅くまで掛かりそうですか?」 妻は丁重に言った。
「あ、徹夜しようかな。あ、先寝てていいから」 と祐二は、夢中になっている事もありぶっきらぼうに言った。
「私、まだ眠くないし...少しここに居ていいかしら?」 そう言ってから彼女は、書斎にある小さな窓のカーテンを閉め彼のそばに来た。祐二は聞こえてきた言葉に耳を疑った。「抱いて欲しい...」そう妻の美幸は言ったからだ。珍しいばかりか祐二には刺激的な言葉だった。戸惑いもなく立ち上がると小柄な美幸の肩を抱いた。妻は言う。
「仕事頑張ってるのにごめんなさい。...淋しいかったからつい -」
「何も言うなよ。美幸のことほっといた僕が悪いんだ」 祐二は言うと、寝室まで美幸を抱えベッドに寝かせた。そして口付けた。長くキスは続いた。そして祐二は終始彼女の愛を感じた。
 そのあとシャワーを浴びた二人は居間のソファーに並んで座り、冷えたワインで乾杯した。
「よかったら、亡くなった彼女さんの話聞かせて?」
「そうだ、美幸にいつか話すって言ったね」
「待って!」 妻は言うと灯りを小さくしBGMをスロージャズに変えた。愛されたせいか、いつに増して祐二には妻が女っぽく思えた。


 2 出会い

 祐二は遠くを見つめる目で語り始めた。そして、いつしか十年前の夏の情景が再来する。当時は短髪でパワーに溢れた青年?という感じの祐二であった。
「あれは夏だった。旅行誌の仕事で東京から電車を乗り継ぎ富山へと向かっていたんだ。その日は移動日でね、越後湯沢からはローカル電車でのんびり行こうかと。確か夏の残暑が厳しくて、そう、クーラーの効いた電車で一眠りしてしまってさぁ。気付くと列車は長いトンネルを走っていて周りに誰も居ない。僕は呑気な旅人って感じかな!?」すると横の美幸が言った。
「その話、祐ちゃんの書くルポみたいね」
「あっ、そうか。話が進まないね」と、祐二は苦笑いをして言った。
「そんな事ないよ。全部聞きたいな。それから?」 美幸は言う。
「で、トンネルを出たとこに小さな無人駅があったんだよね。よしと言わんばかりそこへ飛び降りた。のどかな景色に一人きり、思わず空を仰いでたね。たった一つあるベンチに腰掛け、昼ごはんにしようかと。そう言えば鳥のさえずりがすごかったなぁ~」
祐二は次第にその主人公になっていった。美幸には次の通りすべてを語った訳でもないのだが...

 上り電車が行ったあと一人の若い女の人がやってきて、祐二と同じベンチに腰掛けた。ジーンズにショルダーバック一つ。祐二は地元の人だと思った。その割りにチャーミングではあった。祐二はその女の子に挨拶をしてみた。彼女は笑顔で返事をくれた。当時口下手だった祐二はあとが切り出せず、その沈黙の長さに戸惑いを感じた。頭上をヘリが音を立て通り過ぎる。鳥たちが一斉に羽ばたく。 これがユミとの出会いだった。
「乗り遅れたみたいです」そう彼女は言って、再度笑顔で祐二を見た。彼女の居ない祐二は、その子にドキドキ感を覚えていた。そして持っていた時刻表を捲った。
「しばらく来ないみたいっすね~おなか空きませんか?」と祐二はバッグからおにぎりを取り出し差し出すと、彼女は嬉しそうに受け取った。それが切っ掛けとなり会話が弾んだ。ここが彼女の故郷である事、両親を亡くし墓参りに来て東京に帰る事、そして気まぐれに自分が列車から降りた事も...それから祐二は、仕事で使っていた一眼レフカメラを取り出した。
「記念に写真でも!良かったらそこに立ってみて下さい」 祐二はそう促した。
「いいですよぉ」 と尻込みしつつ祐二がカメラを構えると、女性は笑顔でポーズを作ってみせた。祐二の彼女への下心は、夢中でシャッターを切り続ける事が物語っていた。
「私こんな風に撮られるの初めてです。もしかしてカメラマンさん?」 彼女は、フィルムを巻き戻す祐二に尋ねた。
「あ、紹介遅れました」祐二はそう言うと名刺を差し出した。そこには自分の勤める出版社のほか、アドレス、携帯番号まで載せてあった。今やスピードの時代、近年流行りだした携帯やPCメールは、特にマスコミには欠かせない必須アイテムだった。
「私は名刺なんて...あっ、お花屋さんで働いてます。名前はイシウチユミです」
「ユミさん!? じゃあ今度お花でも買いに行きますよ!」
「私も、」 ユミが言いかけた時、駅のアナウンスが列車が来る旨を知らせた。直江津方面の列車らしい。
「連絡待ってるから!」 祐二は言い立ち上がった。こんな短い時間でユミに慣れる事が出来たのは、聞き上手な彼女のせいだろう。一両だけの電車が入ってくる。悪戯っぽく笑うユミから離れる瞬間、祐二は淋しさを感じた。思わず彼女に握手を求めた。目的地の違うユミは残り、祐二だけが列車に乗り込む。
「楽しかったね」祐二はドア越しから言った。
「・・・」 無言で相槌をうつユミの表情からは笑顔が消えていた。そしてドアが閉まる瞬間ユミが飛び乗って来たのであった。
「ごめんなさい。そばに居たかったからつい...」 彼女がポツリ言った。
抱きしめる!? なんてのは出来過ぎた映画の中の話で、祐二はその時は呆然とするばかりであった。
席に並んで座り言葉を無くし、二人して暮れ行く車窓を眺めていた。気付くとユミは涙を流していた。『年頃だし大きな失恋でもしたのだろう』祐二は無理に聞き出す事なくそう勝手に思うとユミの手を握った。車窓が闇に包まれる頃、涙の訳をユミは話してくれた。富山に着いた。その夜、シティホテルの同じ部屋に泊まる事を彼女は拒まなかった。


 3 ユミの命

 先に祐二が汗ばんだ体をシャワーで流すと、次にユミが浴室へと消えた。ホテルの部屋からは富山港の灯りが煌々と望めた。ノックする音がしてドアを開ける。祐二はワインをルームサービスで頼んだ。二つのキールのグラスは冷えていた。丁度シャワーから出てきたユミが来て微笑んだ。
「やっと笑ってくれたね」 と祐二は言うとワインを次いだ。そして続けて言った。
「今から僕たちは恋人同士だよ。で、乾杯!」
「はぁ...」
「元気無いなぁ~」
「そんな事ないです」
「あっ、その言い方止めようよ」
「はい、祐二さん」 そう言うと二人は笑った。祐二はユミの笑った時のえくぼがとても可愛いと思った。祐二はワインを一気に飲みほすと、あまり飲めないというユミを横目に二杯目を注いだ。
「そうだ、こっち来て見てごらんよ」 祐二はユミの手を引くと窓のカーテンを開き夜景を見せた。
「ステキ~」 ユミはそう言うと、しばらく目下のそれに見とれていた。祐二はそんなユミの肩を抱いた。祐二の指先に力が入ると自然に向き合い、ユミは瞳を閉じる。静かな時間がゆっくりと過ぎていった。
「私、祐二さんのこと好きになってるみたい」 ユミは祐二の腕の中で囁いた。祐二はその唇に再びキスをした。
取材の同行にユミが居て、仕事を忘れるほど楽しい旅となった。ユミは仕事を休み、祐二に付いてきた。涙の訳はこうである。一年前、ОLをしていたユミは突然の貧血で病院に運ばれた。検査の結果急性骨髄炎と判明、そして奇跡的に一命は救われた。一人暮らしをしていたのだが、退院後は身内である兄夫婦の家に置いてもらっているという。彼女にとっては兄貴が唯一の身内であった。再発もあり得ると言われ落ち込む毎日であった。兄に甘えていただけじゃ自分の人生は悔いを残すだけだと、気分転換にもやってみたかった花屋のバイトを始めた。そこで花の香りを嗅ぐことにより、ユミは自分が再生されていくのだと言う。
 
 付き合い始めてひと月経たずに、一目惚れをした両者が求めたのが同棲生活である。もしかしたらユミは限られた時間を知っているのでは?と祐二は悟っていた。そんな事ユミには聞けない。祐二が仕事で逢えない日が続き、喧嘩になった事もあるし。そう思うとやりきれなかった。
「ユミのお兄さんに会ってみるよ。ここで一緒に暮らすこと話したいんだ」 台風が近づく夜半過ぎ、祐二は自宅マンションでユミを抱き締め言った。
「祐二・・・ありがとう -」 しんみりとした夜ではあるが、今のユミは泣くことなく笑って言った。
「うふふっ。でも兄貴、何処にもやらないって言ってたよ」
「そうか。僕に任せろ(笑) それと仕事なんだけど、この近くにある生花市場で一緒に働こうと思うんだ」
「何それ?祐二の大切な仕事までも変えて欲しくないよ!」
「いいから ! 僕は配達なんだけど。で、面接は金曜の夕方にしたからね」 祐二はあっさりと言った。
「もぉ~無謀なんだから~。確かに今の店ここからじゃ遠いいわよね !?」
「フラワーアレンジメントもやらせてくれるらしいぜ」
「うん、やりたいなぁ !!」
「じゃっ決まりだな!」 祐二は言うと無邪気に目を輝かせるユミにプレゼントを渡した。


 4 告知

 二人にとって祐二の1LDKの部屋は十分な広さであった。ユミの兄は、妹と彼氏の同居を認めてくれた。そして二人の婚約をも祝福してくれた。祐二がユミにプレゼントしたのは婚約指輪だった。二人は生花市場で働き始めていた。ユミは一定の薬物投与で通院はしているのだが、無理のない生活ならしてもいいと医者は言っているらしい。部屋のテーブルにはいつもユミの好きな薔薇が飾られていた。ユミは週に3日働き、あとの日はのんびりと家事をこなす。明るい彼女は職場での人気者であった。何も知らない若者はユミに接近してきた。トラックに乗り込む祐二がユミに向かって小さく手を振る。彼女は彼にウインクで返す。楽しい日々が続いた。
 
 12月に入り、街は早くもクリスマス色に染まっていた。そんな中を二人は手をつないで歩いていた。
「ねぇ、私にプレゼントさせて!」そう言ってユミは祐二の手を引くと、とあるブティックへと入って行った。そして予め揃えていた服を店員より出されると、それを祐二に渡した。ブランドもののスーツだった。彼が試着するとユミは「カッコイイ」と褒め称えた。
「私の貯金で買ったの。これくらいプレゼントさせて」 ユミは満足そうに言う。
「ありがとう、気に入ったよ」 祐二はVサインしてみせた。
「少し早いけど、私からのクリスマスプレゼント」 ユミはそう言ってから突然立ちすくんでしまった。
「大丈夫か?」 祐二は動かないユミを制しながら店員に救急車の手配を頼むと、彼女を行きつけの病院へと運んだ。
担当医こそいなかったのだが、そこでショックな事を聞かされた。それは、彼女が自分の余命を知っていて普通の生活を強いていた事であった。医者は再入院を勧めたが、祐二はあと少し待って欲しいと伝えた。祐二には医者の了解が、同情としか他なかったように思えた。一晩安静にしたあと目を覚ましたユミは、自宅に帰りたいと言った。祐二はニコリとしてタクシーを呼びに行った。さすがに仕事は辞めさせ、祐二もしばらく休暇をとった。祐二はイブに向け、あるストーリーを立てていた。

 12月24日。昼まで寝坊した二人はトーストを口にした。ユミがこの日、目一杯のオシャレをしていた。そんな姿に耐え切れず思わず外へ出た祐二はレンタカーを借りに行った。予約していたのは2ドアクーペのスポーツカー。ユミの好きなオールディーズのCDを用意した。日の短いこの季節、オレンジの夕暮れがフロントガラスのスクリーンに映し出された。
それは鮮やかな絵の具のようだった。ユミのドレスに色気を感じながら湾岸線を滑らかにドライブした。横浜の高層レストランでディナーをした。薄暗い店内、窓際の席からは港が見える。もちろん予約で取った席だ。
「思い出すわ富山の夜景・・・」
「・・・出逢った日に君は僕を追いかけた」
「あなたはずっと私を抱いてくれたの」
「君の好きなものは僕も好き」
「私の好きなものはあなたも好き」
「幸せだねユミ」 そう言うと祐二は店員を呼び、コンパクトカメラで二人の記念写真を撮ってもらった。
そのあと伊豆へと向かった。静かな車内に大人の音楽が心地よく流れる。ムードに酔ったユミは、右手を祐二の左足に伸ばし、それを彼が左手で握っている。ユミは黙ったまま彼を見つめていた。
「スーツ似合ってるね」 ユミは言った。
「気に入ってる」 祐二は短く言った。東名に入っても曲は淡々と流れている。横を見るとユミは眠っていた。沼津からは海沿いのカーブを走る。それを幾つも超えた所に大瀬崎はあった。車を海に向け止める。汚れない澄んだ冬の夜空には、満面の星が輝いていた。対照的に闇に包まれた海は不気味だった。祐二は大瀬で見る日の出間近のさざ波と富士との組み合わせが好きだった。いつか愛する人にみせたかったのだ。やがて祐二も眠くなりシートを倒した。
朝焼けに気付いたのはユミだった。言葉無く二人はその情景を見ていた。空はセピアから赤に、そしてイエローから青へと変わっていった。


 5 誓い

 大瀬崎から海沿いを南下していくと恋人岬がある。二人はそこに寄る前に、傍にある喫茶店でモーニングを頼んだ。
「恋人岬に来ると別れると言う噂があるんだ」 祐二は小声で言った。
「そんなの変な理屈だわ」 笑ってユミは言った。
祐二はユミから目を逸らし、国道の向こうに見える順光の海を眺めた。
「海を見てると寛大になれる。ほらあそこ、富士山が綺麗だ」 祐二は指差して言うがユミは祐二を見たままだ。
「ずっと祐ちゃんだけを見ていたい・・・」 ユミは言った。
「何言うんだよ、まったく(笑)」 祐二は照れて横を向いた。それでもユミの心境がひしひしと伝わり辛かった。年が明けたら彼女は入院してしまう。そして二度とこうして旅立つ事もないのかも知れない...
「海って青いね」 ユミは言う。
「そうか、ユミの育った長野には海は無しか。僕は根っからの東京人だから両方に憧れはあるよ。だからかなぁ、旅行誌のルポを担当してるのは」 祐二はそう言うと苦めのコーヒーをすすりながらまた外の海を眺めた。
「知ってるよ。祐二が照れ屋さんなの」
「そんな事ないよ」
「可愛いっ」
「そろそろ行くぞ!」 ちょっとマジに怒って祐二は立ち上がった。
「ごめんなさい」 ユミはぺこりとしてみせた。
「ま、許すか」
「では次のポイントへ レッツ ラ ゴー!」 ユミは元気に言った。祐二はずっとユミが元気で居て欲しいと心で願っていた。祐二は、いつに増してユミが咳き込んでいるのを朝から気にしていた。結局、恋人岬には寄らずドライブを続けた。それと名所すべてに寄るのも疲れるので、次は武家屋敷のある松崎に向かった。
「着いたよ」 祐二はそう言うとすばやく車を降り、ユミをエスコートした。そしてユミの手を引き歩いた。
「ここは中学の移動教室で来たんだ。ほら、あそこに武家屋敷がある」
「本当だ」 と、ユミは愉快に答える。観るものすべてを新鮮に感じる純な彼女を祐二は発見した。
 マーガレットラインは冬のせいもあり華やかな花は咲いていなかった。この日は、伊豆最南端の石廊崎に寄ってから東伊豆の温泉に泊まり、翌朝には東京に戻る行程だった。
「疲れてない?」 祐二は岬に通じる駐車場で、目を覚ましたユミに聞いた。
「うん」 とユミは小さく肯くと直ぐに車から降りた。祐二はエンジンを切りユミのコートを持つと車を降りた。そしてコートを着るように言った。
冬の海だというのに風も無くポカポカ陽気な日であった。その目前に広がる地平線を二人で見た時間は、今でも祐二の脳裏に刻まれている。その時のユミの言葉も...。人気(ひとけ)なく遠くに行き交う船がある。そして丘の斜面に座っている。
「ここもまた静かなとこだね」 祐二は二人出会った場所を思い返す様に言った。近くに小鳥の囀りがあり、まさにオーバーラップしていた。
「好きよ、こういう場所」
「そうか。ところでユミ?早いとこ籍入れよう」
「...ありがとう」
「よし、明日東京に戻ったら入籍だ」
「でも、気持ちだけでいいの・・・」 ユミは言う。祐二はユミの気持ちを察知すると立ち上がり、そして言った。
「ねぇ、ここで二人だけの式しよう!」
「いいねっ。賛成!」 ユミは言うと立ち上がり、ドレスの裾を正した。
「まず、最悪な式でごめんなさい」 祐二は言った。
「はい」 ユミは真面目に答えた。祐二はポケットから二つの指輪を出すと、大きな方をユミに渡した。そしてユミから誓いの質問を述べた。続いて祐二が...
「イシヅチユミはユウジに永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」 ユミは答えた。祐二はユミの左薬指にリングを挿すと、ユミが祐二の頬にキスをした。
 ヒバリの鳴き声が潮騒に溶けていく。帰りたくないというユミに付き合い遂に日没を迎えた。波がシルエットになった頃、腕の中でユミは言った。
「こうしてあなたに抱かれ死んでいけたらいいのに・・・」
それに答える術もなく、黙っているだけの祐二であった。
「私、いまキレイ?」
「ああ、バラの様に綺麗だよ・・・だから僕は枯らさない様にする」
次の瞬間、ユミは泣き崩れた。祐二はその涙が枯れるまで泣かせてあげた。

 そこまで話すと部屋のBGMが途切れた。祐二に寄り添い聞いていた妻の美幸は潤わせた目で言った。
「彼女さん幸せだったでしょうね」
「そう思う?...そうだね、短くも美しく咲いた花の様な人だった」 十年前の思い出に浸りながら祐二は言った。
「その晩、旅館に入って事態は起きたんだ。温泉に浸かり食事食べたあと彼女、具合悪いって言うから僕は直ぐ寝かせてあげた。風邪だって笑ってたのに・・・朝まで抱きしめて寝てたんだけど彼女が逝くのが判ったんだ。冷たくなっても僕は抱きしめていた」
美幸は涙を流していた。祐二は付け足して言った。
「毎年君に内緒で墓参りに行ってるんだ。ちゃんと話してから認めて貰いたかった」

(終章)
「ただいま、ユミ」 晴れ渡る初夏の空。ユミの眠る地に手を合わせる。
「君との事、妻に話したよ。・・・君が羨ましいって」
きっとこの空の上で笑っているだろう。暫く僕は鳥の囀りを聞いていた。陽が傾き、愛車のドアに手を掛けたその時、目の前に虹が出た。僕は「サンキュウ」と呟き、軽快に車を走らせた。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 02:48 | トラックバック:1コメント:2
コメント
短くも美しく燃え、これってたしかモーツアルトの作曲で映画にもまたイージーリスニングで演奏されていますね。
まず、題名に惹きつけられて読ませてもらいましたが秀逸でPOPSTARさんの感性ってすごいなあと思いました。祐二に妻の美幸が彼女さんの話聞かせてという場面から10年前のユミさんの話に自然に柔らかに戻ってゆく二人の関係が親密だけど今の小説のように性的描写が露骨でなく美しく描かれていて急性骨髄炎と診断を受けて彼女の最後を看取るその描写が悲しく切なく美しく、またひばりの鳴き声が潮騒に溶けてとか波がシルエットになったころなどと素晴らしい表現がされています。僕もこんな美しいことば使いたいし、こんな小説書きたいとつくづく考えました。
一度新風舎で恋愛短編を募集していて入賞者は無料で短編集を載せて発売するそうです。HPをごらんの上是非チャレンジされてみてはいかがでしょうか。
2006.11.19 Sun 00:14 | URL | ヒロクン
ヒロクンさんへ
「短くも~」モーツアルトの曲名とは知りませんでした^^;
私の感性は写真撮影や音楽からも得たと思います。映像制作からは間の取り方(テンポ)の大切さなどが身に付いたと思います。
短編集の件は興味あります。HP見てみます。ありがとうございます。
2006.11.21 Tue 13:56 | URL | POPSTAR
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フラワーアレンジメントとは
こんにちは。突然のトラックバック失礼します。フラワーアレンジメントについての情報交換しませんか?
| 花について | 2006.10.21 Sat 00:07
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Author:POPSTAR
HN: POPSTAR
東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
『愛ラブYOU』では短編小説を中心にアップしてます。感想などお待ちしてます!!
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