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麦わら帽子 ~第三話 母子家庭~ | main | 麦わら帽子 ~第一話 恋の双曲線~
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麦わら帽子 ~第二話 祐美の思春期~
麦わら帽子 第二話

        作/POPSTAR イラスト/黒咲さん

 岡谷祐美(おかやひろみ)は、幼くして母を亡くした父子家庭に育ち兄弟もいない。「1歳になる頃まで祐美はお母さんに抱かれていたんだよ」と、父から幼稚園の頃聞かされた覚えがある。祐美が「一緒に写っている写真が見たい」と言うと、「お母さんの実家にあるんだ」と父は渋々答えた。母の両親は父を嫌っているようだが、私には母の子だということで良く接してくれた。父と母は隣県ながら、お互い行き来しながら逢っていた。そして母親のお父さんの反対を押し切り十代で同棲を初めたことで、結婚を認めないと言ってきたらしい。式を挙げずに母が二十歳を迎え籍を入れたという。

 祐美は反抗期になっても父親に背を向けることはなかった。その背景には、自分の気持ちを誰よりも理解してくれる父のことがとても好きだったから、と祐美は思う。ただ、長かった髪をばっさり切ってボーイッシュな雰囲気を漂わせるようになってから、自分でも自立していく様相を感じていた。
 三年生に入ってから、石和(いさわ)という男子が自分のクラスに転校してきた。二年生から組み替えもなく穏やかな日々に異変が起きたのは彼の存在からだった。祐美は育ちの良さそうな風貌の石和君に想いを寄せ始めた。成績も良く、スポーツも万能だ。矛先にはいつも彼のことが頭にあった。しかし彼を思う女子は何人もいて、到底叶わないとも思っていた。
 石和君が他の子と仲良く喋っているのを見たときには、その嫉妬から逃れられなかった。それでも彼が机に着き自習を始めるのを見ると、萎縮していた胸のときめきが膨らんでいった。親友・広瀬沙耶(ひろせさやか)も彼を絶賛していた。清楚な彼女であるなら彼を射止めることができるだろうと思ってもみた。沙耶は女子からも憧れの存在で、聡明かつ美貌であった。反面、その事実に反するかのようにシャイなのである。そう祐美は理解していた。

 ある時期から石和君は祐美に目配せしてくれる様になった。祐美は誰からも話しやすいと言われるくらい垢抜けていたのだが、石和君に対しては上手く話せずもどかしかった。その彼が一緒に帰ろうと言って来た時、祐美は掃除当番の沙耶を置いて帰ることにした。
「石和君!マック寄っていかない?」
 と、祐美は勇気を出して言ったのだが、石和君からは予期せぬ返事が帰ってきた。
「いいけど。広瀬さん待たないでいいの?」
「うん、沙耶掃除当番なの・・・」
 と、祐美は落胆しつつ石和君に、「待った方がいい?」と聞き直した。
「いやっ、いない方がいいかも知れない」
 と、石和君は曖昧に言った。祐美は、その言葉に期待した。
 ファーストフード店に入った二人は、幾つかのテーブルで戯れる高校生に圧倒されながら隅の席を見つけると、そこに腰を下ろした。祐美はまずコーラーに手を付けた。喉が渇いていたからだ。石和君が話し掛けてきた。
「今日、三輪智史(みわさとし)が田村に虐められているのを知って田村にやめろと言ったんだよね。あいつ、女々しいとこあるけどいい奴なんだ。ただ、父親が他に女作って出て行ったらしくて・・・」
「あっ、その噂本当だったのね」
「その噂ってやつ、田村が言いふらしてたんだ。俺と三輪、共通の趣味で仲良くしてるんだけどね」
「趣味??」
「パソコン。ホームページの作り方とか教えてあげてる。逆にあいつからはピアノを教わってるんだ」
 三輪智史は男子なのにピアノが弾ける。「男子なのに」と言うのは偏屈ではあるが、大抵習い事でピアノと言うと女子のイメージを持つものだ。三輪の母親はピアノ教室を開いていると祐美も知っていた。
「へぇ~」
「その三輪なんだけど・・・どうやら岡谷さんのことが好きみたいだよ」
「私は・・・」
「何?」
「何でもないよ!」
「そっか。実はその、俺、広瀬沙耶に告白しようか迷ってて。でも言いづらくてさぁ」
 祐美はその彼の言動に落胆すると共に失望した。
「そうだったんだ。・・・それじゃ私から聞いといてあげようか?」
「そうして貰えると嬉しいかも」
「うん。それから三輪君のことなんだけど・・・唐突過ぎて考えられないの。ごめん。じゃわたし帰るね!」
 そう言い残すと祐美は席を立った。苦い思いを噛みしめながらその場を脱した。憶測だが、彼は哀れな私に気付いていない。それもそのはず、自分は素直な気持ちを彼にぶつけていないのだ。そして彼は沙耶との仲介を期待しているであろう。祐美は思う。

 自宅に帰る途中涙がこぼれてきた。失恋の痛みはやはりあったのだ。自宅のアパートに着くと何故かほっとした。ふとぼりから醒めると、父がいつもご飯をあげている小さな仏壇の前に立っていた。その引き出しには、痩身で美男子な青年と、少しふっくらした顔で柔らかい目をした母の、仲良く寄り添う写真が入っていた。その青年というのは若き頃の父であるのだが・・・祐美は淋しくなるといつもその写真を眺めた。
 (私はこの二人に愛された結果この世に生まれてきたんだ)と、安堵してみては時折、今の父の寂しげな後姿に同情することさえあった。この日、初めて母の位牌を手に取った。
 (あれっ?) そこに刻まれた命日は祐美の生まれた誕生日であったからだ。驚愕と同時に唖然とし、もしこの日が一日でもずれていたのなら私は母の子ではないのだろう?とさえ悟ってもみた。祐美は戸惑いながらも冷静に考えてみた。柔らかい目をした女性は、本当に肺炎を起こして死んでいったのか?難産の末自分の命と引き換えに命を落としたのではあるまいか?まだ中学生の祐美であるが、そう推測し察することが出来た。
 夜の帳がおりる。もうすぐ父が仕事から帰って来る。祐美はご飯を炊き、サラダと味噌汁を準備する。これは中学生になってから自発的に始めた家事だった。父は祐美が飽きないよう魚や肉、惣菜など選んで買ってきてくれる。祐美はその夜、母の本当の死因を確かめたいと思うと、心の揺らぎを抑えながら父の帰りを待ち望んだ。

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テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 04:33 | トラックバック:0コメント:9
コメント
どうもです。
ブログに書き込みありがとう。
管理人のみの閲覧だったんで、お返事はこちらに書かせてもらいま~す。
私も一時期はニートや不登校の子の面倒みていたんですよ。
でもそこのスタッフがもう抑圧的で威圧的で、暴言ばっかだったんです。ありえないかんじ。しかもボランティアですよ!!!そこまでさせるか?と言う感じで。
で、パニック障害になったんですよ・・・
で、ドクターストップ!

今は快方に向かってますけどね。
人はいろいろありますからね。

新風舎はあまりお勧めしませんね。
佳作に入れといて、お金とって本を作るエキスパートですから。仕事は丁寧でありながら、基本はそこにあるんですよ。今の担当の方からも聞いたんですけどね。
それで有名なのが新風舎ってわけです。
でも私も過去に何度か出品したことありますよ。
ちゃんとに評価の感想も書いてあって、一緒に「本を作りましょう!」っていうパンフレットと、申込書かなんかが
入ってました。
値段のことはまったく書かれておらず、問い合わせたら
「共同出版」ということでした。
自費出版したい人には最高の会社でしょうね!
とにかく丁寧だし、連絡は密だし。
あとは腕とキャリアがありますからね。
それでは。あんく。
2007.09.08 Sat 18:05 | URL | ank
ankさんへ
今日は友人と自宅で曲を作ってました。昼過ぎ彼の「バレーヌ」の方へランチを食べに行きました。マジで美味しかったなぁ。ポークソテーのレモンの酸味が良かった。妹さんもお姉さん似でお綺麗でした^^

<そうでしたか・・・ぼくは睡眠さえ摂れれば元に戻るそうなんだけど、気分を落とす薬を飲んでます。

<やっぱそうなんですね。確かに出版の勧めを受け取ったとき、そんな新風舎の意図には気付きましたね。苦笑

コメントありがとう☆
2007.09.08 Sat 20:36 | URL | POPSTAR
ご無沙汰してマス。
POPSTARさんこんにちは!
blogの件、お知らせしなくてゴメンなさい(>_<)
先日、なかなか更新出来なくなったので、
一度閉鎖してしまいました。。
ですが、近いうちにまた新しくblogを立ち上げる予定でありマス♪
その時はPOPSTARさんにご報告致しますので、
今しばらくお待ち下さいませねm(__)m

内容と関係ないコメントでゴメンなさい(>_<)
また遊び行きまーす★☆
2007.09.15 Sat 14:49 | URL | 流華。
流華。さんへ
そうだったんだぁ。ちょくちょく見てたから淋しさを感じてしまいメールしちゃった・・・でも、また新規でやられるというので楽しみにしてます。

小説も読んでね!笑
2007.09.16 Sun 19:05 | URL | POPSTAR
いつも素晴らしい物語を書いて居られます
こんにちは、幼くして母を亡くした岡谷祐美(おかやひろみ)さん中学生になってあらたに転入してきた石和君に
ほのかな恋心を次第に持ちはじめていく過程が実に繊細に描かれていて、ときめきを抑えつつ、「マックに寄らない」と一言いって、それから石和君からはもっぱらほかの女の子とか男の子の話しになり、祐美は自分のこと、どう思ってるかを知りたかったと思います。でも石和君から話がなく、物思うちょっと触るとくだけそうな心を持ち多感な少女裕美のがっかりして悲しい気持ちがよく掛けています。

僕は中学、高校が男子のみだったのでそういう経験がまったくなく不幸(笑)なので、小説書くにしても社会人になってはじめて女性と接しているので30代の女性しか書けません。きっとセーラー服が似合った頃の話だと思うのですがいかがでしょうか。

と言うか、この間、バスに乗ってましたら二人の女子高生が「それでA子が付き合ってた子どうしたの?」と聞いていたら、B子が「あいつ、つきあってねえよ」「えっ何で」「あいつうざいんだよ、でこっちから振ってやったよ」となんとも私にとってはいまどきの高校生って」とたまたまだったんでしょうが、驚いてしまいました。

それでこんな純粋な石和君、祐美さんはきっと古い時代と思いました。
もし、間違ってたらごめんなさい。
2007.09.24 Mon 20:31 | URL | HIRO
HIROさんへ
いつもありがとうございます。

いやっ、今の子でもそういう言葉とか様相を振り舞う子って実際少数だと思いますよ。目立っちゃうというか・・・都会っ子と地方や田舎の子たちの言動とかも調べたこともないですけど、純なのはやはり田舎の子達ではないのかと??

ぼくもこの時代(高校)は男子校だったので想像でしかありません。

祐美の心境~わざとさりげなく流して書いてる部分なのに、HIROさんはやっぱ作家としてポイントを読めちゃうんですねー。嬉しいです。それから、それを感傷的に思う程深い愛を持ってるのではないかと思います。

昨日ある本を読んで、後半まで機械的な話だなぁと思いつつ、、たった一行で涙が流れてきました。一体この気持ちは何でしょう?

小説とか映画って素晴らしいと思います☆
2007.09.24 Mon 21:06 | URL | POPSTAR
おほめいただき恐縮です。
これもPOPSTARさんとのブログでの出逢いがあったればこそです。POPSTARさんを含めいろいろ小説読んで、自分でも書くようになって感情移入をはじめて男女の繊細な気持ちを掬い取る事ができたからです。
たしかにバスでたまたま目撃した事、テレビで見た事で判断してはいけないと自制をこめて反省してます。
出版社で僕の本見て、私、亜理紗のような女性目指したいんですと若い女性がいってくれたことはうれしくて忘れられません。
2007.09.25 Tue 16:35 | URL | HIRO
新ブログ「作家のたまご」開設について、ご挨拶
こんばんは、麦わら帽子の絵がとても素晴らしいと思います。イラストとか絵が得意だと小説にも色を添えて一段とよくなるのですが、その才能はありません。
ところで本日FC2ブログに「作家のたまご」を開設しました
自費出版を機会にもっと文学を広い目で見たいと考えて分析、研究してより感度の高い、感性の優れた作品を書こうというのがその目的です。
それで日本、西洋文学をはじめ今月の書評とか、作家の条件とか特化専門化したブログにしたいと思っています
FC2はまた多くの小説家を志そうとする人たちがいるように思います。その面できっとプラスになる面があるだろうと
思います。
どうかお暇なときにはお立ち寄りください。
2007.09.28 Fri 21:09 | URL | HIRO
新ブログURL誤作動修正について
おわび訂正について
新ブログ開設にあたり、テンプレートの誤作動でURLが間違っておりました。
お詫びして上記URLに訂正いたします。
2007.09.29 Sat 15:20 | URL | HIRO
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Author:POPSTAR
HN: POPSTAR
東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
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