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フレンチトースト
 入った喫茶店で流れていた歌は“コブクロの「桜」”だった。その懐かしくて力強い熱唱に、俺の中にある色褪せた青春の1ページが押し開かれる。

 俺が田舎から出てきて都会の片隅に生きていた頃、付き合っていたひとりの女性がいた。彼女は裕福な家庭に育ち、高価なブランドを身に付けた学生だった。反して俺は、汚れたジーンズに安もののシャツ、おまけに靴は軒先のカゴで売っていた処分品だ。それなのにお嬢さん育ちの彼女は、そんな俺でもいいと言ってくれた。俺には優しさのかけらさえなかった気もする。逢いたいときに呼び出しては、必ず彼女は俺より先に待ち合わせ場所で待っていた。連絡も入れず1時間も待たせたときには喧嘩になったが、しばらくして「ごめんなさい」と彼女から謝りだしたのだ。そのときシュンとした彼女の背中を見て、俺は喫茶店に連れて行き彼女の好きだったパフェを注文してあげた。俺はブレンドコーヒーとフレンチトースト。これが精一杯の贅沢だった。
「俺はお前を幸せにできる自信がないから別れてくれ」そう言った。彼女は唇を噛みしめ時間を置いてから小さくうなずいた。俺は男らしくなかった。自分には地位も経済力もないつまらない男だと悲観してたんだ。何ひとつ不自由のない彼女に対し妬みもあったかも知れない。

 それから10年経っても心から恋人と呼べる相手ができなかった。その代わり欲しかった地位と経済力を手にした。すかさず喫茶店に入ると質素なブレンドコーヒーと一番安いフレンチトーストを注文していた。身だしなみには気を付けるようになったろうか。その日、俺は十年前別れた彼女と待ち合わせをしていた。胸が張り裂けるような期待と不安でいっぱいだった。そして不思議なことに彼女より先に来て待っていた。やがて彼女が現れた。
彼女の近況を聞いたあと俺はがっかりした。彼女は結婚していたのだ。そんな彼女が言った。
「やっぱり私、あなたを好きになって良かった」
「何故?」俺は尋ねた。彼女は言う。
「そのフレンチトーストを思い続けるような気持ちが好きだったの」
「何だって?」俺には理解不能だった。
「それと、私が落ち込んだときには絶対優しかったから。・・・私もこのフレンチトーストのように変わらずに愛して欲しかったな」

 彼女と再度さよならしてから俺は気付いた。彼女には本当の愛があったことを。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 03:13 | トラックバック:0コメント:4
コメント
こんばんは、短編なのに男と女のすれ違いの感情と切ない愛がよく描かれていてそしてジーンとくるところが素晴らしいと思いました。最初彼がいつも相手を待たせていて口論になったとき彼女のほうから謝ったこと、その一つとっても裕福な家庭に育って品格がよくことばに表現できないおしとやかなお嬢さんだったと思います。後段彼女が好きだったことに気がついてしかし10年後の再会でもう彼女が結婚してることを知ってずっと彼が好きだったフレンチトーストのことを「そのフレンチトーストを思い続けるような気持ちが好きだったの」という彼女の一言にジーンと来ました。
POPSTARさんの小説はいつもとても繊細で泣きたいような美しさ、今の巷の小説はそのあと二人はラブホに行って・・・などの描写が詳しかったりで僕はそういう結末好きではありません。余韻が残って後は読者が思いに浸るような小説が好きです。とても素晴らしい小説です。
2006.11.28 Tue 18:57 | URL | ヒロクン
ヒロクンさんへ
たぶん本来自分が繊細なので書けちゃう部分と、こう来たらこう来るだろうという直感で書いてます。ぼくは考えたり煮詰めては書かない方です。ひとつのテーマ(落ちなり気付き)が最後までにあればぼくは一安心しちゃいます。笑
読者がHなもの望むのならそっち系専門の作家の小説を読んで貰えばいいと思ってますしね!
2006.11.29 Wed 08:34 | URL | POPSTAR
POPSTARさんへ
恋愛小説を書く場合でも男女の愛を最初からHしたというドラマとか小説が多いですね。作品のヒントを得たいと時折テレビドラマ見るのですが、折角の話が会話の~で、本屋に行ってもそういう物語が多いです。僕は最初の小説「愛は」を書いてS社に持っていき、「果たして幼稚園、小学校時代の幼馴染から20年後の出会いで実を結ぶ、こんなものが今通じるでしょうか」と企画・編集の女性に聞いたことがありますが、30歳近くのキャリアウーマンだったのでしょうか、仕事に追われて気がついたらもう歳でこういう純粋な女性に実はあこがれるんですという話を聞いて性の濃厚な小説が氾濫する中で純愛もいまだに一部の層から支持されることに気がつきました。
POPSTARさんの作品はどれを拝見しても美しく切なく純粋さがあって素晴らしいと思います。
僕ももし読者がHなものを求めるならそれを買って読んでもらえればと思います。
2006.11.29 Wed 13:10 | URL | ヒロクン
ヒロクンさんへ
いま新高島にある109シネマで『手紙』観て来ました。純愛とかって人気あると思いますよ!客層は女の子同士(大学生くらいの)が多いし、ぼくの小説読んでくれる女性はきっと真の愛を期待してくれています。
2006.11.29 Wed 16:50 | URL | POPSTAR
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東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
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