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Every-day’s valentine ~想い焦がれて~ | main |
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君を見ていた季節
 草の匂いのするこのバス停。私はこの村に帰ってくると、いつもここへやって来る。雲の切れ間から暑い陽射しが大地を打ちつける。よみがえる美しい思い出。瞳を閉じ、いま少年の頃の自分になって...。

 高校時代、無口でしたたかだった僕は、たった一人の女の子をいつも胸の中で追いかけていた。その子には僕になかった明るさがあった。それに、優しい心も。
 通学はバスに乗ってだった。この村でも田舎に住んでいた僕は、始発に近い所から乗っていたので、いつも決まって後ろの席に腰掛けていた。途中でバスは、生徒や通勤のサラリーマンで満員になっていった。思春期になると誰しも異性に興味を持つように、僕も女性が気になっていた。通学するバスでも、スーツを着たОL風の女性に魅力を感じていた。年上の女(ひと)に興味があったのでつい見とれてしまう。『高校生なんて…』と思っていた自分は偏見的なのか?そしてヒールを履く熟(う)れた脚をじっと眺めていたものだ。とあるバス停からは、まとまって同じ高校の生徒が乗ってくる。その中に同級生の女生徒がいた。他と同じく、ずっと関心の無かった類(たぐい)ではあったが、ふとした出来事から気になるようになっていた。休日、町まで出掛けたバスでの話である。途中、二人の女の子が乗ってきて僕の前の席に座った。バスが動き出すと同時に二人は話はじめた。自然と耳に入ってきた会話は、女の子同士で出るアイドルの話である。愉快な会話は弾んでいた。やがて男の話題に移行した様だった。突然、窓際のサトミと呼ばれていた方が声を上げ言った。
「そんなHなら私だったらしないよ!」
周りに聞こえるのがまずかったかの様に、彼女は後を振り返った。その時、僕と目が合ってしまった。僕は思わず窓の外に目を逸らした。そのあと町に着くまで彼女たちはおとなしくなった。同じ学年のD組女子とあとで知った。そして朝の通学バスで、僕を覚えている様子のサトミは決して僕とは目を合わせなかった。それが僕の気になっていた理由であった。

 その年の文化祭で、僕は出席をとったあと直ぐに帰ろうとしていた。その前にお腹が空いていたので何か食べる事にした。何人かの友達ともはぐれ、一人とある教室へ足を踏み入れた。そこの片隅に座り、頼んだ焼きそばの出来上がりを待っていた。人の気配がし振り返ると、例の彼女、すなわちサトミだった。彼女の手から僕は出来立ての焼きそばを受け取った。
「こんにちは。ごゆっくり」
サトミは可愛らしい笑顔で言った。
「いただきます」
と、僕は無表情なままそう言った。それだけの事だった。
「サトミ、早く来てよ!」
そう言ったのは、あの日彼女と一緒にバスに乗っていた相方だった。彼女は僕から離れると、忙しそうにも明るく振舞っていた。焼きそばを食べながら、僕はサトミを遠目で見ていた。しばらくして僕は席を立った。そして教室を出ようとした時、サトミは僕にニコリとして見せた。つられて僕も会釈をした。『自分に気があるのかなぁ?』そう思いながらも、サトミに対し好意が芽生えていた。しかしその可愛らしい笑顔は、バスではまた見られなくなった。何を考えているのだろう?と思うも束の間。彼女が校内で彼氏らしき男子生徒と仲良く歩いているのを見て、気になっていたもの全てが消えていった。

 月日が経ち、三年生になる時にクラス替えがあった。帰宅してから、僕は貰った名簿に目を通した。そこには南里美という名前があった。見た覚えがないから違うだろうと思った。翌日、バスを降りるサトミのあとを付いていくと、どうやら同じ教室へと向かっているようだった。僕は彼女に挨拶でもしようものか迷っていた。
「おはよう!」
そう言って彼女に絡んできたのは相方だった。彼女も同じ教室へと入っていった。無口で口下手な僕は、サトミとは特に話す事もなく毎日が過ぎていった。一学期半ば、サトミに彼氏が居なかった事実を耳にした。それまでも遠目で見るサトミの笑顔に恋していたのだが、その意識は加速していった。あいうえお順で同じ頭文字の二人は、3順目にして日直当番が一緒になった。
 その日の放課後、気付くと二人きりになっていた。元気なサトミにとって僕の寡黙さはじれったいであろう。自分とは違うタイプを好きになっても、相手にとっては自分の事は特別な意識にはないだろう。好きなのに正直にはなれず、冷めて見せてしまう。
「三木くん、それ貸して!」
僕の心理を無視しているかの様に、サトミが僕の名を呼んだ。僕は黙って持っていた黒板消しをサトミに渡した。
「三木くんてホントに喋らないんだね」
やはりそう思っていたのか…。僕は思わず苦笑いした。
「性格だから」
「でも、かわいいから許すよ!」
何だか舐められているのかよくわからないけど、その時は悪い気はしなかった。
「今度の合唱コンクール、ピアノ弾くんだね」
僕は勇気を出して、自分からサトミに話しかけた。
「うん、ピアノは3歳から習ってたのよ!」
「僕は趣味も特技もないつまらん男だよ」
そう言ったあと笑ってみせた。サトミもつられて笑っていた。この日から僕は自分に目覚め始めた。だが、自分の殻を破れた訳ではないが、思春期で抱くモテたいと思う気持ちは正直だ。それも人から比べたら遅かった。

 成績が上位だった僕は、同じく優等生の今井ゆかりという女生徒から好かれていた。彼女も物静かで、寡黙な自分から見ても冴えない。そんなゆかりには目を向けなかった。相対して、笑顔の爽やかなサトミへの片思いが募るばかりで仕方ない。今の大人の私ならきっと違うと思う。自分から話しかけて気持ちを探るであろう。いや、その前に好きにさせる事もするであろう。逆に奥手な人ほど片思いで終わってしまうのかも知れない。未熟だがキレイな心。人はいつしかそれを忘れ掛ける。

 季節は夏に入る。漠然と進学しようと決めていた呑気な僕は予備校に入ることなく、自習に臨んでいた。それでも夏期講習は受ける事にした。唯一の親友にも講習に誘ったが、予備校で開かないと断られた。今井ゆかりは僕に比べれば度胸があった。彼女は予備校に通いつつ、この時期だけ僕と同じ夏期講習にも入部すると言い出した。家も裕福なのか? ゆかりは講習の間いつも僕の隣に来て、講義を受けていた。そして、終わると黙って付いて来る。そして決まって僕に、「何か食べない?」そう問いかけてくる。僕はそんな事を考える余裕もなく、勉強のことで頭が一杯だった。ゆかりとデートしようという意識すらなかったからだ。私服のゆかりは、学校で見るよりオメカシした出で立ちで、ほのかに慣れない化粧をしているようだ。そのゆかりを可愛く思える様になった頃、講習は終わった。その最終日、模擬テストの結果を見てゆかりは言った。
「三木くんに数学教えて貰いたいの」
僕は考えたあとOKを出した。勉強は、ゆかりの家でという事だったからだ。
「こっちだよ!」
「やっぱ今井さんちなんて入れないよ」
間近まで来て僕は躊躇(ちゅうちょ)したが、最後は手を引かれた。玄関を入るとそこは静まり返っていた。そのまま二階の部屋に案内された。
「今の時間、誰もいないから安心して」
ゆかりはそう言うと、二階にある自分の部屋に僕を案内した。二人が部屋に入ると、彼女は鍵を閉めた。綺麗に整頓された部屋には、真面目な文学書や参考書が並んでいた。ゆかりが慌てて隠した本を僕は見逃さなかった。そのタイトルは、『相手を好きにさせる心理学』であった。
「三木くんはここに座って! あっ、あたしジュース持って来るからちょっと待っててね!」
ゆかりはそう言うと満足気にキッチンへと降りて行った。まるで‘ままごと’をしているかの様に楽しそうに…。今日のゆかりは別人の様だった。一方、したたかな当事の僕は、無情でテキストを並べた。直ぐにゆかりが戻って来ない事に間がさして、ちょっぴり甘い匂いのするゆかりの部屋を見渡していた。そして、ベッドの上に転がる大きなクマさんの縫いぐるみを手に取ってみた。そこにゆかりが戻ってきた。そんな僕を見て、彼女は笑みを浮かべていた。僕は直ぐにそれを戻すとさっそうと席に着いた。ゆかりは甘ったるい声で言った。
「ジュースお待たせ。おやつも用意したよっ!!」
彼女はクローゼットからもう一つの椅子を出すと、僕の横に座った。ジュースとおやつを口にしてから勉強は始まった。ゆかりにとっての数学は、かなりの難関らしく、僕の下手な説明じゃ先には進めなかった。そのとき僕はゆかりに言った。
「連立方程式から教えて欲しいだなんて、理数系諦めた方が無難かもよ?」
「ううん。あたし三木君と同じ大学の同じ学部に行きたいから、絶対頑張る!」
「えっ?」
開いた口が塞がらない。それにゆかりは輪をかける様に言った。
「ねえ三木くん、好きな人いる?」
ゆかりは凛として、意を決したかの様に尋ねた。
「何でそんなこと?驚くじゃんか。…あぁ、そんなのは…今は勉強でいっぱいだし」
ゆかりの気持ちには気付いていたものあまりに突然で、返す言葉にも戸惑いを隠しきれなかった。それにやはり、サトミの事が好きだった。その心理を見抜く様にゆかりは言った。
「南里美の事好きなんでしょ!?  残念だけどあの子、遠恋してるの」
「えっ?!」
僕は意表を衝(つ)かれたと同時、指に掛けていたシャープペンシルを床に落としてしまった。ゆかりは立ち上がったのだが、それを拾うことも無く僕の背中に抱きついてきた。
「三木君、好きっ。私たち二年から一緒でしょ!? 南さんには取られたくない」
「大げさな」
「だって、ずっと三木くんのこと好きだったんだもん」
ゆかりはそう言うと泣き出した。
「こうやって泣けば好きになってくれるとか思っていないよね?」
「…思って…ない」
「今井さんの気持ちは解かった。でも今日は帰るよ」
「ごめんなさい」
僕は、ゆかりの肩をポンと叩いて部屋を出た。

 新学期が始まったその日、今度は僕が勇気を出して告白することにした。昼休み、待ち伏せた廊下でサトミに声を掛けた。
「ちょっと聞いてもらいたい事あって」
それに対し、サトミは茶化(ちゃか)すかの様に笑って言った。
「ひょっとして、私のこと好きとか?」
「知ってたの?」
そのあとサトミは僕の耳元で言った。
「でも、ゆかり言ってたよ。この前三木くんとHしたって」
「えっ?してないって!」
「隠さなくても…。私、今付き合ってる人いるの」
「ショックだな。でも遠恋でしょ。デートくらいはいいじゃん。ダメ?」
「そこまで言うのならネ。彼、デートだけなら許すって言ってた(笑)」
「その彼、いい人なんだね」
「うん。でも一緒に帰るだけねっ」
「キツイなぁ~。わかったよ」
「ねぇ三木くん、話上手くなったね」

 僕は初めて好きな女(ひと)と一緒に歩いた。
「三木君?始めて遇(あ)ったの、覚えてる?」
「焼きそば、」
「違う!町行きの--」
「バスで君がヒンシュクかうような言葉言って僕と目があったがそれ以来無視し続けて..」
「ふふっ、おもしろい!」
「実は、南さんの言ったあの言葉に惹(ひ)かれたんだ」
「お上手ね」
「手つないでいい?ここまで来れば誰も見てないさ」
「いいけど…私のバス停までねっ」
サトミの言葉には、一度切りよと僕には聞こえた。それでも満足した。そして決めた事があった。川の流れを逆目に、僕たちは残暑が降り注ぐ道をひたすら歩いた。車少なくトンボが飛び交う田園である。
「バス停着いたね。君にもっと早く声掛けれたら良かったのに…」
「そうだよ!そしたら私、三木くんのカノジョかな!? 今度は上手くやってよネ」
「わかった。さよなら南さん」
「さよなら三木くん」
そして僕は南里美への気持ちを絶った。僕のこの恋は実らなかったが、代わりにゆかりの想いを受け入れた。この恋で得たもの、それは相手の思いを受け入れる優しさ。サトミがくれた僅かな時間で僕はそれに気付いたんだ。

 私はいま、このバス停で青い夏を感じている。蒼い追憶なんかじゃない。あの日の君が懐かしい。


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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 23:43 | トラックバック:0コメント:3
コメント
ブログ新設おめでとう!
またひとつ増えましたね!
こちらでは小説以外はやらないのですか?
FC2 バンザーイ???
2006.06.16 Fri 22:27 | URL | マオクロ
初コメどうもです。
えーと・・・やりません!シンプルにいきます。笑
ということでヨロシク☆
追伸)字が小さいの我慢してください。
2006.06.16 Fri 23:55 | URL | LOVEストーリー
えりかさんのブログからまわってきました。かる~いノリで読んでみたんですが、
めちゃくちゃおもしろいです。じぶんは、作詞とかするのの発展で小説書きたいなと
何度も思って軽く書いてみたりするのですが、ごちゃごちゃしちゃってだめだめです。 だからPOPSTARさんの小説よんでうらやましいアンド尊敬な心境です。ほんとおもしろいです。
続き楽しみにしてます

投稿 さく | 2006年4月20日 (木) 01:47

さくさんへ

ご訪問ありがとうございます^^/
僕が最近面白いと思ったのは、以前ここで紹介しましたYoshiの「恋バナ」です。短編で凡人の言葉!?で難しくなく、けど言いたいことが一つあるので結末が楽しみという感じです。
嬉しいなぁ~。さくさんに楽しんで貰えれるなら光栄です!!ご存知かと思いますが右サイドにある恋愛カテゴリーから前のも見れますよ。

投稿 POPSTAR | 2006年4月20日 (木) 20:03

最後まで一気に読みました。結末が私の予想と違っていたのでそれなりにかなりびっくりでした。この物語も大好きです!
POPSTARさんも好きと言っているYoshiさんのほん私も大好きです。遠まわしではなく直球な言葉や心理とかわかりやすいけど何か訴えてくる。そんなyoshiさんの作品好きですね。
それに実際のPOPSTARさんの経験とリンクしているところが尚すごいなと感じました。

投稿 エリカぽん | 2006年4月21日 (金) 21:04

yoshiさんって有名ですよね 赤と青両方買うのは、今、金銭てきにきついですが、そのうち読んでみます 
右のかてごりってとこ気づきませんでした
見てみます

投稿 さく | 2006年4月21日 (金) 21:09

後半部分がほんっと、待ち遠しかったです!もしかしてドラマとかと同じで一週間待たせる気か!?Σ(・ω・ノ)ノとか思いながら待ってました(笑)
兄さんのお話は心情や伝えたい本筋ばかりが強いわけでなく、情景まで大事にしてるのがとてもバランスよくて、きれいだし、なにやらプロっぽいの匂いがしますヽ(*´∀`*)ノ(笑)
これは学生の時に書かれたんですか?すごいなぁ〜(o´∀`o)

投稿 りこ | 2006年4月21日 (金) 21:29

エリカぽんへ

「好き」って言ってくれて嬉しいです☆
帰り道、サトミが三木に付き合ったという部分は、三木がゆかりの気持ちを受け入れる伏線になっているんですよ。
あっ、これすべてが自身ではないこと伝えときます(汗)...

投稿 POPSTAR | 2006年4月21日 (金) 22:32

さくさんへ

そうです。カテゴリーから見て頂けたらと思います!よろしくどうぞ。

僕の短編は書き下ろしのとこあるんで、もしさくさんの感覚で辻褄合わないとこあったら指摘してくださいね。

読んでくれてありがとうです!

投稿 POPSTAR | 2006年4月21日 (金) 22:47

りこchanへ

ここ最近ですよっ、こういうの書き始めたのは..。(苦笑)
以前りこchanのブログに書いたっけ!?
→文通してた[松山の高校生☆]に兄さんは書いてあげました。確かにキレイ過ぎやけど、せめて十代はこうであって欲しいという願望なんだよね!...他のもそうだったり。
そして前に話した大学生を描いた「春風の旋律」っての次にアップするから待っててくださいね!

投稿 POPSTAR | 2006年4月21日 (金) 22:48
2007.11.10 Sat 18:17 | URL | メインブログよりのコメント
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Author:POPSTAR
HN: POPSTAR
東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
『愛ラブYOU』では短編小説を中心にアップしてます。感想などお待ちしてます!!
下のリンク欄にあるプロフもどうぞ。

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