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永遠よりも長いKISS
永遠よりも長いキス(イラスト編)


   
 季節は十一月。海を望む地に建つマンションの一室から夜になってお洒落な男女が出てくる。
「君はここで待っていてくれないか?」
「わかった」
理沙子を地階である5階エントランスに残し、朝倉昭夫は車を出す為1階ガレージへと下りていった。
部屋を出る前、理沙子が言った。
「一人じゃもったいないね、この部屋」
「なら俺と一緒に暮らしてくれる?」
昭夫の冗談混じりの言葉に、理沙子は笑って答えた。
「考えときます」
昭夫はガレージで真っ赤なMR-Sのエンジンを掛けた。そして公道へと急坂を登っていった。エントランスより助手席に理沙子が乗り込んだ。
この日昭夫は理沙子のプロフィール写真を撮る為、(神奈川と静岡の県境に位置する)真鶴の自宅アトリエに彼女を呼んだ。大型2LDKの一室には何もない白壁の洋室がある。そこには二基の照明と白いチェアーが置いてあった。白尽くめで写真を知る者には露出が難しいと思われがちだが、アイリスは適度に絞られ、背景の海や空の青さが程よく出せる訳だ。自然光だけでも淡い空間が得られた。他にはカメラやレンズの入った防湿庫が扉の横にあり、その上には仕事に持ち出すノート型パソコンが置いてある。玄関にはジュラルミンとテンバのカメラバッグが一つずつあっていかにもカメラマンをしているという住まいだ。すべての部屋の窓からはストレートに海が望める。5階に位置しロケーションは最高だ。窓を開ければ潮風が流れてくる。防風林の緑と青い海が心地よい。そして海の青と空の青が溶け合う地平線の先はいったいどこへ続くのだろうか?撮影中、理沙子もそんな海を楽しんでいるのが分かる。その横顔は心なしか寂しげで、昭夫は夢中でファインダーを追い続けた。リビングから流れてくるオーディオシステムのBGと重なり、ピピッと電子音が鳴ってはシャッターが切れる特有のカメラ音もする。理沙子には恋人が居るという。自分とは仕事の手前あってこうして逢ってくれているのだろうか。昭夫は32歳。某メジャーバンドの専属カメラマンの傍ら、所属事務所を通しグラビア撮影の仕事を貰っていた。収入は支出を上回ることすらないが、贅沢な生活をしている方であろう。理沙子は昭夫が手掛けたファッション誌でモデルリストから自ら選んだ女性だった。
二人の乗った車は駅前の信号を左折しロータリーに止まった。木構えの小さな真鶴の駅はとても寂しげだ。
「今日は楽しかった。朝倉さんて都内まで通ってるんでしょ?」
「ほぼ毎日都内に居るよ」
「じゃあ、私がメールしたら逢ってくれます?」
「時間さえ合えば。それに、普段はここには戻ってないから」
「わかった!彼女のとこね?」
「いないって言ったはずだよ!?」
「ごめんなさい。実は私も彼とは上手くいってないから・・・じゃあ帰ります!」
「理沙ちゃん、よかったら今晩泊まっていってもいいよ」
「ありがとう。彼ときちんと清算しなきゃね」
そう言い残し理沙子は車を降りていく。昭夫も後を付いていった。
「ちょっと待ってくれ」
昭夫はそう言うと財布から千円札を二枚取り出し、一枚を理沙子に渡し、もう一枚を券売機に差し込んだ。
「今日の交通費」
「ありがとう」
理沙子はペコリと頭を下げた。改札で彼女を見送った昭夫は車に戻り、行きつけのスーパーで今晩飲む酒と摘みを調達した。その帰り道、理沙子の事を考えてみた。「彼とは上手くいってないか・・・」その言葉に隠された相手の心理、昭夫には十分伝わっていた。偽りのない笑顔に大人びた仕草、オシャレに服を着こなすセンス・・・昭夫は惹かれていった。上手くいっていなのなら一層のこと彼から奪ってしまいたい。それが本音だ。
部屋に戻る。またしばらくここへは戻れないであろう。昭夫は白い壁の部屋に入ると灯りを点けた。白いチェアーの下にイヤリングがひとつ落ちているのを見つけた。あれっ、彼女のかな!? 半年前ここに越して以来、このマンションには誰も招いていないから間違いはない。


 朝になり昭夫は晴れているのを確認すると、スウェット姿のまま岬の方へと走っていった。十一月も後半、寒さに身が引き締まる。杉林の中を暫く走ると三ッ石という場所に出る。ジョギングの後はその入り口に構える行きつけの喫茶店でモーニングを摂るのが習慣になっていた。主人が描く油絵が飾られたアトリエ的な店だ。すっかり歳を召した老夫婦が経営している。何度か通ううち顔馴染みとなった。
「主人が最近来ないから寂しいってさ」
奥さんがそう言うとその本人が顔を出し「いらっしゃい」と言った。
「今日からまた会社の方になるかなっ」
昭夫はそう言うと持っていた四つ切サイズの化粧箱から額縁を取り出し、旦那に渡した。
「良かったらここに飾ってください」
「お~そこから撮った朝焼けだね。いい腕してるもんだ!」
「一応プロですから」
そして海を見下ろせるカウンターに着く。マスタードが入りこんがりと焼けたハムトーストと、卵の入ったフレンチ風ミルクセーキは格別だ。
 
 昭夫は車で都内へと出発した。新道と呼ばれる真鶴道路を北上し早川のインターから西湘バイパスに入る。海の上を走るが直ぐに箱根・厚木方面に通ずる道を行く。山合いに入る。再度厚木方面を確認。朝とは言え既に渋滞の解けた時間で快適だ。厚木からは東名高速に入る。首都高、高樹町まで全て有料道路を走る。元麻布のオフィスに着くとPCの電源を入れ仕事の続きを始めた。パテで仕切られたスペースはちょっとした自分の空間だった。窓もなくついつい時間を忘れてしまう仕事場とも言えよう。夕方、セットしたアラームが鳴る。編集者との打ち合わせの時間だ。上着とスーツケースを手に取ると事務の加奈に一声掛けた。
「みんな出払ってる様だね。俺が出たら鍵掛けといた方がいいな」
「そうね。行ってらっしゃい!」
彼女に今週のスケジュールを渡すと外へと出た。連絡が命取りにもなる仕事とだけあって、ある意味加奈は、昭夫にとってのマネージャー的存在だった。敢えて仕事先には彼女を通すことが多かった。品よく丁寧な話し方が相手には受けがいいのだ。今度おごるから飲みに行こうという話になっていたが、理沙子と行動し始め昭夫自身ためらっていた。因みに加奈は昭夫と同じ歳で独身である。


 週末、理沙子からメールが入った。今晩逢えませんか?というメールだ。事務所にいた昭夫はメトロに乗って有楽町に出た。日比谷にある映画館で上映中の洋画のチケットがあるというので付き合うことにした。嬉しくも積極的な理沙子の罠に掛かっている。それに便乗し、昭夫は理沙子の手を取って歩いた。十二月も未だだというのに街は華やかなクリスマス・イルミネーションが放たれていた。
「俺なんか誘っちゃっていいの?」
「私、やっぱ年上の男性が好みみたい」
「・・そうか」
理沙子の雰囲気が普段と違うのは、下ろした前髪のせいであろう。
「ここだよ!」
理沙子が言った。久々のヒット作ともあってチケットを買い求める人達で列が出来ていた。それを横目に理沙子はチケットを二枚かざしながら老舗映画館へと入っていった。そこはいつか入ったことのあった映画館だった。そう思いながら昭夫も中へ入る。
「あったか~い。ねぇ、飲み物何がいい?今日はおごらせて貰います!」
理沙子は得意げに言った。
「じゃ、定番のコーラーで!」
昭夫がそう言うと理沙子は席を離れていった。昭夫は上演前の薄暗いシアターを見渡した。何故か懐かしい感じがする。それはあの日見た光景と同じだった。
コーラーを差し出され我に返る。その瞬間照明が消え、スクリーンに映像が映しだされた。
「今回のも凄い出来みたいね」
耳元で彼女が言った。
「今回の?」
思わず振り返る。そこにいるのは理沙子ではない。明らかに違う女性がいるのだ。
「お久しぶりね。私の名前覚えてますか?」
「えっと・・・」
「悲しいな」
「動転してるんだよ!・・・その声もしかして絢子(あやこ)?顔が別人の様だけど」
「思い出してくれてありがとう。きっと化粧してるからそう見えるのかもよ・・・もうすぐ本編が始まるわ。静かに観ましょっ」
昭夫は把握できない現状のなか理沙子を探しに行こうとしたが、絢子と名乗る女に凄い力で腕を引っ張られた。夢なのか?・・・しかしスクリーンに出てきた映像は、以前絢子と観た‘バック・オブ・ザ・フューチャーⅡ’ではないことは確かだ。

 当時昭夫は、東京の大学を出て地元、千葉県銚子市に戻り就職をした。就いたのは醤油工場での一般事務であった。その年事務で入社したのは昭夫と高卒の絢子の二人だけで、最初は絢子と一緒に帰ったりしていた。何気にモテた昭夫は、先輩いずみの告白を受け付き合いだした。憧れのスポーツカーに乗るいずみは色っぽいお姉さんタイプで、昭夫が入社して直ぐに意識した女性だった。いずみとの交際は社内の連中には内緒であった。十二月半ばにあった忘年会の帰り道、この二人の関係を知らない絢子は昭夫に告白をした。この時、未成年で酒が飲めない絢子はシラフであったが、昭夫はかなり酔っていた。うぶな絢子はぶっきら棒に言った。
「朝倉さんの事が好きかも。いやっ、スキです!私とお付き合いして下さい」
「そうなんだ!? でもな、俺にはいま大好きな彼女がいるんだ」
「えっ?・・・」
「今日は酔っ払っちゃったなぁ~」
絢子は泣き出し港の方へと走っていった。ほろ酔い気分の昭夫は絢子を追いかけていた。地面が揺ら揺らと傾いている。飲食店の並ぶ漁港まで来ると彼女が立ち止まっているのが見えた。冷たい夜風に触れたせいで酔いの醒めた昭夫は、絢子の後ろ姿をみて今度は同情してしまった。正直な気持ち、好感持てても彼女を恋愛の対象としては見れなかったのだ。
「ごめん、さっきは・・・」
「私の入る余地はないんでしょ?」
「ごめん!」
「私、ブザイクだしね」
「絢子、一度だけデートしようか?」
「一度だけ?デート?・・・」
「行きたいとこ連れて行ってあげるから。これは誰にも言うなよ!」
「一度きりの彼女?」
「イヤか?」
絢子は少し考えてから首を横に振った。
「東京の町歩きたいな」


 約二時間の映画は結末を迎えた。記憶が正しければあの一度きりのデートで、この映画館に入りこの席で絢子と映画を観た気がする。右手薬指にしているラメの指輪、確か東京駅からこの日比谷に向かう途中昭夫が買ってあげたものだ。やはり絢子なのだろう。彼女は早々と席を立つとシアターの外へと出て行った。
「絢子、知ってたら教えてくれ!理沙子って女性知らないか?」
「昭夫、やっぱ彼女の方が好みだった?」
「それは・・・」
「やっぱ綺麗な子がタイプみたいね。私もそんな風に愛されたかった」
「俺を混乱させる気か?」
「あなたの事、愛しているから困らせるつもりはないです」
昭夫はケータイを取り出した。そして理沙子の番号に掛けようとするのだが、何度もメモリーを探しても理沙子の名前は出てこなかった。焦っていると絢子が昭夫のケータイを覗き込んで言った。
「もしかしてこれ携帯電話?今は折りたためるんだね!」
「あぁ。って知らない訳ないだろ~!?」
「冗談、冗談!」
「しかし絢子大人になったなぁ」
「28になりました」
「そうか」
「これからどうします?」
絢子が尋ねた。
「食事でもして帰るとするか?」
「はい」

 翌朝、昭夫は酷い頭痛に襲われながらも事務所のソファーで目を覚ました。風邪だろうか?デスクの上にある眼鏡をかけてから時計を見てみるとまだ七時前であった。ブラインドからは冬の青白い光が差し込んでいた。普段コンタクトレンズをしている昭夫だが、起きたては眼鏡だ。マスコミ業界の朝は遅い。十時前になりやっと事務の加奈が出勤してきた。相対してロケの時には何時何処でも構わず始まるのだが・・・
 
 昼になり、昭夫は愛車に乗ると理沙子との仕事の為、白金まで出向いた。古川橋から目黒通りの方へと折れていく。ケータイを見ると見知らぬ番号から着信が入っていた。仕事先からだろうか?その番号にコールしてみると、相手は絢子の声でこう言うのだ。
「理沙子です。約束の場所にいます」
「おい、絢子じゃないのか?」
電話は切れてしまった。待ち合わせのオープンカフェに行けば真相が判るはずだ。スタジオの駐車場に車を入れてからカフェを訪れた。外にはいないようなので店内へと入る。奥のテーブルで待っていたのは紛れもなく理沙子であった。
「おはようございます」
声も理沙子の様だ。
「お、おはよう」
「朝倉さん、この前撮ったプロフィール写真出来ました?」
昭夫は持っていた書類ケースを開け写真を取り出した。
「朝倉さん、今日も綺麗に撮ってくださいね!」
「ところで理沙ちゃん、ケータイ番号変えてないよね?」
「分かり易い番号見つけたから変えちゃったぁ」
昭夫は履歴を見ながら言った。
「0X0-0461-1456」
「そう、白い石ころって覚えてね!」
「あ、あぁ・・・」
昭夫のコーヒーを飲む手が震えていた。理沙子はそれを嘲(あざ)笑うかの様に見ていた。

 昼一番でスタートした撮影は制作者のもと行われた。パラソルからストロボが発光する。
昭夫のNekonがシーンを切り取る。「アッツ!」思わず声を出した。ファインダーの中に見えるのは理沙子ではなく絢子の姿だった。その絢子の目は、まるで昭夫を挑発するかの様に潤んでいる。シャッターを切る指が止まった。
「朝倉さん、どうかされたんですか?」
撮影助手をしていた島村が言った。
「何でもない。次行こう!」
もう一度覗いてみる。ファインダーの中の女性は理沙子だった。昭夫は胸を撫で下ろした。


 約束の休日、昭夫は待ち合わせの銚子駅へと急いだ。十二月になり一層冷え込んだのだが、赤のトレンチコートを羽織り、目一杯のお洒落をした絢子を見て心が温まった。そして絢子を初めて可愛いと思った。特急「しおさい号」に乗りこんだ二人は仲良く駅弁を広げた。
「今日一日、私の我儘きいてくれる?」
「約束だもんな」
「昭夫って呼んでもいい?」
「ああ、いいよ」
電車は海沿いの景色から山を越え、やがて千葉の町をも過ぎて行った。東京駅地下ホームに着いた二人は長いエスカレーターに乗る。人の多い街に戸惑う絢子に、昭夫は手を差し出した。彼女の手はふっくらと温かかった。二人は有楽町の方へと歩いていった。そして映画館に入ることにした。映画を観たあと絢子は言った。
「昭夫?やっぱ呼び捨ては照れるね。・・・ありがと」
「次は何処行く?」
「東京タワー!」
「了解!じゃあ都バスに乗るぞ!」
「はい!」

 そして一日は暮れていった。帰りの電車では二人して寝ていた。銚子駅に戻ると昭夫は言った。
「家まで送るよ」
「優しいのね・・・」
昭夫は絢子の実家のある終点外川までの切符を買うと、絢子の手を握り電鉄に乗り換えた。
「彼女にバレたら困るでしょ?」
昭夫はそれでもしっかり絢子の手を握っていた。
「今日はお前が俺の彼女だよ」
彼女は唇を噛んで昭夫を見つめていた。走り出した一両編成の銚子電鉄は、コトコトと振動を増しながら加速していった。外川に着くまで無言になった二人は、最後の区間、貸し切りになった車内で見つめ合った。けどそれ以上はなく終着駅を降りていった。絢子の家の前まで来た時、彼女は笑顔を振りまいて言った。
「最後のお願いです!キスしよっ!?」
「えっ・・それは、それは無理だ」
「彼女大切だもんね。撤回します!」
「そうして欲しい」
絢子は大きく手を振って「今日の事は思い出にする」と言い残し、引き戸を開けると家に入っていった。昭夫も手を振った。昭夫は思った。一日絢子とデートして楽しかった。彼女のいい部分好きになれそうだし。でも、今は愛している恋人が居るんだ。そう思うと冷たくも絢子の事は忘れることにした。


 オフィスの専用駐車場はテナントビルの地下にある。コンクリート打ちっぱなしのエリアで、昭夫は声を張って言った。人の気配がしたからだ。
「絢子か?俺の傍に居るなら出てきてくれ!これからうちに帰るぞ!」
すると柱の影から赤いトレンチコートを着た絢子が出てきた。それはあの日のままの姿に等しい。まさに18、19の彼女だった。顔もメイクもあの日のうぶなまま・・・
昭夫の正面に立った絢子は、昭夫に言った。
「昭夫、カメラマンおめでとう。頑張ったんだね!」
「ありがとう」
「私を昭夫のおうちに連れて行ってくれるの?」
「ああ」
「綾子のこと好きになったとか・・・」
昭夫は言った。
「今度はお前を選ぶよ」
「同情?」
「いや、愛情だなっ」
絢子が昭夫に抱きついてきた。昭夫は両手で絢子を強く抱き締め言った。
「お前よく仕事でミスったよな?」
「それカバーしてくれたの昭夫だった」
「だってさ、帰れねえよ。不器用な女残してさっ」
そう言うと昭夫は絢子の頭を撫で、車へと乗せた。絢子が訊いた。
「朝まで一緒に居てくれる?」
昭夫は大きく肯づきながらエンジンを掛けた。
「嬉しい!」
「この車、絢の好きな赤だぞ!」
今度は絢子が大きく肯づく。車はビルの狭間を抜け首都高へと入る。夕刻五時前だというのに既に陽は落ちていた。
「絢に東京の夜景見せてあげるよ」
そう言うと昭夫は、首都高内回りをここぞとばかりアクセル全快で疾走させた。汐留のテレポート、アップダウンとカーブの続く銀座ルート、九段下からは皇居を囲むように走る。最後は赤坂に戻り246(号線)の上をゆくストレートだ。周りの車と共に、そのまま東名高速へとなだれ込む。車線は三車線へと拡がった。
「最高~っ!」
「うん、最高ね!」
海老名サービスエリアでレストランに入る。和食好きな絢子は迷わず和食セットを食べる。
昭夫も絢子に見習い、和風ハンバーグに。かなり違う気も・・・
小田原からはひたすら海沿いのカーブを幾つも越える。真鶴のマンションに着くまで眠る気配のない絢子に昭夫は言った。
「退屈しない?」
「見ておきたいの・・・あなたの運転」
「変なこと言うなぁ~。ま、いい。今度は優しい走りだ!」
そう言うと昭夫は、追い越し車線から走行車線へと渡り、なだらかにハンドルを切ってみせた。音楽もディスコからR&Bへと切り替えた。絢子が言った。
「眠くなりそう・・・」
昭夫は左手で絢子の手を握った。その温もりはあの日のままだった。

 マンションに着くとエントランス前に車を止めた。そして地階である5階を左手に歩き、突き当たりのドアにキーを差す。そこは角部屋でもあり昭夫自慢の城だった。何故か廊下の向こうにはX’masツリーの灯りが点滅している。リビングの間接灯を点け、暖房を入れる。そして絢子のコートをハンガーに吊るした。絢子は言った。
「ステキ~!昭夫がロマンティストだったなんて思わなかったな」
「照れちゃうなぁー。いけねっ!俺、車しまってくる!」
そう言うと昭夫は走って部屋を出て行った。
残された絢子は窓を開け、暗闇に広がる夜の海を眺めていた。

 二人はローポジションのソファーに寄り添っていた。
「理沙子とは恋人になれないって、車をしまうとき電話で伝えてきたよ」
「理沙子って人から告白でもされたのね?」
「絢子知っているはずだぞ!」
「私にも分からない記憶があって・・・名前だけは覚えてるんだけど」
「ん~、それに分からないなぁー。絢が目の前に現れるなんて」
「私にも分からないよ・・・あなたに逢いたいと思い続けてたんだ。逢って話して、それから・・」
「それから?」
「何でもない!あっ、そこにあるのケーキ?」
「あぁ。素早いだろ~。絢が一瞬車で眠っちゃったとき買いに出た」
「昭夫器用だもんねっ」
昭夫は立ち上がりテ―ブルに置いた白箱の蓋を取る。目の前には大きなイチゴの乗ったバースデーケーキが現れた。昭夫はワイングラスを二つ並べると、冷蔵庫から冷えたロゼを取り出しグラスに注いだ。
「俺、お前の誕生日覚えてるぞ」
ケーキを切りながら昭夫は言った。
「へ~、何時(いつ)か言ってみてよ!」
「12月23日。だからお祝いはいつもX’masと一緒なんだよね~、残念!!」
「それデートした日に話したんだっけ?」
「あの日は銀座のルノワールで簡単に祝ったよな。19歳になるねって。おっ、ケーキ食べるとすっか!」
「もうすぐ二十歳だよ」
「じゃ、まだ19のままって事か??」
「大人になったらしたいこと沢山あったけど・・・」
「駄目だよ、消極的なこと言ってたら」
「うん・・・。ケーキ、頂くね」

 絢子が浴室から髪をタオルで拭きながらリビングに戻って来る。そこに昭夫がいないのに気付きその先の扉を開く。そこは寝室で、昭夫はニュースを観ていた。
「ぶっそうだなぁー放火だなんて」
昭夫は独り言を言うと観ていたTVを消した。昭夫は後ろでじっと立っている絢子に気付き言った。
「おお、こっち来いよ!」
絢子は寝室に入ってきた。
「私、男の人の部屋に入るの初めてだし・・・」
ベッドを前に、絢子は躊躇(ためら)っている様子だ。そんなセリフ言われると昭夫も気まずくなってしまう。昭夫はそう思いながら、自慢のオーディオシステムの電源を入れにリビングまでいった。流れてくるピアノのメロディーはX’masソング‘きよしこの夜’であった。それは二人のいる寝室のスピーカーでも流れていた。昭夫は絢子に抱きつかれた。寝室の窓にもツリーのライトが乱反射している。彼女は昭夫の胸の中でこう言った。
「私を探したら駄目だからね。それだけは覚えといて下さい」
「急に何を言うんだ」
その返事はなく、絢子は恥ずかしそうにしてみせた。
「ねぇ?」
「何だよ!?」
「あの日出来なかったキスがしたい」
「キス?」
「KISS(キッス)・・・」
「しようか・・・」
昭夫は、目を閉じた絢子の唇に自分の唇を合わせてみた。そのKISSは甘く切なくそして絢子の想いまでも伝わってきた。ベッドへと倒れていく。それでもキスは続く。いつしか昭夫は眠りに就いていた。

 目を覚ますと朝が来ていた。隣にいたはずの絢子がいない。昭夫はテーブルの上に一枚の置手紙を見つけた。そこには二人の似顔絵が描かれ、その下にはこう書かれてあった。
<昭夫、本当に私のこと愛してくれてありがとう☆あなたに理沙子さん返してあげます。私はもうこの世に思い残すことはない様です。これで成仏できそう。・・・さようなら>
「絢子・・・。バカ、理沙とは別れて俺は絢を選んだんだよ!勝手に死ぬなっちゅーの!」
しかし何処へ行ったのだろう。勿論着てきたコートも消えている。仕事を休んで近所を探す事にした。そして部屋で待ってもみた。暗くなっても戻ってくる兆しはない。このままじゃ眠れないな、これから捜索願いを出しに行こう。そう決めた。ガレージに向かう途中、昨夜絢子の言ってた言葉をふと思い出すと全身から力が抜けてしまった。
- 私を探したら駄目だからね!それだけは覚えといて-
部屋に戻りベッドに横たわる。次第に強い睡魔に襲われていく。絢子が「うちへ来て!」という不思議な夢をみた。朝になり、昭夫は半信半疑で故郷・銚子を訪ねてみようと思った。


 真っ赤なMR-Sは海沿いの道を飛ばしてゆく。十時になってから昭夫はオフィスに連絡を入れた。電話口には事務の加奈が出た。
「Sプロダクションです」
「朝倉です。今日も急用が出来てしまって申し訳ない!さっき祐介に今日の代理を頼んだ。先方にはその旨伝えといて欲しいんだが」
「了解しました」
「それから・・・」
「それから?」
「おごる約束果たさなきゃな」
「はい。期待しないで待ってますよ!」
加奈は笑って答えていた。

 都内に入った昭夫は、首都高をそのまま湾岸線へと流れていった。銚子に着いたのは昼時だった。犬吠埼に近い外川(とがわ)にある青嶋家を訪ねてみる。見覚えのある細い道路に入ると車を止めた。しかしそこにあるはずの家屋は今はなく、小さな空き地になっていた。そのすぐ裏手を銚子電鉄のレトロ電車がコトコトと音をたてながら過ぎ去ってゆく。昭夫は空き地の隣の家を訪ねた。家から出てきたのは優しそうな老婆だった。
「はい何でしょう?」
「あの、青嶋さんは越されたのでしょうか?」
「青嶋さんね~。八年ほど前に放火に遭ってね、全員お亡くなりになられたんですよ」
「放火!? 亡くなった?」
「娘さんの絢子ちゃんが成人したばかりでね、可哀想にね~」
昭夫は唖然とすると同時に、その現実を受け入れなくてはならないと思った。八年前というと、昭夫はカメラマンを目指そうと、反対する両親を振り切り再度東京へと出てしまった時分である。地元の仲間、恋人までも捨てたあと、この町の一大事すら知る余地もなかったのだ。次第に熱い想いと哀しみが込み上げてきた。昭夫は小さな空き地の前に跪(ひざまず)き、静かに手を合わせた。目から溢れ出したのは大粒の涙だった。そして心の中で叫んだ。[ 絢、ごめんな。俺が傍に居てあげられたら安心して天国行けたはずなのにな。もしお前の気持ちが満たされたのなら安らかに眠って欲しい。昭夫は淋しいなんて言わねえから ]
再び踏み切りの警報が鳴りレトロ電車が通過していった。駅前の花屋まで行き仏花を手に取ると青嶋家跡にたむけた。横には彼女の好きな赤色の薔薇を添えた。
「俺のとこに来てくれてありがとう」
二度三度となく昭夫はそう呟いていた。そして海が好きな少年は、十年ぶりに両親の顔が見たくなり、小さな漁港の町をランニングで抜けていった。       -完-

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| 恋愛小説 | 03:20 | トラックバック:1コメント:20
新作 / 永遠よりも長いKISS (予告)
X'masまでまだまだ日にちありますが、X'masに相応しいお話を描きました。今年の集大成とも言えるかな!?ちょっと自信ありです☆

<捨てきれない愛を叶えたい○○の切ない気持ち>をテーマにしました。読んでみれば分かると思います。

これは、ぼくから皆さんへのクリスマスプレゼントです。
近日のアップに向け詰めていきますので、どうぞお楽しみに!!

     KISS

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| お知らせ | 17:57 | トラックバック:2コメント:0
-仮想と現実の狭間で-
*これを読まれる方へ^^/

 この物語はフィクションであり、わたくしPOPSTARの原作を脚本化したものであります。また、実際にいたペンフレンドをイメージし描き、その彼女にプレゼントしたものです。当時は携帯メールが出る前なので、ペンフレという友達を大切にしていました。自分の思うキャラクターや情景を頭にイメージしながら、是非演じてみてください。また、業界、編集用語等も折り混ぜてますんでご承知願います。
尚、挿絵は黒咲さまにリクエストしまして描いて頂きました。
素敵なイラスト、感謝してま~す!!



♯ 序 章 (初夏の設定)

オープニングタイトル T 仮想と現実の狭間で(F.I~F.O)
               原作 / Hiroaki. S (POPSTAR)

 S-1 ホテルの部屋 D (デイは次より表記なし)    
    ●冷め切った二人。ベッドで煙草を吸う男。ドライアーをかけて
    る綾香。
彼 氏「(さりげなく)俺たち、もう駄目だな」
綾 香「(あっさり)そうなの?! ...そうね」

 S-2 綾香の部屋
    ●手紙を書く手元、ペンを置き部屋を出て行く。
    置かれた封筒の宛名:東京都 狭山正幸サマと一緒に[放送
    作家 狭山正幸]の名刺。
    ●台所で麦茶をつぐ綾香。

 S-3 東京の雑踏
正 幸「(街の画にかぶさる) ありがとうございました」
    ●正幸:ファイル片手にビルから出てくる。せかせか歩いてい
    ると、旅行代理店のパンフが目に付き立ち止まる。
正 幸「北海道かぁ...あやかっちに逢ってみたいなぁ」
    ●カメラ、ゆっくりと青空に昇る。クラクションの音でカット変わ
    り。

 S-4 北海道の大地
    ●ロングの画からОL(オーバーラップ) して綾香が農場で作業
    (アルバイト)している。
綾 香『今日あたり正幸くんに手紙届いたかなぁ?』
    ペンフレの正幸に思いを寄せ、手を休ませる。
    そこへうるさい農婦がやってくる。
農 婦「あんた、まだ終わってないの!早くしてちょうだい」
綾 香「(仕方なく) はぁ~い」

 S-5 正幸のマンション
    ●エントランスにて正幸~ポストから一通の手紙を取り出す。
    封筒返し差出人を見てニコリとする。♪BGイン→
    時間経過(O.L)で風呂上り。ワインの手前、封にハサミを入れ
    る。
    (ジャンプカット) 携帯を掛ける。(説明カット) ディスプレイに
    ‘綾香’の表示。電源がはいっていないか電波の届かない...
    電話を切る正幸。

 S-6 通勤電車に乗り込む正幸
    ●正幸:仕事のバッグを持つ。
    ●電車がホームから消えていく。→♪BGアウト

♯ 仮想のデート  

 S-7 荒 野

rikuesuto1.jpg

    *正幸:仕事のバッグつながり
    ●薄手のカーディガンにキャミを着た女の子=綾香が笑って
    いる。
    正幸、不思議そうに女の子を伺う。(正幸肩ナメ綾香) 汽笛が
    聞こえ振り返る。
    停泊するフェリー。(苫小牧港)
    ♪爽やかな歌曲(インスト版)イン→
綾 香「(にこやかに) 正幸くんあの船で来たんだよ」
正 幸「えっ?君、ひょっとして梅田綾香!? ..けど俺、今朝仕事に向
    かったはずだけど。電車に座って寝てしまったけど。あれか
    ら起きたのかなぁ?」
綾 香「ごめんネ。綾香が呼んだの」
正 幸「呼んだ?って。あ、仕事行かねーと!」
綾 香「私と遊んでくれないの?時間なら止まってるから安心だよ
    っ」
正 幸「そんなバカな。でも、どうして-」
綾 香「仕事頑張ったご褒美なんだよ。ねぇ、車屋さん行こうよっ!」
   
 S-8 国道沿いのレンタカー店にて
正 幸「えーっ、マジで?」
綾 香「いいじゃないタダでいいって言ってるんだから」
店 員「いいんですよ。あ、お客さんあの車どうでしょう?(手で案内す
    る)」
正 幸「(店員に) いいんすか、フェラーリーですよ !?」

 S-9 フェラーリーで海沿いをドライブ    
    ●二人、車中にて。左ハンドル右手に海。
正 幸「(呟き気味に) やっぱおかしいよ。夢ん中か?」
綾 香「正幸くんてしらけること言うのね」
正 幸「いいよ、どう思われたって」
綾 香「拗ねるとこがカワイイよ」
正 幸「君にからかわれるほど頼りないとはネ。これからは呼び捨て
    だな」
綾 香「格好イイね正幸くんて」
正 幸「もう本気にしね~よだ」
綾 香「ふふふ。..綾香とても楽しいよっ」
    ●正幸、サングラス越し無邪気な綾香を見ている。→♪F.O(フ
    ェードアウト)

 S-10 とある漁港
    ●車ナメ、防波堤に二人並んで座っている。
正 幸「綾香とは初めて逢ったのに、恋人のようだな」
綾 香「恋人ねぇー」 
正 幸「そうだった。君には彼氏がいたんだよね」
綾 香「でも正幸くんといると、イイ感じになれるよ」
正 幸「この贅沢もの!」
綾 香「船がいっぱいダヨ」
正 幸「君って逸らすよね」
    ●海と二人の背中(L.S)=O.L=二人向かい合い食事をしてい
    る。

 S-11 シーフードレストランにて
    正幸:綾香の目をじっと見つめている(綾香肩ナメで)。    
    綾香:Hな口元。気付きがあって目線上げ。
        [効果音→]
        吸い込まれる様な瞳のインサート(特殊効果)。
    正幸:突然頭痛に襲われる。<黒のF.I>[→効果音]

 S-12 モーテルの一室・無音から潮騒の音がかぶる
    ●大きなベッドで寝付いている二人。綾香、正幸に抱きつい
    て眠っている。
     (カメラ頭から振る) 目を覚ましている正幸、思わず綾香の
    頭を撫でながら、
正 幸『あれからどうなったのだろう?』 と考えている。
    『ひょっとしてこの子は魔法でも使えるのか?』
    ●綾香そっと目を開ける。
綾 香「そうなんだよっ」
正 幸「どうして?...君には俺の思っていること解かる訳?」
綾 香「綾香、正幸くんの思ってる通りを叶えてるとこなの」
正 幸「凄いなぁ。じゃあ、ここにこうしているのも?」
綾 香「あなたが私としたいと思ったからでしょ?」
正 幸「やだなぁ。...そう言えば、食事の途中確かにそう思ったけ
    ど...」
綾 香「Hだよね。でも、綾香もそう思ったからこうしているんだけ
    どね」
正 幸「何だか訳わかんないけど面白いね。そんなら、二人で食
    事の続きをしたいと思ったら戻れるのかい?」
綾 香「でも思った瞬間戻れなかったでしょ? それは本気で思っ
    てないからだよ。それに、思った事を叶えないと私たちまた
    離れ離れになっちゃうの。だから早くしないと...
    (目を閉じる綾香)」
    ●正幸、綾香の上に乗りキスをする。そして服の上から胸
    に触れる。
    ●綾香の目から涙がこぼれる。
正 幸「何で泣くの?...イヤならやめるよ」
綾 香「んーん。嬉しいから。だって綾香の事、本気で思ってくれて
    たでしょ」
正 幸「思ってるさ」
綾 香「気持ちだけで感じちゃうよ」
    ●再びキスをする(ロングめのフォーカスアウト、F.Oする)。
    ・夜が明けている
    ●(カット開けで) 窓の木漏れ日(次へO.L)。
     ベッドの上、目覚めている二人。
正 幸「もう朝だね」
綾 香「日本の東だから夜明けが早いでしょ!?」
    ●正幸、起き上がってワインを飲み干す。
正 幸「俺さぁ、最近君の手紙や電話で癒されてたんだよ。まだ十代
    の君にね」
綾 香「・・・(.ベッドに座り聞き入っている)」 
正 幸「そんな君とも逢えたし、これで東京戻れるよ」
綾 香「そう。-でも、まだ私の前から消えないでね」
正 幸「(綾香の横に戻りながら) ハハハ。消えるだなんて笑わせん
    なよ」
綾 香「今は綾香の方が正幸くんの事が好きだから、私の魔法は劣
    性なの」
正 幸「じゃあ、どうすればいいんだ?」
綾 香「あなたの愛が私より勝ればいいんだけど...」
正 幸「同じにはならないのかなぁ?」
綾 香「難しいかも。それに、愛っていつもすれ違いを秘めてるから」
正 幸「詳しいなぁ!君の仕事って‘愛の研究所’とか?(笑)」
綾 香「(あきれた風に)それってあなたが手紙に書いたセリフです!」
正 幸「そうだったかな(苦笑)。それよりこれからどうする?」
綾 香「魔法がとけるまであと5時間あるよ。任せるわ」
正 幸「(少し考えてから) ここを出よう!」 

 S-13 ハイウェイを行く車の中
綾 香「ねぇ、何処行くの?」
正 幸「たぶん君が思ってもいない所。君が思っていたら魔法で行け
    たかも知れないけど・・」
綾 香「私が行きたいと思ったとこ、横浜だよ?」
正 幸「俺もそう。でも何故行けなかったんかい?」
綾 香「ごめんなさい。綾香お腹空いてたから中華街って思ったの。
    横浜の正幸くんちって思い直したんだけど・・」
正 幸「そうだ!も一度質問してみようか?」
綾 香「みえみえの質問は無効なのよね」
正 幸「まっいいさ。飛行機で綾香を連れて行くよ」

 S-14 早朝の新千歳空港にて
    ●「東京行きはお急ぎ下さい」とのアナウンス。バストショット
    の切り返し(カメラが相方で目線)
正 幸「ごめん。お金足りないかも」
綾 香「魔法が効いてる間はタダなんだよ」
正 幸「そうだった」
綾 香「ねぇ正幸くん、早く乗ろっ!」
    ●飛び立つボーイング747。

 S-15 賑わう羽田に降り立つ       
    ●外観ショット~到着ロビーの二人。
     正幸: 仕事のバッグを下げている。
綾 香「(一貫して手ぶらで) 東京って暑いよ~。私には辛いかも~」
正 幸「今日は特に暑いな。お茶してく?」
綾 香「時間もったいないよ。正幸くんち行こうよ」
正 幸「ああ。・・魔法がとけたらどうなるの?」
綾 香「淋しいこと言わないで」
正 幸「あっ、そっちじゃないよ。(綾香の腕を引きながら) 地下から電
    車に乗るんだ」

 S-16 正幸の部屋
    ●綾香、買ってきた惣菜を盛り付け終わり正幸に出す。そして
    椅子につく。
正 幸「いただきます」
綾 香「(辺りを見回しながら) 正幸くんの部屋、何かホッとできるね」
    ●時間経過(カメラ窓から食卓へパンする)
     食べ終わってアイスティーを飲む。
正 幸「(さりげなく) 君と暮らしたいな」
綾 香「(笑ってから間を開け) 綾香いいけど」
正 幸「(微笑みギターを取って) 君に歌をプレゼントするよ」
    ♪正幸の歌イン→
綾 香「(呟くように) ありがとう・・・」    
    音楽かぶって♪classicとクロスフェード
正幸の部屋にて

    ●綾香: 次第にハーフになって消えていく。
    ●正幸: (構わず) 歌い続けている。 →♪アウト/黒フェード

♯ 現 実   (カットイン!)

 S-17 渋谷のホームにて
    ●到着の急行電車から一斉に人が降りてくる。
    (詰めた画) 人波の中、カバンを提げた正幸が歩いてくる。
    ぼんやりと仮想の余韻を残して   
    <白とばし>

 S-18 正幸の部屋 N(ナイト)
    ●机に向かう正幸。

ナレーション(正幸)
夜、綾香から電話を受けた。彼氏と別れたと言う。心なしか、電話の声は淋しそうだった。そんな彼女に自分の本当の気持ちを伝えられず...。
ペンを執り、電車で思いついた仮想を、今度のTV企画で出してみようと書いていった。主役は俺たちだ。そして最後に、『綾香に逢いたい・・・』 と綴った。  

 S-19 綾香パパ登場 N
    ●一台のトラックがライトを照らし、国道から寂しげな農道へと
    入る。一軒の家の前で止まる。
パ パ「(降りたあと) あっ、いけねぇ綾香に手紙あったべ(ドアを開け
    探す)」
綾 香「パパ?  やっぱパパだったよ」
パ パ「あや、遊びに出よーとしたろ?」 
綾 香「ちがっ、もぉー。こんな夜に出えへん」
パ パ「これさ、横浜の友達からだ。(手紙を渡す) またテープ入って
    る感じだべさ」
綾 香「サザンって言ってたやつかなぁ?あとでパパにも聴かせる
    ね。でも仕事行かないで聴いてちゃダメだよ」
パ パ「あやはひと言多いとちゃうか」
    ●綾香ニコリと笑って、駆け足で玄関へ戻って行く。パパも玄
    関へ後ろ姿。(ワンカットフィックスで)
    [カメラ、詰めたハイアン]

 S-20 綾香の部屋 N
    ●開いた手紙。手紙のほかに厚い台本が。
綾 香「(独り言) あれっ、なんだぁ?[大好きな綾香へ] なんてイヤら
    しいよねぇ~。小説かなぁ。いいや、あとで読も~っと」
    ●そして綾香、ハムスターと遊ぶ。
               O.L                                                 
♯ 終 章

    ・続、綾香の部屋
    ●綾香、パジャマで布団の上。正幸からの手紙を読んでいる。
    部屋暗めに。
    ♪明日の風「山崎まさよし」 ・ノイズ音生かし
    *読みながら笑っていく綾香。ページを捲る。
    *台本の自分を演じている。
    ●音楽+映像は以下に切り替え(収録音もMIX)→
 -仮想部分(台本)のフラッシュバックが順に曲に乗る。
                           
♯ エンディング E(イブニング) →♪→(現場音オフったまま)
         T  '00.10.9(日) TOKYO 

 S-21 渋谷近辺  (二人の切り替えしで) 
電車の中:大き目バッグの綾香、正幸との待ち合わせの場所に向かっている。
編集スタジオ:仕事が終わらず時間に焦る正幸。時計を見る。
渋谷パルコ附近:綾香、道に迷う様子。
正幸、ファイル片手にスタジオを出る。
混み合う路上、綾香歩いてくる。そこへ正幸、脇道からフレームイン。
よそ見して右へ曲がる。その時、綾香とぶつかるが互いに気付かない。
    ・音声オン 
綾 香「キャッ!」
正 幸「すいません!」
綾 香「(呑気に) はーい。おじさん109(マルキュウ)って何処?」
正 幸「おじさん?! まっいいよ、俺も行くとこだったから。けど、チョイと
    急ぐよ!」
    ●綾香、ニコリとして正幸の腕を取る。正幸、時計を見て足早
    になる。綾香は小走りになる。
<画: 白フェード>♪もF.O
    ●互いに名前を呼び合う「え、:::」   fin.

| 恋愛小説 | 00:50 | トラックバック:1コメント:8
予告☆
-仮想と現実の狭間で-

携帯メールがようやく出た当時、私が文通していた子に書いたストーリーです。アバンギャルドか乙女チックかは読んでみてのお楽しみということで・・・えっ?ファンタジックぽいって?まあまあ。。

今回は原作ではなくオリジナル脚本でアップしたいと思います。

   
 POPSTARの脚本初公開~っ!←前のブログでも載せた作品です。

-仮想と現実の狭間で-


しばらく先になるかも知れませんがヨロシクっ!!
| お知らせ | 22:26 | トラックバック:0コメント:2
Your Mind
『見えるものが決して正直だとは思わない。
 見えないものがきっと、人のなんだと思う。。』



 チョコレートを食べていたらラーメンが食いたくなった。自慢じゃないけど広木はラーメン街道と呼ばれる横浜環状2号線の近所に住んでいる。こってり油が多くてそれでいて味が濃い。身体にいい訳がない。たかがラーメン。毎日同じものを作ってりゃ職人なんかじゃねぇ。有名店では偉そうに頭が部下をバカ扱いする様に叱る。なんか嫌な世界だ。これが広木の思うことだった。けどラーメンが好きなんだと思う。身長171cm。最近体重が70kgを超えた。体脂肪率12、3%なんだから平気だろうと油断もしている。先日初めて入ったラーメン屋『壱の屋』は木造りの建屋で、逆に言えば今っぽい雰囲気の店であった。ここを制覇しようと思った。広木の言う制覇とは何度も通って全メニューを食べ尽くすことだった。ほかに趣味と言えばカーキチそんなとこだ。新たな中古に買い換えてから助手席には女の子を乗せていない。最近は趣味が変わり、ギャルから大人の女性が好きになった。そしてスポーティ車からセダンに変えた。既におっさんの年齢なのだ。
そんな今日、たまたま遊びに来た同僚である先輩と『壱の屋』へ出向くことにした。
「広木、実は俺もラーメン好きなんだよ」
「そうでしたか」
静かな店内、途切れ途切れのまったりとした会話が続く。殿の様な制服を着た店員により、麺がお湯切りされタレを敷いた大きな器に盛られていく。そして手早にダシが注がれ海苔と焼豚といった具材が乗せられる。カウンター席からはよく見える。同時にそれが出されると、先輩は「旨そうだな」と言い箸を付けた。広木も少しのニンニクと豆板醤を足し、レンゲでスープを一口飲んでみた。旨かった。食べ終わった後、先輩はひとこと言った。
「このラーメン、俺の妹に食べさせてあげたいなぁ」
「今度は妹さんと来たらいいですよ」
広木はニコリとして言った。そんなに旨かったとは誘ってよかったと思う。しかし先輩が言う。
「うちの妹、広木と同じ歳になるかな!?」
「そうなんですか?」
「目が見えなくて・・・俺は車ないし気軽には連れて来れないなぁ」
「はぁ・・・」
「広木にお願いがあるんだ・・・」
「俺に迎えに来いと?いやっ、構わないですよ」

 そして広木は次の日曜日、先輩の家を訪れることになった。先輩の妹という佐知子さんは礼儀正しい人で、とても綺麗な女性だった。自分は相手を見れたとしても自分のことは見えないのだろう。もし彼女が目の見える人だったら?たぶんこんなヤボ男には目もくれないのだろう・・・広木は思った。
「じゃあお願いしますよ!」
先輩は玄関の内側から、丁寧な口調でそう広木に言うとドアを閉めてしまった。困ったなぁ・・・広木は戸惑う彼女に言った。
「お兄さん居なくていいの?」
「いいの」
「そう。じゃぁさ、行こうか?」
「はい」
と言ったとこでどうにもならなかった。広木は黙って彼女の手を握ると車まで一緒に歩き出した。20キロばかり距離があるからちょっとしたドライブになった。
「佐知子さんでしたっけ?お腹空きました?」
「はい。ラーメン食べたいです」
何て冷静で礼儀正しいのだろう。見た目は好きにせよ広木にはちょっと話にくいタイプだ。そんな空気を読んだのか、彼女は広木の方を見ていた。少しでも見えているのだろうか?前の信号が赤に変わると広木はブレーキを優しく踏んだ。
「広木さんて優しそう・・・」
「えっ?」
広木は自分が優しいだなんて思ってもいなかった。彼女は言う。
「だって車の運転が優しいんだもん」
「あっやっぱさ、佐知子さん乗せてるからだよ」
広木は照れていた。前を向いてる彼女は笑っていた。ラーメン屋に着いた。広木はゆっくりと彼女の手を引き、席に座らせた。
「醤油と味噌、どっちにする?」
「オススメの方で・・」
「じゃあここは醤油で!」
しかし食べ始めると、彼女はあまりいい顔していなかった。本当はラーメンなんか好きじゃなかったんだ。
「あっ、ゆっくり食べていいから。あとさ、量あるから残してもいいよ」
「ううん、食べれるから平気!」
「そうか」
なんだか二人ずっと付き合っている様な感じが広木にはした。彼女を車に乗せ、その足で目先のコンビニへと走った。
「佐知子さん、これ食べて!」
広木はモナカアイスを半分に折ると、片方を彼女に差し出した。
「美味しい!」
「よかった」
広木は楽しくなってきた。
「これから何て呼ぼうかなぁ?」
「呼びやすければ何でも!」
「ねぇ、さっちゃん?」
「何?」
「これから海へ連れてってあげるよ」
「海?」
「イヤ?」
「海かぁ~10年くらい行ってないからしら」
「じゃあ決まりだな!」

 広木は近くを通る通称‘横横’を南へと下った。終点の佐原インターチェンジで降りると三崎方面へ向かった。車を走らせて1時間。潮の香りのする海岸線に出た。橋を渡り、城ヶ島の海岸へと降りていった。すっかり仲良くなった二人はまるで人の様だった。広木は佐知子の後ろから両手を取るとその手を横に伸ばしてみた。
「夢みたい」
彼女は言う。広木は、たぶん佐知子が知らないであろう「これタイタニックだ」とも言えず含み笑いをしてしまった。
「何が可笑しいの?」
「楽しいからさ」
「私も楽しい!」
「元気出たみたいだね!」
すると彼女はしゃがみこんで、指で砂浜をなぞった。まるで大人から童に帰った様だ。
“愛ラブYOU”
「いろんな字知ってんだね!?」
「中学まで目が見えたから・・・」
「そうなんだ。じゃぁ、自分が美人だって知ってるんだね?」
「今の私は知らないの。そうなんだぁ?よかった」
も姿もね!目が不自由になったのに元気なんだね・・・」
「ねぇ?広木さんてどんな感じなんだろうね!」
「俺は・・俺は自信ないよ」
「声が優しいもん!私、広木さんのすべてを好きになりたいな。こんな私じゃ駄目?」
「駄目だなんて・・・俺もさっちゃんのこと気に入ってるし」
「あっ、兄貴の言う通りの人だった!信頼していい?」
「もちろん!」

 しかし現実とは信じられないこともある。それは交際半年後、広木は佐知子を両親に紹介した。帰り際、車に彼女を乗せたあと親父にこう言われた。
「付き合うのはともかく、結婚は反対だからな」
「どうしてだ?」
「お前には面倒なんか見れる訳ない。母さんも身体が弱いことだし、わかったか!」
その親父の一言は広木のに深く突き刺さった。それでも広木は佐知子を愛し続けた。
ある日彼女が言った。
「結婚てどういうものだろうね?」
「さぁ・・・」
思わず広木は言葉を濁らせた。
「私には無理な話だもんね!」
「佐知子、そろそろ送っていくよ」
「広木くん、やっぱ私じゃダメなのね・・・わかった。別れよう!私は全然平気だから」
「短気なこと言うなよ」
「だって・・・」
彼女の目から大粒の涙が溢れ出した。
「ごめんね、短気になってしまって。わかるわ、結婚反対されてるの」
広木にも涙が流れていた。それを察した佐知子は広木の顔に両手を充て自分の唇を近付けていた。
「俺たちもう大人なんだ。俺はもうおまえしか見えないから・・・」
「ありがと。ありがとう広木くん・・・あなたの言葉信じたい」

 次のデートをドタキャンされた広木は、ポストに一通の手紙を発見した。佐知子からだった。特殊なワープロで打たれた文字はたった一言だけだった。その一事で広木は闇の中に突き落とされた。
[以前お話した盲学校の先生と付き合うことになりました。今までありがとうございました]
その先生は拒んでいたらしいが、彼女が再度告白したのだろうか?女性ってそういうものなのか?に穴が開いた広木は、終いにはバカらしくなり想いを捨てた。
気付けば広木は、優しいだけの男になってしまった。見えないから何でもしてあげ許してもあげた。そんな広木が彼女の理想ではなかったのかも知れない。思えば食えないラーメンを食べていた様な必死な彼女をそれ以来見ただろうか?彼女はきっとそんな自分で居たかったのかも知れない。それとも俺の為に・・・?数日経って先輩から頭を下げられた。新しい人の事情は訊かなかった。それ以来、広木の追及も消えていく。

Your Mind

素敵なイメージカット描いてくれた黒咲さんに感謝します!最初の二行に意味を持たせるためラストに持ってきました。サンキュ~でした

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

| 恋愛小説 | 09:38 | トラックバック:0コメント:8
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プロフィール

POPSTAR

Author:POPSTAR
HN: POPSTAR
東京都出身、横浜市在住
趣味:写真撮影、音楽制作、作家活動、野球、ドライブ、飲み会(笑)ほか多数・・・
『愛ラブYOU』では短編小説を中心にアップしてます。感想などお待ちしてます!!
下のリンク欄にあるプロフもどうぞ。

*また、当ブログ及びリンクされてるサイトの文章・画像の無断転載・使用は厳禁とします。



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