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秋のS.L.S.④ 満月の夜に
 満月の夜、生物は気持ちが高揚するという説がある。海ガメを例にしても、満月の夜に卵を産み付ける。そして、犯罪件数も満月の夜に多いという統計がある。中国地方のとある村で生まれ育った京子は、夏祭りの帰り道、ボーイフレンドの桜井和彦と歩いていた。この日は満月だった。桜井といえばミスチルだが、その彼によく似た男だった。奥手の京子は、そんな和彦に想いを寄せていた。当初この祭りの施行はないと見ていた。それは数ヶ月前、二人のクラスメイトである史子(ふみこ)が山の入り口にある廃材置き場で変死しているのが見つかったからだ。警察により殺人と断定され、ひと月して犯人が挙がり逮捕に至った。村は犯人がよそ者であった事、史子の四十九日を無事終えたことを見届け、祭りの中止も取り消された。なにしろ狭い地区な故、このような事件は村中に重いダメージを与えた。
「夜にこんな道出歩くなんてないよな!」突然、和彦が言った。そのセリフに京子はドキッとした。昨夜見た夢の中で誰かが言った言葉だったからだ。その夢で私は「幽霊が出そう」という返事をした。そのあと脳天を叩かれるような錯覚がして目を覚ました。金縛りとは少し違ったが頭が重かった。15畳ほどある居間で寝てしまったことに気付いた京子は、慌てて自分の部屋のベッドに駆け込んでいった。母屋の居間には先祖の写真が飾られ、冗談でも心地よい空間とは言えなかったからだ。我にかえり、
「桜井くんと一緒だから怖くないよ!」そう慌てて言ったあと、京子は一息ついた。
「幽霊が出そう」京子から血の気が引いた。その言葉を発したのは男の声だったが、すれ違ったカップルだった。京子は思わず和彦の肩にしがみ付いた。その夜その男性は、車を運転中電柱にぶつかり頭を強く打って亡くなったそうだ。幸いにも彼女の方は助かっている。彼らは隣村から来ていたカップルだった。
 翌朝、京子は子煩悩な父と母に「高校を卒業したら都会へ出たい」と伝えた。それを聞いた父は、「一人娘を出す訳にはいかん」と反対した。

 山間の田舎では、夜の寂しさをTVが癒してくれた。ボーイフレンドから恋人になった和彦は、京子の家から自転車で5~6分のとこに住んでいた。今日も深夜自宅を抜け出し、京子の家の傍まで来るとメールを入れた。OKのサインを返すと窓から部屋の中に通した。ドアの中から部屋を掛けているため家族の誰かが入ってくることもない。もしバレたら酷く怒られることも承知だ。そんなスリルな事をするようになったのにも訳があった。男の事故死があってからというもの、怖くて眠れなくなった京子が和彦にメールをした。そして優しい和彦は深夜に来てくれた。彼に問い詰められた末、肝心なセリフが言えなくてメモ用紙に「幽霊が出そう」と書いたのだった。和彦はそれを声に出してしまったが、朝になっても何も起こらなかった。
 翌放課後、二人は図書室にあるパソコンであることを調べていた。史子の命日の‘月の暦’である。その夜が十五夜だと知ると鳥肌が立った。そして満月の夜、あの道であの言葉を言うと死に至ると結論付けた。それも「夜にこんな道出歩くなんてないよな」という言葉も絡んでのことだ。しかし京子はいいように考えた。きっとあの夜ご先祖様が教えてくれたのかも知れないと。

 ある休日、デートで待ち合わせたこの村の無人駅に、和彦はあるものを持ってきた。それは史子からという一通のラブレターだった。
「これから彼女の供養をしに社まで行くぞ」そう言う和彦に京子も付き添い、やって来た気動車に乗った。単線のレールの先に見えたのはあの廃材置き場であった。何事もなく、やがて見えて来るトンネルの中へと列車はエンジンを唸(うな)らせながら入って行った。その瞬間の事だった。風が舞い、和彦が持っていた史子の手紙が開いていた窓の外へと飛んでいったのだ。風は強かったとは言え、それは不自然な飛び方をしていった。
「どうしよう・・・」京子は怖がった。
「降りてトンネルを探す訳にはいかないだろう」和彦は冷静にそう言った。
「でも、もし誰かに読まれたら史子ちゃんが報われないよ!」京子は声を大にして言った。和彦はトンネルを抜けるまで何も言わなかった。長いトンネルを抜け、築堤を緩やかにカーブしていくと田園の開けた隣村に出た。列車を降りベンチに腰掛けた和彦は、少し動揺して言った。
「俺、見たんだ。史子が来て俺の手から取っていったのを」
「史子ちゃんが?」京子も隣に座った。
「実は俺、史子と昨年交際してたんだ」
その事実の方に京子は更なる驚きを見せた。
「そうだったの・・・でもまったく分からなかったよ!?」
「史子って小説が好きでね、俺によく貸してくれた。俺は読まないからって断ってたんだけどさ。でも、あいつが読んでいたのは恋愛小説で、読んでみると楽しかったな。それから教えてくれたんだ」
「教えてくれた?」京子は目を丸くして訊いた。
「そう、京子が俺のこと想ってるってことをさ。史子は恋愛小説に恋してるから暫く彼氏いらないの。って勝手に別れたりして」
「ありがと、史ちゃん」京子は呟いた。そして言った。
「実は彼女、私のこと嫌ってたと思ってたの。けど、小学校の時は良き友達だったなぁ」
「それは史子も言ってた。俺が悪いんだ。二人を好きにさせてしまって・・・」
「ねぇ、神社に行ったら別れよう?」京子が笑顔で言った。
「なぜ?」
「史ちゃんも私も半分ずつ桜井くんと付き合えたんだもん!だからいいの」
「な、そんなこと言って別れたらまずいんじゃないかっ」
「あ、私が死んじゃうってこと?」
「なんてこと言えないけど・・・」
「でも私は恋愛小説に恋しないから平気だよ!」
雲の切れ間から煌々とした光が二人を差し、振り向くと恋愛小説を抱えた史子が微笑んでいた。

  -完-

***************************
ということで、①から④まで速攻で書いてみましたがどうでしたでしょう!?そしてこの中で好きな話ありましたでしょうか?
都会的センスのストーリーから段々とメルヘンチックに、最後はホラー調になりましたが(苦笑)ほぼ一日でこんだけ出来ちゃうんだなぁと書きながら楽しくなっちゃいました。最後の話読んで寝付けなかったらぼくにメールください。自転車で駆けつけますから(笑)
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| 恋愛小説 | 05:53 | トラックバック:0コメント:2
秋のS.L.S.③ シルビアの恋
♪音楽の演出としまして、右バー下より「幻想即興曲」を選択願います。
  

 九月の空に低気圧が迫る。車好きな彼女は、平成元年シルビアに乗ってぼくを迎えに来た。
「ごめんなさい。遅れちゃった」
「いいって!」と言いつつ、時計を見るのがぼくの悪い癖。几帳面な男とずぼらな女。クールなぼくにはその大胆な部分が良かったりもする。夏の終わりに知り合ってまだ二週間というのに、こんなに馴れ馴れしいのは彼女の持ち味なのだろう。
「運転して!」そういうシルビアの目的はまったりしたいからだろう。シルビアとは、ぼくが名付けた彼女のニックネームだった。予想通りシルビアは、ぼくの左腕に絡んできた。それに、組んだ素足が眩しい。
 もうすぐシルビアは函館に戻るという。愛車のシルビアと一緒にだ。そう、彼女は学院生で夏休みの間だけ横浜の親戚の家からバイトに通っていたのだった。そしてバイト先の社員をしているぼくと出会った。同じ歳ではあるが、相手の方が度胸のいい24歳だった。それと見掛けによらず勤勉で頭が切れる。前に付き合った天然も好きだったが・・・
「夏の思い出を作りたい!」そう言うシルビアのリクエストで、ぼくは湘南の海へ車を走らせた。まだケータイの普及していない時代だから不便だったはずだが、付き合いだして二週間、いつも彼女が横に居た記憶があるのはその積極的さからだったのかも知れない。
「函館ナンバー運転してるなんて不思議な気分だなー」ぼくは言った。
「私も不思議な気分だったな」

大磯の海岸に降り立つぼくらは潮風に誘われ海辺へ出た。大胆なシルビアは、人影まばらな海岸でぼくに唇を近付けた。長めの髪に触れながら、ぼくはシルビアにキスをした。

「限られた時間で何ができるの?」
それは昨夜(ゆうべ)シルビアが言った言葉だった。
「思い出を沢山作ろうよ」とぼくは言う。するとシルビアは、
「辛くなるだけじゃん」と言った。
「始まったばかりじゃないか。それに、月に一度函館まで会いに行くよ」
「そんなの無理じゃないの?それに私、卒業したらフランスで生活するの」
「いつから?」
「来年にはいけそう」
その時、ぼくの口からは何も言えなかった。付き合ってまだ二週間なのに息が詰まった。それだけ愛してしまったのだろう。

「走るぞ~」ぼくは思いきり俊足を見せた。
「待ってー!」シルビアも足が速かった。浜辺にはカモメが鳴きながら飛び交っていた。ぼくとシルビアとの間には、もうひとつの夏があった。

ぼくはこの時、「限られた時間で仕上げて欲しい」という話をクライアントから聞いていた。そして帰り道、忘れかけていたシルビアとの会話が蘇った。あれから時が経ち、彼女はどうしているのだろうか?こんな風に昔の彼を思い出したりしているのだろうか?離れてしまえば愛は儚いものだと思う。

「愛しあったまま別れましょ!?」
最後のドライブで聞いたその台詞は意味深だった。シルビアには本命がいたのか?未だに聞き出せないまま、ただ時だけが過ぎてゆく。

  -完-

●人生って儚いものです。あの時、ああすれば、引き止めれば・・とか。恋愛にも岐路があって、時と共にそれは整理されていくこともあります。自分が良くても、相手の心を留めることが出来ない辛さが恋愛には共存します。

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| 恋愛小説 | 01:48 | トラックバック:1コメント:0
秋のS.L.S.② 紙ひこうき
♪音楽の演出としまして、右バー下より「きらきら星変奏曲」を選択願います。
  
「ほら~早くしないと始まっちゃうぜ!こっちこっち」
映画館に着いたもの広い場内、十番の扉まで辿り着くのも容易ではない。上映時間を五分ばかり過ぎ、予告も終わるかの瀬戸際だった。女子大生の志麻(しま)は、こんな篤志(あつし)に付いていくのがきつかった。先日の旅行では、一日に7箇所も名所巡り。彼が貧乏性なのか意欲的なのか付き合って3ヶ月経つが判らない。志麻にとって生まれて十九年目にしての恋人。こんな事なら、心から欲していた彼氏が出来たのも善し悪しだと思うこともある。それに淋しがりやの上、ほっとかれると無性にも辛くなる。映画が終わり外へ出ると、辺りはすっかり暗闇に覆われていた。
「こんなんじゃ~少し運動しないといけないなぁ」と、篤志が言った。
「どうせ太ってるもん」志麻はいじけて言った。
「そうじゃなくて、前向きにさぁ」篤志はため息をつき、志麻の手を握ると黙って歩き出した。
『ごめんなさい・・』志麻は心の中で謝った。

 十月の乾いた空気の中、志麻は篤志と二人バスに乗り、とある埠頭の公園で海を見た。遠くに空港が見える場所だ。
「俺、飛行機が好きなんだ」
志麻はそう言う篤志のきらきらした子供のような目を、脳裏に焼き付けていた。
「私、来月で二十歳になるの。記念に旅行いきたいな」と、志麻は言った。
「いいね~でも夏休み行ったばかりじん!」
「旅行には違いないけど、鎌倉でしょ?」
そう答えると二人は笑い合った。
「島に行ってみたい・・」志麻は言った。
それからしばらく考えていた篤志が言った。
「三宅島に行こうか?」
「あの、いつだったか噴火した三宅?」
「今はもう観光客も入れるらしいし」
「うん」

 十一月最初の土日を利用して二人は記念旅行に出掛けた。羽田から小さなジェット機に搭乗した。志麻はいつになく機嫌のよい篤志にわがままを言い甘えていた。その訳は、彼が大好きな飛行機に乗れることだった。篤志は窓際の席で滑走路を眺めていた。やがて離陸した。志麻にとって、初体験の飛行機がこんなにも角度を上げ浮いていくのに感動をするのだが、上下に揺れた時には思わず彼の手を掴んでいたものだった。1時間ばかりすると、目の下に円形の島が見えて来る。島の先でターンするとジェット機は高度を下げていった。二人は島の地を踏んだ。バスに乗り北上していくと、海岸線の開けたビーチに出た。
「さっき飛行機から見えたから着てみた」と、篤志は言った。
「うん、いい場所だね!」志麻は答えた。
「これ聴けよ!」と、彼から渡されたヘッドフォンの片方を耳にした。それはピアノの美しいメロディーだった。
「篤志ってこういうの聴くんだ!」
「あれはダイバーかな?」篤志は照れたようにそう言った。
三宅島はダイバーの多い観光島として有名だった。昼下がり、近くの喫茶店でランチを摂った。店の中では少年が、紙ひこうきを飛ばして遊んでいた。
「東京からですか?」店のおばさんが志麻に話しかけた。
「はい、世田谷から」志麻は笑顔で答えた。
「私たちも噴火のとき東京は三鷹でお世話になりました」
「あ、近いですね!それにしても、この島はのんびりしていていいです」
その間、篤志は少年に紙ひこうきの飛ばし方を教えていた。

 翌年、飛行機好きの篤志は意を決し、航空自衛隊に入隊した。そんなに逞しい性格だったなんて、志麻には思いも寄らなかった。しかし彼は訓練に耐えられず、志麻に泣き言を漏らすこともあった。そんな篤志が訓練中事故死したのを知ったのは、TVニュースからであった。何日も何日も志麻は号泣した。

 三十歳を過ぎていた志麻は、ステージでソロピアノを弾いていた。それは美しいメロディーだった。定番『エリーゼのために』のあと、初めて志麻はマイクを取った。
「最初に付き合った恋人が私を変えてくれました。その彼の意欲って、とっても凄いものでした。私はその彼の影響でピアノの曲が好きになり、自分には弾けないと思っていたピアノを習い始めました。そして今、こうしてライブをしています。最後に、彼に聴いて貰いたい曲を弾きたいと思います。乙女の祈りです」
志麻は紙袋から何かを取り出すと、それをグランドピアノの上に置いた。紙ひこうきだった。決して涙なんか流さなかった。そこにはいつか見た篤志のきらきらした子供のような目があった。

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| 恋愛小説 | 21:57 | トラックバック:0コメント:2
秋のS.L.S.① 「逢いたいよ」
小説の方、秋のS.L.S.(ショートラブストーリー)と題して連載したいと思います!またまた企画です。企画倒れしないようがんばるっちゃ!レッツゴー!笑
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 

 秋色の空は高く、それは夕日に染まっていた。裕美は、番組ディレクター田澤と西湘バイパスを横浜方面に向かっていた。裕美は小旅行をテーマにした土曜の午前に放映されているTV横浜の15分番組のレポーターを務めている。これを月に2本受け持つ。今回は箱根での2本撮りだった。湯本の駅前でロケバスから降りた裕美は、小田急に乗る振りをして田澤の車に乗り込んだのだった。

「視聴率上がらずで困ったもんだ」田澤は言った。右手には薄暮の海が広がる。
「私が悪いのかしら」裕美はじっと田澤を見て言った。
「俺が悪いんだよ」サイドミラーに目線を移し田澤は言った。
カーステからは大人のバラードが流れている。
「俺は音楽番組をやりたかった」
「それだったら私とも出会わなかったわよね?」
「わりっ、そんなつもりじゃ・・・」
「うふふ、田澤さん困ってる」
「寄ってく?」
バイパスを降りた先に色鮮やかなネオンが見えた。裕美は小さく肯づいた。
 広いダブルのベッドで息を切らした二人。裕美は田澤の腕にしがみ付いたまま気持ち良さそうに目を閉じていた。その裕美が言った。
「ねぇ、番組のラストにドラマなんて入れるのはどう?」
「ドラマ?」
「そう、音楽ビデオみたいな感じかなっ」
「それって音楽Vみたいだな」

 それから田澤は編集があると言い、裕美は自宅アパートの前で降ろされた。階段を上ると、玄関前に人影があるのに気付いた。それは元カレの健二だった。
「ごめん、こんな遅くに」健二は言った。
「健二には悪いと思ってる」裕美は言った。
「そんなに有名になりたいのか?あの男に弄ばれてるだけじゃないのか?」健二は裕美の袖をねじり上げ大声で言った。
「やだ、静かにしてよ!」
「ごめん・・・」
「健二の気持ちありがたいよ。けど今は彼のこと好きなの!」
「わかった。じゃあもう来ないよ」
裕美は、そう言って去って行く健二の背中を見送った。部屋に入ってシャワーを浴び落ち着く。テーブルに立てかけたままの健二とのツーショット写真が気になり、ふいにそれを引き出しにしまった。涙が溢れた。健二の女友達を浮気相手だと思い込み、別れてしまった自分が情けなかった。そのとき優しくしてくれた田澤のことを好きになってしまった現実。健二とその女友達との関係がシロだったと気付いてからでは遅かったのだ。健二は裕美より二個年下だった。裕美から見て、ちょっと頼りない感じが疲れなくて程よかった。それなのに何故田澤のような大人の男性に惹かれたのか?それは本来持つ女性の理想なのかも知れないのだが。
TV横浜のアナウンサーに受かったとき、誰よりも喜んでくれたのが健二だった。二人でみなとみらいで乾杯した。そのとき健二は言った。
「有名になっても俺のこと愛してよね」
私は答えた。
「あたり前でしょ。世界中の誰よりも健二が好き!」
その夜、大さんばしの芝に寝転がり、永遠よりも長いキスをした。あれから半年が過ぎていた。
深夜にも関わらずノートパソコンを開く。自分のオフィシャルブログに繋いだ。今日もハマカゼさんからコメントが入っていた。開設以来のお友達だった。ブログの世界は独特で、身近であり遠い存在でもある。アナウンサーともなると、自らの恋バナは禁句と思っていたが、この夜、ハマカゼさんのブログで自分のことが書いてあった。彼は、「アナウンサー裕美に恋してる」と冗談まじりに語っているが裕美自体は嬉しく思う反面、あまり気にしていなかった。裕美はとにかくファンを大切にしようと思い、「裕美、ハマカゼさんのような人好きですよ!」とコメントを入れた。

 ひと月後、裕美が田澤に提案した音楽ドラマの企画が番組構成を変えた。そのとき出演したアイドルを田澤が誘ったという情報を聞いた裕美は、嫉妬して自分から連絡取るのをやめた。そもそも彼から連絡してくることが少なかったことに、愛のアンバランスをも感じていたのだが…。今晩もハマカゼさんからコメントが来ていた。

 晩秋の夜、裕美は元気をくれるハマカゼさんを改めて愛しく思えた。そしてある決意をして彼のブログから直メをしてみた。
 裕 美[ハマカゼさんて、お幾つなんですか?]
ハマカゼ[おれは裕美さんよりは年下かもよ~]
 裕 美[嘘でしょ?ブログ見てると頼れる男って感じだったから・・]
ハマカゼ[大人にならないと彼女のこと幸せに出来ないからね]
 裕 美[そうかなぁ~。ところでハマカゼさん、彼女さんいるの?]
ハマカゼ[振られました。だからおれはこんなことしてるのかな(笑)]
 裕 美[私も振られました(笑)]
ハマカゼ[そう・・・]
そのあと待ってみたが、相手からメールの続きは来なかった。
 裕 美[オヤスミ(笑)]と入れて電源を切った。

寝ようとしたとき、ケータイの着信音が鳴った。それは健二の音楽だった。
「もしもし」裕美は嬉しそうな声で言った。
「裕美?」
「うん。そうだよ」
「なんというか、話づらいけどさぁ。はまかぜって俺なんだ」
「健二、ありがとう。私気付いてたよ!?」
「どうしてバレたんだろ?」
「コメントの最後のオヤスミって言葉。半角でいつも私に入れてたでしょ?それから、私の気持ちを動かせるのは健二しかいないって思えてきて・・・」
「泣くなんて裕美らしくないよ!これからも応援するからなっ」
「逢いたいよ」

  -完-

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| 恋愛小説 | 20:54 | トラックバック:0コメント:2
短くも美しく燃えて・・・
短くも美しく燃えて1

(序章)
 西暦が新しくなり時が流れても僕は君を忘れない。今日は七月三日、ユミの誕生日。二人で過ごす十年目の誕生日。イブの日のスーツを着て君の好きなバラを積んで、信州へと車を走らせる。


 1 ライフ
 
 平凡な毎日だけど幸せと思う。ルポライターをしている祐二は二年前年下の女性と結婚した。祐二は40歳になっていた。スマートな体型も年齢と共に増え、以前より逞しく貫禄が出ていた。お嬢さん育ちの妻、美幸とは仕事先の紹介からで、一年の交際を経て今に至る。子供は居ない。世間では天然とか言われる美幸の性格を、彼自身癒しに感じていた。小さな頃から習い事の豊富だった妻は、週に三回カルチャークラブで手芸とピアノを教えている。そんな祐二はと言うと、今日もパソコンに向かい記事を打つ。少し遅めの晩御飯のあとも再び書斎に戻り作業を続ける。フリーになってからはオフもなく、祐二は生活のため、以前より取材、原稿にと没頭した。片付けが終わると妻は、決まって食後のコーヒーを淹れて来てくれるのだが...今日は来ないのか?と、ドアをノックする音が聞こえ扉が開いた。そんな待望のコーヒーが来ても祐二はモバイルを打ち続ける。
「サンキュウ」 祐二は言った。例え妻でも礼を言うのがスジである。
「お疲れさま。今日も遅くまで掛かりそうですか?」 妻は丁重に言った。
「あ、徹夜しようかな。あ、先寝てていいから」 と祐二は、夢中になっている事もありぶっきらぼうに言った。
「私、まだ眠くないし...少しここに居ていいかしら?」 そう言ってから彼女は、書斎にある小さな窓のカーテンを閉め彼のそばに来た。祐二は聞こえてきた言葉に耳を疑った。「抱いて欲しい...」そう妻の美幸は言ったからだ。珍しいばかりか祐二には刺激的な言葉だった。戸惑いもなく立ち上がると小柄な美幸の肩を抱いた。妻は言う。
「仕事頑張ってるのにごめんなさい。...淋しいかったからつい -」
「何も言うなよ。美幸のことほっといた僕が悪いんだ」 祐二は言うと、寝室まで美幸を抱えベッドに寝かせた。そして口付けた。長くキスは続いた。そして祐二は終始彼女の愛を感じた。
 そのあとシャワーを浴びた二人は居間のソファーに並んで座り、冷えたワインで乾杯した。
「よかったら、亡くなった彼女さんの話聞かせて?」
「そうだ、美幸にいつか話すって言ったね」
「待って!」 妻は言うと灯りを小さくしBGMをスロージャズに変えた。愛されたせいか、いつに増して祐二には妻が女っぽく思えた。


 2 出会い

 祐二は遠くを見つめる目で語り始めた。そして、いつしか十年前の夏の情景が再来する。当時は短髪でパワーに溢れた青年?という感じの祐二であった。
「あれは夏だった。旅行誌の仕事で東京から電車を乗り継ぎ富山へと向かっていたんだ。その日は移動日でね、越後湯沢からはローカル電車でのんびり行こうかと。確か夏の残暑が厳しくて、そう、クーラーの効いた電車で一眠りしてしまってさぁ。気付くと列車は長いトンネルを走っていて周りに誰も居ない。僕は呑気な旅人って感じかな!?」すると横の美幸が言った。
「その話、祐ちゃんの書くルポみたいね」
「あっ、そうか。話が進まないね」と、祐二は苦笑いをして言った。
「そんな事ないよ。全部聞きたいな。それから?」 美幸は言う。
「で、トンネルを出たとこに小さな無人駅があったんだよね。よしと言わんばかりそこへ飛び降りた。のどかな景色に一人きり、思わず空を仰いでたね。たった一つあるベンチに腰掛け、昼ごはんにしようかと。そう言えば鳥のさえずりがすごかったなぁ~」
祐二は次第にその主人公になっていった。美幸には次の通りすべてを語った訳でもないのだが...

 上り電車が行ったあと一人の若い女の人がやってきて、祐二と同じベンチに腰掛けた。ジーンズにショルダーバック一つ。祐二は地元の人だと思った。その割りにチャーミングではあった。祐二はその女の子に挨拶をしてみた。彼女は笑顔で返事をくれた。当時口下手だった祐二はあとが切り出せず、その沈黙の長さに戸惑いを感じた。頭上をヘリが音を立て通り過ぎる。鳥たちが一斉に羽ばたく。 これがユミとの出会いだった。
「乗り遅れたみたいです」そう彼女は言って、再度笑顔で祐二を見た。彼女の居ない祐二は、その子にドキドキ感を覚えていた。そして持っていた時刻表を捲った。
「しばらく来ないみたいっすね~おなか空きませんか?」と祐二はバッグからおにぎりを取り出し差し出すと、彼女は嬉しそうに受け取った。それが切っ掛けとなり会話が弾んだ。ここが彼女の故郷である事、両親を亡くし墓参りに来て東京に帰る事、そして気まぐれに自分が列車から降りた事も...それから祐二は、仕事で使っていた一眼レフカメラを取り出した。
「記念に写真でも!良かったらそこに立ってみて下さい」 祐二はそう促した。
「いいですよぉ」 と尻込みしつつ祐二がカメラを構えると、女性は笑顔でポーズを作ってみせた。祐二の彼女への下心は、夢中でシャッターを切り続ける事が物語っていた。
「私こんな風に撮られるの初めてです。もしかしてカメラマンさん?」 彼女は、フィルムを巻き戻す祐二に尋ねた。
「あ、紹介遅れました」祐二はそう言うと名刺を差し出した。そこには自分の勤める出版社のほか、アドレス、携帯番号まで載せてあった。今やスピードの時代、近年流行りだした携帯やPCメールは、特にマスコミには欠かせない必須アイテムだった。
「私は名刺なんて...あっ、お花屋さんで働いてます。名前はイシウチユミです」
「ユミさん!? じゃあ今度お花でも買いに行きますよ!」
「私も、」 ユミが言いかけた時、駅のアナウンスが列車が来る旨を知らせた。直江津方面の列車らしい。
「連絡待ってるから!」 祐二は言い立ち上がった。こんな短い時間でユミに慣れる事が出来たのは、聞き上手な彼女のせいだろう。一両だけの電車が入ってくる。悪戯っぽく笑うユミから離れる瞬間、祐二は淋しさを感じた。思わず彼女に握手を求めた。目的地の違うユミは残り、祐二だけが列車に乗り込む。
「楽しかったね」祐二はドア越しから言った。
「・・・」 無言で相槌をうつユミの表情からは笑顔が消えていた。そしてドアが閉まる瞬間ユミが飛び乗って来たのであった。
「ごめんなさい。そばに居たかったからつい...」 彼女がポツリ言った。
抱きしめる!? なんてのは出来過ぎた映画の中の話で、祐二はその時は呆然とするばかりであった。
席に並んで座り言葉を無くし、二人して暮れ行く車窓を眺めていた。気付くとユミは涙を流していた。『年頃だし大きな失恋でもしたのだろう』祐二は無理に聞き出す事なくそう勝手に思うとユミの手を握った。車窓が闇に包まれる頃、涙の訳をユミは話してくれた。富山に着いた。その夜、シティホテルの同じ部屋に泊まる事を彼女は拒まなかった。


 3 ユミの命

 先に祐二が汗ばんだ体をシャワーで流すと、次にユミが浴室へと消えた。ホテルの部屋からは富山港の灯りが煌々と望めた。ノックする音がしてドアを開ける。祐二はワインをルームサービスで頼んだ。二つのキールのグラスは冷えていた。丁度シャワーから出てきたユミが来て微笑んだ。
「やっと笑ってくれたね」 と祐二は言うとワインを次いだ。そして続けて言った。
「今から僕たちは恋人同士だよ。で、乾杯!」
「はぁ...」
「元気無いなぁ~」
「そんな事ないです」
「あっ、その言い方止めようよ」
「はい、祐二さん」 そう言うと二人は笑った。祐二はユミの笑った時のえくぼがとても可愛いと思った。祐二はワインを一気に飲みほすと、あまり飲めないというユミを横目に二杯目を注いだ。
「そうだ、こっち来て見てごらんよ」 祐二はユミの手を引くと窓のカーテンを開き夜景を見せた。
「ステキ~」 ユミはそう言うと、しばらく目下のそれに見とれていた。祐二はそんなユミの肩を抱いた。祐二の指先に力が入ると自然に向き合い、ユミは瞳を閉じる。静かな時間がゆっくりと過ぎていった。
「私、祐二さんのこと好きになってるみたい」 ユミは祐二の腕の中で囁いた。祐二はその唇に再びキスをした。
取材の同行にユミが居て、仕事を忘れるほど楽しい旅となった。ユミは仕事を休み、祐二に付いてきた。涙の訳はこうである。一年前、ОLをしていたユミは突然の貧血で病院に運ばれた。検査の結果急性骨髄炎と判明、そして奇跡的に一命は救われた。一人暮らしをしていたのだが、退院後は身内である兄夫婦の家に置いてもらっているという。彼女にとっては兄貴が唯一の身内であった。再発もあり得ると言われ落ち込む毎日であった。兄に甘えていただけじゃ自分の人生は悔いを残すだけだと、気分転換にもやってみたかった花屋のバイトを始めた。そこで花の香りを嗅ぐことにより、ユミは自分が再生されていくのだと言う。
 
 付き合い始めてひと月経たずに、一目惚れをした両者が求めたのが同棲生活である。もしかしたらユミは限られた時間を知っているのでは?と祐二は悟っていた。そんな事ユミには聞けない。祐二が仕事で逢えない日が続き、喧嘩になった事もあるし。そう思うとやりきれなかった。
「ユミのお兄さんに会ってみるよ。ここで一緒に暮らすこと話したいんだ」 台風が近づく夜半過ぎ、祐二は自宅マンションでユミを抱き締め言った。
「祐二・・・ありがとう -」 しんみりとした夜ではあるが、今のユミは泣くことなく笑って言った。
「うふふっ。でも兄貴、何処にもやらないって言ってたよ」
「そうか。僕に任せろ(笑) それと仕事なんだけど、この近くにある生花市場で一緒に働こうと思うんだ」
「何それ?祐二の大切な仕事までも変えて欲しくないよ!」
「いいから ! 僕は配達なんだけど。で、面接は金曜の夕方にしたからね」 祐二はあっさりと言った。
「もぉ~無謀なんだから~。確かに今の店ここからじゃ遠いいわよね !?」
「フラワーアレンジメントもやらせてくれるらしいぜ」
「うん、やりたいなぁ !!」
「じゃっ決まりだな!」 祐二は言うと無邪気に目を輝かせるユミにプレゼントを渡した。


 4 告知

 二人にとって祐二の1LDKの部屋は十分な広さであった。ユミの兄は、妹と彼氏の同居を認めてくれた。そして二人の婚約をも祝福してくれた。祐二がユミにプレゼントしたのは婚約指輪だった。二人は生花市場で働き始めていた。ユミは一定の薬物投与で通院はしているのだが、無理のない生活ならしてもいいと医者は言っているらしい。部屋のテーブルにはいつもユミの好きな薔薇が飾られていた。ユミは週に3日働き、あとの日はのんびりと家事をこなす。明るい彼女は職場での人気者であった。何も知らない若者はユミに接近してきた。トラックに乗り込む祐二がユミに向かって小さく手を振る。彼女は彼にウインクで返す。楽しい日々が続いた。
 
 12月に入り、街は早くもクリスマス色に染まっていた。そんな中を二人は手をつないで歩いていた。
「ねぇ、私にプレゼントさせて!」そう言ってユミは祐二の手を引くと、とあるブティックへと入って行った。そして予め揃えていた服を店員より出されると、それを祐二に渡した。ブランドもののスーツだった。彼が試着するとユミは「カッコイイ」と褒め称えた。
「私の貯金で買ったの。これくらいプレゼントさせて」 ユミは満足そうに言う。
「ありがとう、気に入ったよ」 祐二はVサインしてみせた。
「少し早いけど、私からのクリスマスプレゼント」 ユミはそう言ってから突然立ちすくんでしまった。
「大丈夫か?」 祐二は動かないユミを制しながら店員に救急車の手配を頼むと、彼女を行きつけの病院へと運んだ。
担当医こそいなかったのだが、そこでショックな事を聞かされた。それは、彼女が自分の余命を知っていて普通の生活を強いていた事であった。医者は再入院を勧めたが、祐二はあと少し待って欲しいと伝えた。祐二には医者の了解が、同情としか他なかったように思えた。一晩安静にしたあと目を覚ましたユミは、自宅に帰りたいと言った。祐二はニコリとしてタクシーを呼びに行った。さすがに仕事は辞めさせ、祐二もしばらく休暇をとった。祐二はイブに向け、あるストーリーを立てていた。

 12月24日。昼まで寝坊した二人はトーストを口にした。ユミがこの日、目一杯のオシャレをしていた。そんな姿に耐え切れず思わず外へ出た祐二はレンタカーを借りに行った。予約していたのは2ドアクーペのスポーツカー。ユミの好きなオールディーズのCDを用意した。日の短いこの季節、オレンジの夕暮れがフロントガラスのスクリーンに映し出された。
それは鮮やかな絵の具のようだった。ユミのドレスに色気を感じながら湾岸線を滑らかにドライブした。横浜の高層レストランでディナーをした。薄暗い店内、窓際の席からは港が見える。もちろん予約で取った席だ。
「思い出すわ富山の夜景・・・」
「・・・出逢った日に君は僕を追いかけた」
「あなたはずっと私を抱いてくれたの」
「君の好きなものは僕も好き」
「私の好きなものはあなたも好き」
「幸せだねユミ」 そう言うと祐二は店員を呼び、コンパクトカメラで二人の記念写真を撮ってもらった。
そのあと伊豆へと向かった。静かな車内に大人の音楽が心地よく流れる。ムードに酔ったユミは、右手を祐二の左足に伸ばし、それを彼が左手で握っている。ユミは黙ったまま彼を見つめていた。
「スーツ似合ってるね」 ユミは言った。
「気に入ってる」 祐二は短く言った。東名に入っても曲は淡々と流れている。横を見るとユミは眠っていた。沼津からは海沿いのカーブを走る。それを幾つも超えた所に大瀬崎はあった。車を海に向け止める。汚れない澄んだ冬の夜空には、満面の星が輝いていた。対照的に闇に包まれた海は不気味だった。祐二は大瀬で見る日の出間近のさざ波と富士との組み合わせが好きだった。いつか愛する人にみせたかったのだ。やがて祐二も眠くなりシートを倒した。
朝焼けに気付いたのはユミだった。言葉無く二人はその情景を見ていた。空はセピアから赤に、そしてイエローから青へと変わっていった。


 5 誓い

 大瀬崎から海沿いを南下していくと恋人岬がある。二人はそこに寄る前に、傍にある喫茶店でモーニングを頼んだ。
「恋人岬に来ると別れると言う噂があるんだ」 祐二は小声で言った。
「そんなの変な理屈だわ」 笑ってユミは言った。
祐二はユミから目を逸らし、国道の向こうに見える順光の海を眺めた。
「海を見てると寛大になれる。ほらあそこ、富士山が綺麗だ」 祐二は指差して言うがユミは祐二を見たままだ。
「ずっと祐ちゃんだけを見ていたい・・・」 ユミは言った。
「何言うんだよ、まったく(笑)」 祐二は照れて横を向いた。それでもユミの心境がひしひしと伝わり辛かった。年が明けたら彼女は入院してしまう。そして二度とこうして旅立つ事もないのかも知れない...
「海って青いね」 ユミは言う。
「そうか、ユミの育った長野には海は無しか。僕は根っからの東京人だから両方に憧れはあるよ。だからかなぁ、旅行誌のルポを担当してるのは」 祐二はそう言うと苦めのコーヒーをすすりながらまた外の海を眺めた。
「知ってるよ。祐二が照れ屋さんなの」
「そんな事ないよ」
「可愛いっ」
「そろそろ行くぞ!」 ちょっとマジに怒って祐二は立ち上がった。
「ごめんなさい」 ユミはぺこりとしてみせた。
「ま、許すか」
「では次のポイントへ レッツ ラ ゴー!」 ユミは元気に言った。祐二はずっとユミが元気で居て欲しいと心で願っていた。祐二は、いつに増してユミが咳き込んでいるのを朝から気にしていた。結局、恋人岬には寄らずドライブを続けた。それと名所すべてに寄るのも疲れるので、次は武家屋敷のある松崎に向かった。
「着いたよ」 祐二はそう言うとすばやく車を降り、ユミをエスコートした。そしてユミの手を引き歩いた。
「ここは中学の移動教室で来たんだ。ほら、あそこに武家屋敷がある」
「本当だ」 と、ユミは愉快に答える。観るものすべてを新鮮に感じる純な彼女を祐二は発見した。
 マーガレットラインは冬のせいもあり華やかな花は咲いていなかった。この日は、伊豆最南端の石廊崎に寄ってから東伊豆の温泉に泊まり、翌朝には東京に戻る行程だった。
「疲れてない?」 祐二は岬に通じる駐車場で、目を覚ましたユミに聞いた。
「うん」 とユミは小さく肯くと直ぐに車から降りた。祐二はエンジンを切りユミのコートを持つと車を降りた。そしてコートを着るように言った。
冬の海だというのに風も無くポカポカ陽気な日であった。その目前に広がる地平線を二人で見た時間は、今でも祐二の脳裏に刻まれている。その時のユミの言葉も...。人気(ひとけ)なく遠くに行き交う船がある。そして丘の斜面に座っている。
「ここもまた静かなとこだね」 祐二は二人出会った場所を思い返す様に言った。近くに小鳥の囀りがあり、まさにオーバーラップしていた。
「好きよ、こういう場所」
「そうか。ところでユミ?早いとこ籍入れよう」
「...ありがとう」
「よし、明日東京に戻ったら入籍だ」
「でも、気持ちだけでいいの・・・」 ユミは言う。祐二はユミの気持ちを察知すると立ち上がり、そして言った。
「ねぇ、ここで二人だけの式しよう!」
「いいねっ。賛成!」 ユミは言うと立ち上がり、ドレスの裾を正した。
「まず、最悪な式でごめんなさい」 祐二は言った。
「はい」 ユミは真面目に答えた。祐二はポケットから二つの指輪を出すと、大きな方をユミに渡した。そしてユミから誓いの質問を述べた。続いて祐二が...
「イシヅチユミはユウジに永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」 ユミは答えた。祐二はユミの左薬指にリングを挿すと、ユミが祐二の頬にキスをした。
 ヒバリの鳴き声が潮騒に溶けていく。帰りたくないというユミに付き合い遂に日没を迎えた。波がシルエットになった頃、腕の中でユミは言った。
「こうしてあなたに抱かれ死んでいけたらいいのに・・・」
それに答える術もなく、黙っているだけの祐二であった。
「私、いまキレイ?」
「ああ、バラの様に綺麗だよ・・・だから僕は枯らさない様にする」
次の瞬間、ユミは泣き崩れた。祐二はその涙が枯れるまで泣かせてあげた。

 そこまで話すと部屋のBGMが途切れた。祐二に寄り添い聞いていた妻の美幸は潤わせた目で言った。
「彼女さん幸せだったでしょうね」
「そう思う?...そうだね、短くも美しく咲いた花の様な人だった」 十年前の思い出に浸りながら祐二は言った。
「その晩、旅館に入って事態は起きたんだ。温泉に浸かり食事食べたあと彼女、具合悪いって言うから僕は直ぐ寝かせてあげた。風邪だって笑ってたのに・・・朝まで抱きしめて寝てたんだけど彼女が逝くのが判ったんだ。冷たくなっても僕は抱きしめていた」
美幸は涙を流していた。祐二は付け足して言った。
「毎年君に内緒で墓参りに行ってるんだ。ちゃんと話してから認めて貰いたかった」

(終章)
「ただいま、ユミ」 晴れ渡る初夏の空。ユミの眠る地に手を合わせる。
「君との事、妻に話したよ。・・・君が羨ましいって」
きっとこの空の上で笑っているだろう。暫く僕は鳥の囀りを聞いていた。陽が傾き、愛車のドアに手を掛けたその時、目の前に虹が出た。僕は「サンキュウ」と呟き、軽快に車を走らせた。

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| 恋愛小説 | 02:48 | トラックバック:1コメント:2
私の恋の履歴書
*以下のお話は架空のものであり、特定の事実はありません。

ミントはクールでさっぱり。だから男まさりと言われちゃう。私の彼は面白いというか変わってるというか・・・よく判らないけど彼から言わせれば私も同じなんだって。

レインはいつも雨。なーんて冗談ではないんです。だってほんとに雨なんだもん。ずっと彼氏いないし出会いなくて淋しいです。理想とか追ってないのにね。

志甫(しほ)と言います。初対面の人に名前からして韓国人?とか言われちゃうけど、だ捕されてませんから(笑)。ミントやレインから上品で女の子女の子してるって言われてます。お嬢さん?まあね・・・そして早々と結婚しました。子供は欲しいけどまだいません。

 ミント、レイン、志甫の三人は高校時代からの友達です。ミントとレインはアニメの専門学校に通っています。この二人はお気付きのようにハンドルネームです。半年に一度だけコスプレイベントに参加している関係で名前付けたみたいです。で、私は何者かと言うと志甫と同じ短大の二年生(当時)。名前は秘密。この四人と仲良しになった年の9月で二十歳になりました。自慢じゃないけど就職なんて決まっていませんでした。それにわからないのです。生き方が。私達の年代でももっともらしい生き方や概念持った子っています。けど、私はバイトでも不器用だし社会に出て行く自信なんかないんです。反面志甫は、私と逆で何でも出来ちゃう。幸せ者だし。ひがんでなんかいませんよ!けど喧嘩もします。仲いいからでしょうか?大人なんですよね、彼女って。

 ところで私は18のとき東京へ出てきました。といっても地元は程遠くなく、伊豆のくに市の修善寺という温泉郷です。理由は、東京の短大入学を期に高校時代からの彼氏と出てきたのです。けど1年後に別れました。今思えばお互いのすれ違いで、彼に好きな人ができ彼女のとこに行っちゃいました。私は強い性格じゃないからずっとブルーでした。そんな時出逢ったのが志甫の友人のミントとレインでした。時々志甫と4人で食事とかします。ミントは楽しい子で私の元気を引き出してくれます。レインは男性と深く付き合ったことないのに失恋の話を聞いてくれる優しい子です。今日もレインとメールしました。彼女は小柄な子です。素直でいい子なのに男の人と縁がないって言うので、何故か今の私に近い存在のような気がします。そんな私はこの半年、元彼からの連絡もなく傷も癒えたと思います。その後、片想いしました。アマチュアバンドでドラム叩いてた人なんです。そのバンド売れて彼のファンも増えて、私の片思いなんて叶いそうもなかったんですけど。春先、志甫と知り合いのライブ観に行った時に対バンで彼が出ていたんです。単なる一目惚れですね。それも間もなく幻滅します。ドラムの彼は通路で彼女らしき女といちゃついていたので。その夜、一緒に出掛けたミントの前で腹いせに飲めないお酒を二本も飲んじゃいました。私がお手洗いから戻ってくるとミントは男の人に話しかけられていました。私にはあり得ないことかも。ただ彼はナンパじゃなく『馬軍団』というバンドは終わってしまったか聞いていただけみたいです。終わった事を知るとドリンクを取って来て私たちの横でステージを見てました。人見知りしないミントはその人と話してました。彼が車で送ってくれるというので、それってナンパじゃない!?って心の中では思いながらも私は肯いていました。その人は桧山(ひやま)さんと言って、10歳年上のサラリーマンでした。軽く食事しませんか?という言葉にミントはのっちゃったので私も行くはめに…。しかし、彼は自然な感じの人で清潔感あって好感持てました。話の流れで、ミントが桧山さんに私のこと勧めてくれました。私は彼とアドレス交換しました。その後ミントは、終電に間に合うからと言って近くの駅で車から降りて行きました。でもやばいじゃない?私はミント程大人じゃないからドキドキしてました。車は目黒通りを下り、多摩川のほとりにある私のアパートの傍まで来ました。その先の話はなくちょっと残念でした。きっと私には愛嬌がないから引いちゃったのかなぁ。素直になれないだけなのに。部屋に着きシャワーを浴びた後、ケータイにメールが届いてます。桧山さんからだ!と思い見てみるとレインからでした。あっそっか、レインも一人だったもんね。案外レイン、彼が好みではないのでは?私にとってのレインは、今や大切な親友だから私は桧山さんを譲る決意をしたんです。ミントは親友のレインを紹介すれば良かったのにと内心思いました。横に居た私に目配せしたのかしら!?そういうことにしときます。レインは年上が好きって言うし…。私はそう思うと酔いが醒めぬ感覚でメールを打ち送信しました。すると直ぐに返事が来ました。レインは紹介楽しみだって喜んでくれました。その夜眠れなくて、ミントとレインを泊めたとき冷蔵庫に残していったカクテルを飲んでしまいました。朝、通学の電車でメールを開くと大変な事に気付きました。[今日はありがとう]から始まって。[TDLの券持ってるから行かない?]です。桧山さんからでした。私の返事は[行きたい!]でした。そのあと彼のメール[今度の土日は休みかな?]で途切れていました。何となく記憶が蘇りましたが、てっきり私はレインからのメールだと思い込んでいた様です。そうだ、レインと3人で行けばいいんだ!そう思った私は、レインにメールしてみました。了解という返事が返ってきました。桧山さんにはどう話したらいいのか悩みます。結局、言いづらくなり当日まで黙ってました。TDLへは電車で行くことになりました。東京駅の地下深くに京葉線のりばがあります。何度か行ったので覚えてました。レインは150センチないし童顔だからまるでアニメのキャラのようです。そんな彼女を連れていると楽しくもなります。きっと桧山さんも気に入ってくれるのでは?と思います。東京駅で待ってると桧山さんが来ました。初対面のレインは照れていました。というより桧山さんが意図してなかった事で、戸惑いが顧みられます。電車に乗る前に訳すら話すこと出来ずに浦安のTDLに着いてしまいました。気まずい情況なのでとにかくレインを置いて彼と二人きりで話しました。そして私は引き返すことにしました。桧山さんにとってのレインは幼い印象を持った様でしたが、レインの性格を話したら受け入れたいと言ってくれました。私とはもう連絡しないよと言う辺りが大人を感じました。惜しい事してると思いながらもレインに幸せを譲ったのです。そのあと私にも彼氏はできましたが、ギャンブルが好きな人で私のことは二番目だとわかり別れました。決してギャンブル自体を否定しません。やっぱ趣味も合わないと難しいのかな?再度、好きになった人と別れると言う事がこれほど辛いことだなんて、二度と人を好きになりたくないと思う日々が続きました。

 あれから時が経ち、レインは桧山さんと3年付き合って結婚しました。桧山さんは何でも出来ちゃう凄い人みたいで、副業でカメラマンをしていたそうです。レインもモデルに起用されたんですよ。淋しがり屋の彼女が幸せになれてほんとに嬉しいです。ミントは?と言うと、途中別れるとか言いながらも7年付き合った彼とゴールインしました。志甫には子供が二人居ます。子育ての苦労は今の私には解りませんが色々あるみたいです。今年、私も三十路になりました。友達が結婚していく中、私にとっての幸せは生きる喜びと思う様になりました。私は5年間東京で働き、そのあと実家の旅館を手伝っています。そして最近私にも彼が出来ました。農園でいちごとか作ってる人なんです。私が一番欲しいものをくれる人。それは誠実さと思いやり。特別に何も持ってなくていい、けど何事にも夢中で私の事も思ってくれる人が欲しかったんです。一人で生きるって正直大変なことです。大人になってそういう相手が一番大切なものである事に気付いたのです。例え楽でない生活であり困難が来ても、二人に絆があれば乗り越えたいと思います。

 皆さんはどんな人生が理想ですか?決して私の生き方が得だなんて思わないでしょ!? 私は絶対幸せが来るって思い生きてきました。そうでなければ来ませんよね。それは大きな意味で生きることすべてに関して…。これからは彼に埋もれるのもいいかな~と思ってます。

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